第14話 デルモア「陥落」
その少女を背負って俺は城から広場へ出る。次々と人間の気が無くなっていったため、外で何が起きたかはだいたい見当がつく。
「お嬢ちゃん、ちょっと残酷な光景が広がってるから目を開けないほうがいいかもしれない」
「は、はい・・・・・・わかりました」
今のうちは目を瞑ってもらう。前後左右人間の死体だらけだ。流石にこの状況を幼いこの子に見せるわけにもいかない。
ただ、その光景を見て一つ安堵した事がある。
「魔族は誰ひとりとして欠けていない」
魔族の倒れた姿は何一つ見当たらないのだ。つまりそれは、人間族の大敗を意味した。
素の力であれば、元々人間よりも身体能力や魔力量は魔族のほうが数段上であり、個々の力であれば魔族が人族に負けるようなことは決して無い。
ただ、人族の中で稀に生まれる【神ノ子】という存在は別である。
【神ノ子】のいい例で言えば勇者一行であろう。勇者パーティーに招待される人間はそれこそ神ノ子以外には居ない。
まあその話は追々するとして、そろそろ魔族達がいる場所につく。
「もうそろそろ目を開けていいぞ。だが、後ろは振り向くな」
「はい」
遠目で見たところ、今回この場に来た魔族達は無傷のようで安心する。
「リョウ! 無事であったか!」
フランが俺に駆け寄ってくる。
「当たり前だろ? まさか俺があんな奴らに負けるとでも思っていたのか?」
「いや、そうは思っておらぬが・・・・・・」
「あはは! 悪い悪い、心配してくれてありがとな」
「むう、リョウは意地悪なのだ・・・・・・」
「あはは! 悪かったって」
ポコポコと俺の胸を叩いてくるフラン。本当に俺のことが心配だったのだろう。その事を考えるとふと笑みが溢れる。
「む、何を笑っておるのだぁあ!!」
「いや別に、馬鹿にしてるわけじゃないからな?」
「むぅ」
うむ、ムスッとしてるフランもカワイイな。
「ま、この話は置いといて。みなは無事か?」
「うむ、我々はもちろん、捕らわれていた魔族たちも皆無事なのだ」
「そうか、そりゃ良かった」
気で分かっていたことだが、ちゃんと目で認識すると深く安堵する。
「それじゃ皆、帰るのだ」
「あぁ、帰ろう。シュト、影移動たの___」
そう言葉にしようとした時、異変が起こる。
「か、神は・・・・・・貴様らを許しは・・・・・・しない・・・・・・この死体たちを供物とし、その力を・・・・・・貸たまへ・・・・・・!」
そう人間が叫ぶと、そいつの体から途方もない量の黒いオーラが流れ出る。
「な、なんかあまり好ましくない状況になったような気がしてならないんだけど。フラン、何かわか・・・・・・フラン?」
フランの方を見ると、彼女の顔が青ざめている。
「あやつ・・・・・・なんてものを呼び出してくれおったのだ」
フランのその言葉を聞いて察する。次元の違うものが現れてしまったのだと。
「悪魔・・・・・・召喚」
「あ、悪魔?」
「たかが悪魔ではない。この場の屈強な人間たちの死体をすべて供物とした悪魔なのだ・・・・・・」
「まじでやばい悪魔が出てきちまったわけか」
「この気配から察するに、
「なんとまあ上位の悪魔のお出ましってことか・・・・・・」
「どうやって対処するかのう・・・・・・」
対処の仕方が全く思いつかないが、とりあえず悪魔が完全に姿を表す前にここにいる者たちを魔族領へ避難させるほうが良さそうである。
「フラン、まずはここにいる魔族たちの避難が優先だ。悪魔との戦いに巻き込んじゃいけねぇ」
「う、うむ・・・・・・シュト、頼んでも良いかの?」
「御意、必ず皆無事に届けてみせます」
「ああ、頼んだぞ」
そうフランが言うと、すぐさまシュトが魔族たちの場所に行き、事情を説明して影移動で魔族領まで全員を転送する。それと同時に悪魔の召喚が完了する。
「さて、いよいよ悪魔様のお出ましだぜ」
「我らだけで勝てるかの?」
「まあ、やるしか無いからな」
「ははは、そうじゃな」
俺は首をパキパキと鳴らしながら悪魔の方へ歩いていく。
「俺とフランなら勝てる」
「あぁ、できる限りのことはするぞ」
俺とフランが話していると、一つの声が響き渡る。
「ふむ、なるほど。この私を召喚したのはこの男ですか」
声のした方に視線を向ける。するとそこには、黒のタキシードのような服を着ている黒髪の男がそこに立っていた。
「少々少ない供物ですが、まあいいでしょう。きっちりと仕事してあげますよ」
そう言うとこちらに向き直る悪魔。
(英知さん、あいつどのくらいの強さ?)
『解析しますか?』
(ああ、よろしく頼む)
「あやつ、とんでもない力を有しておる」
「今英知さんに解析させてる。今はあいつをどう相手にするかだ」
「そうじゃな、私は後ろから援護射撃するでリョウは前衛を頼む」
「あぁ、了解だ」
その言葉とともにフランは魔法を発動する。
「紅蓮の
そして、戦いの火蓋がここに開かれるのであった。
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