第9話 次の日

 圧倒的気まずさが俺とフランの間に走っていた。恋愛経験とかがまっったく無かった俺が思うことは。


(昨日のフラン、可愛かったなぁ)


 である。


 俺はフランの目を見るがその瞬間に目を逸らす始末。そしてそれは逆も然りである。


 そして、(昨日のフラン可愛かったなぁ)などと思っていると、フランの方から口を開いた。


「えっと……き、昨日はいきなりあんな事をしてすまなかったのだ……」

「べ、別に謝らなくたっていい……びっくりはしたけども」


 結論から言おう。凄かった……と。



 本当に凄かったのだ。無尽蔵の体力であった。正直あの時だけは俺の方が体力負けしていた。


(いーやおかしいでしょ!なんで俺が体力負けするのよ!?間違いなく普通の体力だったら俺のほうがあると思うんだけど!?)

『解、そういうものだと思ったほうがよろしいかと』

(いや英知さんと話すのも気まずいんだが?一部始終見られてたってことなんだが?)

『いえ、気にしませんが』

(そ、それなら良いんだけどね・・・・・・いやよくねぇわ!)

『・・・・・・』


 無言になるのが一番嫌なのだが、まぁそれは良いとしよう。いや良くはないのだが。というかめちゃくちゃ流暢に喋りだしたなおい。

 まぁそんなことはどうでもよく、俺は今すぐフランとの間にあるこの地獄のような空気を断ち切りたいところなのだ。


「ふ、風呂入って・・・・・・朝ごはん食べようか」

「う、うむ・・・・・・そう、だな」


 もじもじしているフランかわいい。

 とりあえずこの気まずい空気の中から脱却することができた。


「風呂は・・・・・・二人で入るのか・・・・・・?」

「・・・・・・え?」


 よくよく考えると今さっきの発言的に俺が誘ったような感じになってしまったのでは!?

 そう考えると又も気まずい空気になってしまいそうなのだが・・・・・・。


「お、おう・・・・・・入るか」


 可愛さに負けてしまった俺である。




 風呂は流石に何もなく、体を洗い、湯船に浸かる。そんな普通の時間が過ぎていく。


「やっぱり日本人には風呂だよなぁ」

「にほんじん・・・・・・というのは風呂が好きだったのか?」

「ん?まぁそりゃな。日本は火山大国だし、温泉湧きまくってるからな」

「・・・・・・危なくないのか?」

「火山の話か?まぁ、それなりに危ないだろうなぁ。富士山だって周期的にはそろそろぶっ放す頃合いだろうし、何年か前に御嶽山おんたけさんとかは噴火してるからな」

「・・・・・・そうなのか」

「なに、別に頻繁に起こるわけでもないからな。それに、火山を上手いこと使うのが俺たち人間だ」

「自然を・・・・・・味方につけるというのか・・・・・・」

「まぁそうだな、発電だって地熱、水力、風力があったりする。自然からヒントを得て作り出した道具だってるしな」

「そっちの世界は、何でも作ってしまうのだな」

「じゃねぇと人間は生きていけなかったからな。異世界こっちみたいに魔法とかがあるわけでもないし」

「いつか、見てみたいものだな」

「ははっ!それじゃ見てみるか!」

「・・・・・・? どうやって?」

「最初期、石の世界から人類は200万年かけて現代社会まで世界を築いてきた。その200万年は、俺のここに残ってる」


 自分の頭を右手でとんとんと叩きながら、フランにそう告げる。


「・・・・・・だが、そんなものを作ってしまったら・・・・・・人間が何をしてくるか・・・・・・今度こそリョウやみんなが殺されてしまうかもしれない・・・・・・」

「・・・・・・この世界では長いこと魔族と人間が争っている。魔王書庫の資料には新星歴の前からっつう情報があった。だが、この争いは俺が終わらせる。一番血が流れない方法、無血開城でな」

「そんなこと・・・・・・できるのだろうか・・・・・・」

「もちろん確約なんかははできないさ。でも、できる限りの努力はするつもりだ」

「そう・・・だな。私も頑張らないとのう・・・!」


 話し合いで解決できればどれだけ楽なことか。これ以上一滴も血が流れない方法なのに、誰もやろうとすらしない。

 いや、話し合いで解決しなかったからこうして戦争が起こっちまうのか。


(みんな、強欲なもんだな)


 そんな事を考える今日このごろであった。



__________________________________________________________________


 一方人間の国、アランブルク王国では勇者が逃げ帰ってきたという噂が広まっていた。



「・・・・・・逃げ帰ってきた・・・・・・か・・・・・・」


 そんなドスの利いた声がその間に響き渡る。


「・・・・・・」

「なぜ逃げ帰ってきた?」

「そ、それが・・・・・・魔王はギリギリまで追い詰めたのですが・・・・・・」

「追い詰めたが・・・・・・なんだ?」

「得体のしれぬ、ヴァンパイアに邪魔をされまして・・・・・・」

「・・・・・・ヴァンパイア・・・・・・か・・・・・・貴様らが勝てぬわけだ」

「ッチ・・・・・・」

「まぁよい、今回は相手が悪かったな」

「・・・・・・」

「今回は仕方がない、しばらく鍛錬の時間を授ける。次こそは魔王の首を持って参れ」

「・・・・・・御意」


(ヴァンパイア・・・・・・少々面倒になった。軍を動かす必要もあるかもしれんな)




『「おいゴルアァァ!なーーにしようとしてんじゃこのバカたれどもーーー!!!」』


「・・・・・・」


(あのふざけた男・・・・・・絶対に許さんぞ・・・・・・)


 ドス黒いオーラを周りに撒き散らしながら彼は歩いていく。

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