第8話 手っ取り早い解決法と本当の想い
自分で作った卵料理を食べ終わると自室のベッドに横になる。手っ取り早い解決法がないかと脳をフル回転させ、結論を出そうとする。しかし、すぐに結論が出るはずもなく。
「眠くなってきた」
睡魔が自分を襲う。正直なところ、すぐにでも意識を手放し、寝たいと思っていたそんなとき、自室の扉が開く音がした。
「どうしたんだ?フラン、俺になにか用事か?」
「・・・・・・あれから私も少し考えたのじゃ。どうしたら差別がなくなるのかを」
フランも大変だなと俺は思う。それとともに尊敬する。少なくともフランは差別を臨んでいない。混血だろうが純血だろうがそんなことは何も関係ないように触れ合うだろう。俺自身差別をするタイプではないと自分で思っているが、ここまで自分以外のためになにかすることが俺にはできるだろうか?
と、そう思うのだ。
「なにか結論は出たのか?」
「私が混血の子を産む」
「そりゃ・・・・・・人間に嫁入りでもするってのか?」
つい声が大きくなってしまう。だってそうだろう?現在進行系で敵対している国の人間と結婚するということだ。それが普通の一般人で、あまり政治にも関係ない身分の人間ならあまり問題なくそういう事ができただろう。
だが、フランは今国のトップだ。人間との間に子供を生むとなれば今まで戦ってきた魔族達はいい気はしないだろう。下手をしたら暴動だって怒ってしまうだろう。
しかし、フランの答えは自分の想像の遥か斜め上を行くものだった。
「別に人間との間に子を作るつもりは全く無いのじゃ。私は人間には興味がないのでの」
混血種は別だがと付け足すフラン。
「知っておるか?」
「? 何が?」
「ヴァンパイアという種族がこの世界にいる、しかしあやつらは魔族という部類から外れておるのだ。つまり、魔族とは別の種族ということになるのだ」
「お、おう。それがどうした?」
「リョウよ、お主はヴァンパイアで・・・・・・あろう? そ、その・・・私と・・・・・・私との間に・・・の?」
いきなりの事で全く理解ができなかった。
(俺との間に子供? ん? こども?)
理解した瞬間に顔が熱くなるのを感じる。多分、自分の顔が真っ赤に染まっているのだろう。
「えっと、うん?」
「わ、私の口から言わせる気か!?」
「つ、つまり、俺と・・・その・・・・・・結婚するってこと・・・?」
「そ、そう言っておるのじゃ!お主は頼りがいがあるし、その、優しい。初対面であった私を助けてしまうほどには・・・な? あまり長い間いたわけではないが少なくともいい男だとは・・・思って・・・・・・おる・・・・・・・・・のじゃ・・・・・・・・・」
どんどん声が小さくなっていくがはっきりと聞き取れる。その後にまた言葉が綴られてゆく。
「実際のところ、一目惚れだったりするのじゃ・・・。初めて助けてもらったあの日、実はお主に・・・惚れていて・・・・・・じゃな・・・・・・・・・?」
驚きの真実が明かされた。実はフランは俺がこの世界にやってきた日、勇者に襲われそうになっていたところを助けたところで俺に一目惚れをしてしまったらしい。
吊り橋効果と言われればそれまでだが、実際嬉しいことには変わりなかった。
なぜなら俺自身、フランに惚れてしまっていたから。
「ただ、これだけは聞いておきたい。本当に良いのか?俺で」
「・・・あぁ、リョウでなければ嫌じゃ!」
彼女の体は華奢で、普通に見たら14歳かそこらの少女にしか見えない。だが、そんな彼女の民を守ろうという思いが滲み出た横顔、復興作業をしている職人たちに食事を配っていたその姿。その全てが美しく、彼女を好きになってしまうには十分すぎるほどのものだった。
「俺も、フランじゃないと嫌だ。まさかこの状況でそんな事を言われるとは思っていなかったから特に何も用意できてないけど・・・」
ベッドの上に正座をして。
「こんな俺ですが、貴女の隣に一生立って、一緒に歩いていきたい」
「私も、貴方と一生を歩んでいきたい。貴方と一緒に過ごしていきたい」
そのまま俺は彼女に口づけをする。
「んっ・・・んんっ・・・」
彼女の唇はとても柔らかい。いつまでもこうしていたいと思ってしまうほどに幸せだった。
そんな事を思っているが、流石に息ができなくなるので彼女の唇から俺の口を離す。白色の細い糸が彼女と俺を繋いでいる。
「貴方と、これからの人生を歩んでいきたい」
「あぁ、俺もだよ。フラン、貴女のことが好きです。これから、一生貴女と一緒に生きていきたい。楽しい時も、悲しいときも、悔しいときも・・・貴女と一緒に時を歩んでいく。そしてフラン・・・・・・貴女を幸せにしたい」
「決定事項じゃないのか?」
「これは俺がお前を幸せにしたいっていう勝手な想いだから」
「そうか。では決意を聞いておきたいのお」
「・・・決意で言うのであれば・・・・・・お前を大切にしていきたい」
そして、今日この日よりフランと陵は結ばれるのだった。
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