第67話 バトル大会とその景品
強化合宿一日目の午後3時。
たっぷりと練習したあとは、お待ちかねのおやつタイム。
アプローチ練習場の芝生に座り、カエデと瑠利が運んできた美里の作ったシフォンケーキに舌鼓を打つ。
合宿といっても、そこは若い女の子たち。
甘い物を食べてまったりすれば、元気も回復。
30分の休憩を終えて、再び練習再開。
一年生の四人は練習場へ。
残る団体戦のメンバー五人で、恒例のバトル大会だ。
ルールは簡単。
陸斗が指定した場所からのパター勝負五本と、アプローチ勝負を五本。
その1位回数で順位を競う。
「優勝賞品は……そうだな、夜にゴルフ中継の録画を見るので、その時にリクトを自分の前に座らせて抱っこできるとかは、どうだ?」
「ええっ!?」
咲緒里の案に、驚いた声をあげたのは陸斗だけ。
「えっ、ほんと?」
「おお、豪華」
「サオリ姉、いいの?」
「リクくんを抱っこかぁ。がんばろっと」
「うむ、異論はないようだから、決まりだな。まあ1位だけというのも味気ない。2位にも短い時間だけ許可をしよう」
「「「「やったー!」」」」
とまあ、あっさりと豪華な景品にされた陸斗。
「すまないが、リクトも協力してくれ」
そう咲緒里にお願いされれば、「うん、わかった」と素直に返事をする。
一般的な思春期の男の子であれば、そういった状況を恥ずかしがるもの。
けれど、昔から詩穂やカエデ、咲緒里といったお姉さんたちに囲まれていた陸斗は、スキンシップに慣れていた。
おまけに、今は海未や彩夏、明日花と。更に増えている。
そんな女の子たちばかりの花園に、ポツンと混ざる陸斗はある意味勇者。
同世代の男の子たちが見れば、羨ましがられるはずだ。
「さあ、始めるぞ」
「「「「はい!」」」」
こうして始まったパター勝負とアプローチ勝負は瑠利の圧勝かと思いきや、思わぬ伏兵がいた。
「ちょっと、りん。少しは手を抜きなさいよ」
「ふふふ、カエデには負けん」
「ああ、りんさん、上手いです」
「まさか、りんが優勝するとは……」
「流石はりんちゃん。ジュニア時代からの経歴は伊達ではないわね」
と、優勝は五回勝ったりん。
アプローチやパターといった細かい技術は、やはり経験がモノをいう。
これまでジュニア時代に散々競技へ参加してきたこともあり、感覚に優れていた。
そして二位は三勝の瑠利。
あとは咲緒里と陽菜乃が一勝づつ。
カエデは欲望が溢れすぎてて、ダメダメだった。
「ほんと、おまえはリクトが絡むと、どうしようもないな」
「ううう、ごめんさい……。だから、少しご褒美を分けてください」
「……ダメだ」
そんな、懲りないカエデであった。
こうして楽しいお遊びもありながらも、厳しかった合宿初日は過ぎていく。
夕食の後は、録画してあった女子ゴルフの中継を、みんなで見る。
その間、りんと瑠利に抱っこされていた陸斗は、ちょっと落ち着かな気であったが、景品であるから仕方がない。
ただ、一年生を含め、皆が『明日こそ私が』などと思われていることなど、知る由もなかった。
そして翌日。
朝の五時に叩き起こされたゴルフ部のメンバーたちは、一人だけ実家へ帰らされたカエデを含め、みんなでボール拾いと練習場の開店準備を手伝い、朝食へ。
昨日の部屋割りは、一年生の四人が女子寮の空き部屋へ二人ずつ。そしてりんは瑠利の部屋へ。残った咲緒里と陽菜乃は母屋の空き部屋、詩穂の隣の部屋を使った。
ちなみに彩夏と明日花は一緒に女子ゴルフの研修会に参加していて、留守である。
高校を卒業した彼女たちにも戦う場所は用意されていて、そこで経験を積み、プロテストへと向かうのだ。
ということで、朝の忙しい時間が過ぎたら、練習開始。
昨日と同じようなローテーションで、二日目、三日目と練習を続け、その成果を試すべく、更に二日後、春乃坂ゴルフクラブをラウンド。
彼女たちは本番を迎えるのだった。
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ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。
一日目を丁寧に書いたので、残りの二日は後ほど。
大会中にエピソードとして描写される予定です。
そして、次はリクトのお誕生日。
7月30日のお話。
それが終われば、いよいよ第二部のクライマックス。
地区大会へ突入。
ちょっと長くなる予定なので、申し訳ありませんがお付き合いください。
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