第53話 ゴールデンウィーク突入
新学期も始まり、早ひと月。
さっそくの長期休みとなる、ゴールデンウィークへ突入。
ゴルフ場も稼ぎ時であるが、それは練習場も同じ。
ただ、神川ゴルフ練習場では、佳斗が不在。
その理由も、愛知県で行われている男子ツアーに、大内雄介プロが参加しているためだ。
おかげで、残ったメンバーで忙しい朝を乗り越えなければならない。
「みんな、行くわよ」
「「「おおっ!」」」
詩穂のそんな掛け声で始まった営業は、6時~10時までがピーク。
美里が来た時点で、彩夏と瑠利、陸斗が抜け、詩穂だけがフル稼働。
正午になって、ようやく休みである。
「死ぬ~」
「何言ってんの。これまではずっと兄さんとリッくんでやってきたのよ」
「超人ですか?」
「あなたの体力が無いのよ」
「ガーン」
「シホお姉ちゃん、古いよ」
12歳の子に、そうダメだしされる詩穂であった。
とはいえ、この後の1時から海未が出勤してくるので、美里も受付を彼女と交代。
休憩終わりの詩穂が事務室で帳簿と格闘する中、今度は美里が休憩に入るのであった。
午後二時。
瑠利の母親である遥が娘を迎えに来た。
「ルリ、準備はできた?」
「あ、うん、すぐ行く」
それから5分後、瑠利は背中に青字で春乃坂学園と書かれたピンク色のポロシャツと、白のパンツ姿で登場。
肩には脚付きのゴルフバッグを担いでいた。
「遅いわよ。これじゃあ遅刻してしまうわ」
「大丈夫。カエデさんより早いから」
そう話していると、今度は同じような格好でカエデが登場。
「お待たせ~」
「ほらね」
「えっと、なにが?」
全く事情のわからないカエデの頭には、はてなマーク。
そこへ美里も出てきて、彼女の頭を無理やり押さえつける。
「もう、痛いよ、お母さん」
カエデがそう言ったところで、お構いなしだ。
これから世話になるというのに、あの態度は我慢ならなかった。
「すみません、遥さん。こんな娘ですが、お願いしますね」
「ええ、任せてください。こういうの初めてなので緊張しますが、勝手のわかるカエデちゃんがいてくれて、助かるわ」
そう言う遥も、それには慣れたもの。
あまり気にした様子もなく、むしろ感謝を伝えてから、車に乗り込んだ。
「「じゃあ、行ってきます」」
そうして遥の運転する車が、練習場を出ていく。
これから彼女たちが向かうのは、春乃坂ゴルフクラブ。
今日はそこで最終組が出た後、練習させていただく予定なのだ。
これはゴルファー人口を増やす取り組みの一環で、若者世代のゴルファー育成が今後の課題。
競技者の高齢化が進み、このまま競技人口が減少すれば、それは業界の衰退にも繋がっていく。
そのため、ゴルフ練習場やゴルフ場などは、こういった取り組みを推進し、若者のゴルフへの関心度を高めようと努力しているのである。
そして、春乃坂ゴルフクラブでも数年前から春乃坂学園高校と提携を結び、その予定日が今日であった。
「数少ないコース練習日だからね。みんな緊張してなければいいけど」
「あはは、カエデさんは全く緊張し無さそうですもんね」
「なにぃ、それはルリ。あなたの事でしょう。聞いたわよ。ツアープロ相手に、平然と打ってたんだって? 鋼の心臓って呼ばれてるわよ、あなた」
「あはは、あはは……」
本人としては、ちょっとした軽口のつもりが、ブーメラン。
ただただ苦笑いするしかない、瑠利であった。
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