第7話 混血
しっかり悪い癖を出しながら大人数の前で宰相のことについてと魔王城のことについて話した。色々不満みたいなのはあると思うけどそこは許していただきたいところである。
「いきなり口調が変わるからびっくりしたぞ」
「あはは・・・・・・悪い癖が出てしまったもんでな。わるいわるい」
「なかなかカッコよかったではないか!」
「そりゃどーも」
素っ気なく返したのは照れ隠しのためだろう。誰かにかっこいいなんて言われるのは冗談抜きで初めてなので、少し舞い上がってしまう。
「・・・・・・照れ隠しだな」
「うん、照れ隠しですね」
「おおお前らからかうのやめろ!」
「わかりやすいのぉ〜」
「フランお前まで!!!」
そんなこんなで部屋に爆笑が生まれた。俺としてはあまり嬉しくはないが、笑いが生まれたのであればまぁ良いかと思ってしまう。
(ちょろいのかな、俺って)
『解、間違いなくチョロいです』
(無駄なところに返答しないでもらえる!?)
どうやら英知さんも俺をちょろいと思っているらしい。
「さて、みんな笑うのおしまい」
手をパンッと叩き、笑いを抑える。
「まだ魔王城完全復活したわけじゃないんだから、色々考えないt」ドゴーーーーン!!!
いきなり爆発音がした。
「何事!?」
シュッ!
ガキーーン!
風切り音の直後に、金属がぶつかる音がする。
「!?」
「危なかったな、だが想定内の速度だったぜ?」
そんな言葉を告げると更に追い打ちとして3つの何かが飛んでくる。形状的にナイフだろう。そのナイフを俺は地面に落ちた石のかけらを蹴り、ナイフに当ててナイフを落とす。
「す、すごいのぉ」
「お褒めに預かり光栄だフラン」
(あの男から殺らないと面倒なことになる)
そんな事を喋っているうちにさらに追撃が襲ってくる。どうやら標的をフランから俺に変えたようだ。
(好都合だ!)
俺に標的が変わったならナイフを避け、接近することが可能だ。
飛来してくるナイフを左右や上下方向に避け、段々と接近していく。相手は下がりながらナイフを投げているようだが、スピードは圧倒的に俺のほうが速いのですぐに懐に入り込める。
「なんであたら・・・・・・」
敵が言い終わる前に俺のボディーブローが炸裂し、壁にクレーターのような凹みをつける。
「ぐ・・・あぁ・・・」
「ふぅ、それなりに強かったな」
首をパキパキと鳴らしてそうつぶやく。どうやら襲撃者は気絶しているようだ。
「・・・・・・この女」
「?もしかして知り合い?」
「いや、一度も会ったことは無いの。でも、この者は最近魔族達に悪い意味で有名になってる混血者」
「混血者?もしかして人間と魔族の?」
コクッとフランは頷く。まさか人間と魔族の混血が居るとは思わなかった。
「混血者は魔族からも、人間からも嫌われている存在なのだ」
「・・・・・・もしかしてフランも?」
「私はそんなことは思っておらん。かなり珍しいとは思うがのぅ」
「そっか」
「ただ、世間はそうはいかぬのだ。少なくとも人間は魔族たちの敵、魔族も人間の的なのだ。どちらからも嫌われてしまっても仕方ないと言えよう」
やはり世界はそう上手く行くものではない。
「行きにくい世界なんだなぁこの世は」
「・・・・・・近いうちに、こんな世界は変える」
「そうだな、一緒に変えていこう。フラン」
「うむ」
この世界は混血には行きにくい世界だろう。少なくともこの少女以外にも混血魔族は居るはずだ。そういう奴らを救ってやりたいと思う。
(ただのエゴだな)
「いやぁ、びっくりしたぜ。いきなり壁が砕け散るんだからよ」
「いやもうすーごいんだから」
「ボロクソにぶっ壊れちまってんな」
「ま、物なんざいくらでも直せるんだ。誰も死ななくてよかった」
「そうだな、にしても・・・・・・こいつどうするよ」
問題はこの少女。襲撃してきたわけだからもちろん罪に問われる。魔族の法律とかなんとか知ってるわけではないし、分かるかと言われれば全く持ってわからないわけだが反逆罪?とかに問われるのは当然だろう。
「ここで打首にすべきでは?」
とか
「やはり裁判はかけねばなるまい」
など、個人個人で様々だ。まぁ打首はなしにしても、何もお咎めなしとは言えない。本来なら本当に打首になるほどの事をしでかしたのだ。
「とりあえず客室にでも寝かせておいてやろう」
「うむ、その方が良いの」
周りが言い争っている間にそそくさとその少女を客室のベッドへ運ぶ。
(気絶してるとはいえ後ろに敵が居るのにそのまま話すとか・・・大丈夫かあいつら)
『警戒が足りてないと思われます』
(だよなぁ、もうちょっと警戒してほしいところなんだけどな)
英知さんとそんな事を話している間に客室についた。
「此処に入るのは魔王城が復活していらい初かもな」
「私も一度も入ったことないのぉ」
「そうなのか?それじゃふたりとも初めてか」
「うむ、ちょっとだけ楽しみじゃ」
フランとたあいない会話を交わしながら少女をベッドに横たわらせる。
「どうしたらこの問題が解決するのかのぉ」
「ま、一番効果があるのは魔族のトップ層の半数以上が異種族と関係をもって、何も変ではないという風潮を作る。今の状況的にかなり手っ取り早い方法だな」
「そう、か・・・・・・」
その提案を魔族たちがすぐに受け入れてくれるのであれば本当に手っ取り早いのだ。だが、それですぐに納得してくださいではい分かりましたなどと、簡単に行くわけではないのだ。
「・・・・・・ある程度日も傾いてきたし、明日考えるか」
「うむ」
話しているうちにいつの間にか日が傾いてきた。客室を出て、それぞれ自分の部屋に向かう。
「飯、何作ろうかな」
そんな事を呟きながら歩いていると自室につく。
「・・・・・・ま、適当でいいか」
この魔族の国では自分の飯は自分で作る、それが基本のようだった。それを聞いて普通に驚いたのだが、それよりも驚くことがあった。フランも自分で飯を作っていたのだ。普通料理人みたいなのが居るはずだが此処ではそんなことはないらしい。
実際、この白の中にいる魔族は全員普通に飯は作れるし、それなりに上手いのだ。
「現代の日本人より全然真面目そうだな」
軽く卵の料理を作りながらそう呟いた。
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