第5話 魔王城復興作戦開始!【3】

「さて、これから魔王城復興作戦に正式に取り掛かろうと思う」


 俺の第一声とともに、魔王城にいた(俺含めて7人)がおーー!と声を上げる。意外とここの魔族たちノリ良いんだなと実感した。因みに、これは余談だが、火葬が終わったあと、死にかけていた4人達に自己紹介をしてもらった。おいおい紹介しようとは思う。


「だがしかし、現状人手が7人では少なすぎる。俺も建築には全く詳しくないし、城なんて以ての外だ!」

「多分、此処に居る誰もが詳しくないであろうな」

「そうだな、全く詳しくない」


 現状驚くほどに建築に詳しいやつが存在しない。一体どうしたものかと考えていると、一人が声を上げる。


「一つよろしいでしょうか?」

「お、セナール、なにか良い作戦でも思いついたか?」


 今声を上げたのはセナールだった。


「私の父がものづくりを嗜んでいて、一時期大工としても働いていたのです。もしかしたら復興作業に取り組めるかもしれません」

「そりゃありがたい。今は猫の手も借りたい状況なんでな」

「・・・・・・ねこのても・・・かりたい?」

「あ、こっちじゃその言葉は使わないんだな。まぁ、気にしなくていいよ」


 向こうの世界でのことわざとかはこちらではあまり通じないらしい。というか、猫の手も借りたいが通じないならほとんど通じないだろう。もしかしたら猫がいないか名前が違うだけかもしれないけど。


「まぁ、職人一人じゃ到底足りないから城下町からまだまだ集めないといけないわけだ」

「それなら・・・私が行ってくる」


 そこで一人が声を挙げる。こちらはリアリス、瓦礫に埋まっててクラッシュ症候群を発症し、かなり危ない状態に陥っていた者だ。


「たしかに、リアリスが適任であろう」

「なんでリアリスが適任なんだ?フランとか知名度かなりあるだろ?」

「私よりリアリスのほうが城下町に出入りしていてのぉ、住民たちからの信頼度はとても高いのだ」

「なるほど、それはかなり適任だな。よし!リアリスに任せようか!」


(まぁ、リアリスに任せれるんだったらそのほうが良いな。俺も多少時間できるし、多少別のことにも集中できる。あとは英知さんの計算がどのくらいで終わるかだが)


 そんな事を考えていると、俺の脳内に声が響く。


『計算が完了しました』

(よし、思ったよりも早かったな、で、どうだ?計算上可能なのか?)

『解、可能です。確実に成功します』

(サンキュ、それさえ解かれば俺がなんとかする)

『了』


「さてと、俺は個人で動かさせてもらうから基本的な指示とかはフランがやってもらっても良い?」

「あぁ、元からそのつもりだったから大丈夫だぞ」


(あとは俺がなんとしてでもこの計画を成功させなければならん、絶対に成功させる)


 俺が今やろうとしていることは、魔王城内や城下町の設備の強化だ。見た感じこの魔王城は井戸などを使って水を取っているし、ロウソクや魔法で明かりをともしたりしている。明かりは良いとしても水はしっかりとした物がほしいのだ。


 井戸の水の質はどちらかというと悪い方になる。雨水とかが入り込んでしまったりした影響だろう。日本とかの井戸ですらあまり安全とは言えない。なぜなら水自体の消毒がされていないからだ。


 水を消毒するには塩素が必要だ。 塩素は原水の中のマンガン、鉄、細菌やアンモニアの除去等にも効果がある。ただ、その薬品、次亜塩素酸ナトリウムをイチから作る。


「今から俺はこの魔王城内に足りないものを作る。そのために塩水がほしいんだが、此処には塩はあるのか?」

「しお?」

「こっちでは言い方が違うのか・・・・・・塩化ナトリウム・・・つってもわからんよな・・・・・・」

「えんかなとりうむ・・・・・・とはなんだ?」

「えっとな、舐めるとしょっぱい透明な石だ」


 果たしてこれで伝わるかどうか。もしかしたら粉って言ったほうが良かったかもしれないが・・・・・・。


「あぁ、ソルトのことであるな」


 ソルト・・・・・・まさかの日本語の名称じゃなくて英語圏の名称だったとは。


「あぁ、それだそれ。それってここにあるか?」

「そんな物、ここには幾らでもあるし好きに使ってくれて構わないが・・・・・・」

「そりゃありがたい、好きに使わせてもらうよ」

「一体何に使うのだ?」

「今から作る薬品にな」

「?」


 フランは全くわからない様子では会ったがまぁ良いとしよう。多分こっちは科学なんてほとんど進んでないだろうしね。


「あとは、純水がほしいが・・・・・・こいつは流石にないから作るしかないか」

「く、詳しいことはわからぬが・・・・・・頑張ってくれ」

「あぁ、蒸留すれば純水なんて簡単に作れるから。まぁ時間はかかるけど」


 純水とは、その言葉のとおりに純水な水のことだ。日本にあった水道水には塩素やらナトリウムやらカルシウムやらケイ素やらがバチクソ入ってるからな。そんな状態で次亜塩素酸ナトリウムは作れない。


 そういえば良い忘れていたが、次亜塩素酸ナトリウムって言うのはわかりやすく言うと、漂白剤だ。


「さ、ここから魔王城復興作戦本格始動だ!」


 新星歴514年1月5日の午後4時過ぎに、復興作戦が本格始動したのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る