第3話 魔王城復興作戦開始!【1】

 あれから少し時間が経ち、ふとあることに気がついた。


「なんかこの城?ボロボロだな」


 今俺が居る場所は多分魔王城なのだが、明らかにぼろぼろになっていた。城なのにこんなにボロボロになっているのは明らかに不自然なのである。


「それはさっきの勇者パーティーのせいであるな」

「なんかそろそろ倒壊しそうな感じだな」


 周りにある支柱は折れ、壁にはヒビが入っていたり穴が空いていたり完全に消失していたり。床もところどころ抜けているところがある。正直この状態で保っているのが不思議なくらいだ。


「それに、周りに・・・・・・これは魔族たちの遺体か?」

「そうだ、生き残りは殆ど残っていないだろうな」

「まぁ、この感じだとな。でも生き残りは少なからず居るはずだ。速攻探しに行くぞ」

「わ、わかった」


 生きている魔族が居るかもしれないし、さっさと見つけ出して治療をしないといけない。


(生きているならどうとでもなるしね)


 そんな事を考えながら生き残りを探していると、英知さんの声が聞こえた。


『主様、この先10メートル先を右に曲がり、更に18メートル先に行ったところに複数の生体反応を確認しました』

(え?そんなことわかるの?)

『スキル、中心の世界により、スキル{気}を獲得しました』

(なんかチート能力追加されてるんだけど!?)

『否、デメリットが存在るのでそこまで反則的ではありません』

(あ、なるほど。デメリットがちゃんと存在するのね)

『よってデメリットにより、しばらくの間「英知」が使用できなくなります』

(え?それどのくらい?)

『24時間です』

(結構時間かかるんだな)

『よって、しばらくの間、私は機能を停止します』


 そんなことを英知さんと離していると、生き残りを発見した。


「ここには4人の生き残りか。3人は見たところ継承だが・・・・・・やばいな、一人の足に瓦礫が乗っている」

「私が持ち上げるからその間に引っ張り出してくれ」

「わかった、俺も持ち上げる。レオナ、引っ張り出してくれ。それじゃいくぞ、せーの!」


 そうして、俺の掛け声と同時に瓦礫をどかし、一人を救出した。だが、瓦礫に挟まれていた魔族の足を見ると、軽く青くなていた。


「・・・・・・クラッシュ症候群かもしれない」

「くらっしゅ・・・・・・しょうこうぐん?」

「フラン、魔族と人間の肉体的特徴には違いがあるか?」

「いや、ほとんど違いはないぞ?」

「・・・・・・まずいな」


(もし違いがあまりないと言うならクラッシュ症候群の可能性がある)


「そ、その・・・・・・くらっしゅしょうこうぐんっていうのはなんなのですか?」

「クラッシュ症候群っつうのはな、がれきなど重いものに腰や腕、腿などが長時間挟まれ、その後圧迫から解放されたときに起こるものだ。筋肉が圧迫されると、筋肉細胞が障害や壊死を起こす。それによってミオグロビンやカリウムといった物質が血中に混じって毒性の高い物質が蓄積されちまう」

「ど、どういうことだ?」

「下手したらあと30分もしないうちにこいつは死ぬ可能性がある。圧迫されていた部分が解放されると、血流を通じて毒素が急激に全身へ広がって心臓の機能を悪化させて死に至る場合が多い。メチャクチャ簡単に言うと毒が回って全身が汚染されて死ぬってこった」

「ま、まずいではないか。な、治るのか?」


 まず治すことは不可能だ。今現在ここには医療器具の一つもないし俺はそもそも医者やなくてただ知識のある人間ってだけだ。医療器具、技術者、何もかもが今ここには足りていない。助け出すのは不可能なのだ。


「まず無理だな。俺に医療技術はないし、そもそも器具が揃っていない。まず助かる可能性はないな。でも、もしこの世界に回復魔法とかがあるなら話は変わるんだが」

「私は回復魔法は一切使えないからのう・・・・・・」

「わ、私使えます。でも治るかどうかは不明です・・・・・・」

「さすが魔法使い様だな、やって見る価値は十分にある」


 今まで話したのは俺がいた世界での話だ。もしこの世界に肉体を再生、回復させる魔法が会ったとするならば、助かる可能性は跳ね上がる。


「それじゃあやります・・・・・・回復魔法ヒール


 結構普通なんだなと思いながら俺は回復魔法を見ていた。この状況を見ると、本当に異世界に来たのだなと実感させられてしまう。だってそうだろう、壊死しか買っていた足が、こんなにも簡単に治ってしまうのだから。


「さすがファンタジー世界ってところだな」

「ふぁんたじい?」

「なぁに気にすんな、こっちの話だからよ」


 ただ、ファンタジーの世界であるのは事実だが、今この状況は現実だ。周りを見れば死体が転がっている。生き残りをスキルで探したが、魔王城内には、この四人以外一人としていなかった。


 ファンタジーの世界であるがここは現実だ。死ねば命は消え去るし、殺せば相手は帰ってこない。7つの玉を集めて復活とか過去に行ってナンタラカンタラなんてできない世界なのだ。


 死んだらそこで最後。


 俺はそのことを強く実感させられてしまった。


「命って、実に一瞬なんだよな」

「お、お兄ちゃん?」

「急にどうしたのだ?」

「いや、何でもない。とりあえず魔王城復興作戦の続きをしようか」

「・・・・・・そうであるな」


 適当にはぐらかして、俺は魔王城復興のプランを考えるのであった。



 新星歴514年1月4日が終了した。

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