第13話 人族領内【デルモア】
あれから俺達はまじで5分もしない内にシュトの影移動で人族領内のデルモアに来ていた。
「このような状況になっておるとは・・・・・・なぜわたしは早く気付けんかったのだ」
そう、フランは自分を責める。
「そう自分を責めるな。人族領内のことはこっちにはあまりわかることじゃないだろ?」
「それもそうだが・・・・・・」
「なに、今すぐに助けに行けば・・・・・・」
と、俺がいいかけたときに異変に気がつく。
「一人だけこの建物の奥に連れて行かれている」
「え!? なぜだ!?」
「気を感じ取ったんだが、複数の人間とこれは・・・・・・幼い子供の魔族がいる。人間に幼い魔族が連れて行かれている状況だな」
「なッ!?」
「理由は流石にわからない、だが今すぐ俺が行く。フラン達は他の魔族を救出してくれ。そしてあわよくばここを堕とすぞ」
「う、うむ・・・・・・」
★幼魔族視点
痛いな、なんでわたしはこんなところにいるのかな。
「おら、さっさと来い」
ああ、手を引かれてる。硬く、冷たい手。掴まれてるところが痛いな。お母さんが手を引くときはこんなに痛くなかったのにな。
冷たい輪っかが手につけられてる。ああ、わたし今から拷問されるんだ。痛いの嫌だよ、お母さん・・・・・・助けて・・・・・・。
そう思った時、壁が崩れる音がした。
「・・・・・・え?」
眼の前に居た鎧を着た人族が吹き飛んでいる。
「・・・・・・だ、れ・・・・・・?」
「ん? うーーん、そうだな。魔王の夫、かな」
「魔王様・・・・・・の?」
「ああそうだ、だから安心しなさいな」
★魔族視点
「さあ、全員準備はいいか?」
「「「「はっ!!」」」」
「それでは、全員を救出し、そしてこの城を堕としに行くぞ」
そうして皆が散解し、城に攻め込む。落とすのはもちろんだが、まず優先するのは魔族たちだ。魔族たちを必ず安全に魔族領に返すのだ。
「な!? 魔族だ!魔族が攻めてきたぞーーー!」
「なに? なぜここに」
「んなこと言ってる暇があったら武器を持て! 早く!」
「判断を誤ったな」
次々と倒れていく兵士たち。それを傍観する魔族たち。
「ここに居たことを悔やむんだな」
「ギャーーー!!」
人族が血しぶきを上げながら次々と倒れてゆく。
「レオナ、セナールは非戦闘員魔族の救出に迎え!」
「はい」
「はっ!」
「あとの三人は私と一緒にこの城を堕とす」
「「「了解!」」」
二手に分かれ、確実に魔族たちを救出に向かう。
「ちょっとまっててください、いま傷を直しますね」
「あぁ、ありがとう」
「歩ける魔族はこっちに来てくれ、一箇所に固まるんだ!」
「は、はい!」
次々と一箇所に集まる魔族たち、ざっと30人ほど居るようにも見える。
「た、助けてください! 娘が、娘が城に連れて行かれたんです」
「安心してください。城の中には私達の宰相がいます。なので落ち着いて待っていてください」
「は、はい・・・・・・」
★稜視点
「さてさて、人族たちよ。こんな幼い魔族の子供に大人数人がかりでなーにやってるのかなー?」
「き、貴様! 一体何者だ!?」
「質問に質問で返すなよ・・・・・・言葉のキャッチボールもできないのか?」
「お前たち、やれー!!」
「はあぁ、人の話を聞かない奴らだな」
ため息をついていると鉄製の槍が俺に向かって突き出される。その突き出された槍をかがむことで回避し、その低い体勢のまま人族に突進する。
「ぐおぉ!?」
5メートルほど人族は吹き飛び、壁に激突して倒れ込む。
「くそ、全員で畳みかけろ!」
「「「おーーー!」」」
「何人でかかってきても同じだ」
人族達が一斉に向かってくる。本来二対一の戦闘は一対一のときの戦闘の何倍も難しく、ずば抜けた戦闘技術がいる。だが、俺の場合は人間よりも圧倒的に高い身体能力と動体視力、そして一人の相棒が居るのだ。そんな俺がこんな程度の人間に負けるはずもなく・・・・・・。
「ぐ・・・・・・が・・・・・・」
「なんだ、四対一なんだからもう少しやるかと思ったのによ」
「何も・・・・・・見え・・・・・・な・・・・・・」
「なん・・・・・・なんだ・・・・・・貴様はぁぁぁ!!」
「俺か? 俺は魔族の長、魔王の夫。そして、ただの転生者だ」
「転生・・・・・・者・・・・・・だと」
「お前にこれ以上話す道理はない」
そして鎧に拳の跡がつくほどの威力で人族の腹部を殴り、気絶させる。
「・・・・・・もうちょっと強いと思ったんだけどな」
『高望みしすぎです』
(え、そんなに高望みしたかな?)
『現在主様の戦闘力はこのデルモアの街で最も高いです』
(え、まじっすか。いやまあ、簡単に倒せるにこしたことはないんだけどね)
『そういうことです。高望みをしすぎるのは推奨いたしません』
(はい、以後気をつけます)
と、そのような軽口を英知さんと叩いていると。
「お兄さん・・・・・・ありがとうございます!」
「うおっと」
泣きながら少女が抱きついてくる。よほど怖かったのだろう。
「いや、俺たちがもっと早く気がついてやれればこんなことにはならなかったんだ。本当に申し訳ない」
「いいんです、今助けてもらったから」
「・・・・・・」
察知が遅くなってしまったことを悔やむ。少なくとも数カ月間この世界に居て、この子達を助けられる力があったのにもかかわらずこんなに遅くなってしまった。
「・・・・・・必ず、安全な場所に返すから」
「はい!」
自分の情報収集の油断に怒りを覚える。そして、必ずアクを滅ぼす。俺は強く拳を握りしめた。
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