第43話 春乃坂ゴルフクラブ➂

 スタートホールでティーショットを打ち終えた四人は、カートに乗ってセカンド地点へ向かう。

 そこは両サイドをバンカーに挟まれたフェヤウェイで、瑠利の球だけが少しだけ手前という状況だ。


 ゴルフの打順は、ボールがグリーンのカップから遠い順。

 瑠利の球の位置からはまだ150ヤード以上残っており、打順は最初である。


 そこで彼女が手にしたクラブは、6番アイアン。 

 ライ(ボールの置かれた地形)は、ややつま先上がりで、ピン位置は左の手前。

 

 状況から考えてフックしやすい地形であり、ガードバンカーが凄く邪魔だった。


「狙えない時は、グリーンのセンターへ乗せるだったよね」


 瑠利は師匠から教えられた言葉を呟き、迷わずそこを狙い打つ。

 けれど、やはりというべきか、ボールにはフック回転がかかり、グリーン中央やや左に落下、そこから転がり左の奥で止まった。


「うわっ、下りのロングパット」


 瑠利はボールの止まった位置を見て、そう叫ぶ。


 結果としては最悪。だが、グリーンには乗った。

 そう考えればツーパットでパーなので悲観するほどではないが、彼女の技術ではまだ難しいパットであることは確か。


 おまけに、ここでプロたちの凄さを実感する。

 というのも、涼花と里桜のボール位置は、瑠利よりも20ヤード先。

 そして真理香のボールは30ヤード先だった。


 番手にして三つ以上。

 城戸真理香は残り120ヤードほどをPW(ピッチングウェッジ)で打って、バックスピンでピンそば1メートルに寄せる。


 そして、先に打った涼花と里桜も、残り130ヤードを9アイアンでワンピン以内(ピンの長さは8フィート。メートル換算で2.43Mメートル)に寄せていた。


 ゴルフでは残りの距離が短いほど有利。

 それは使用するクラブの番手の違いで、数字が大きいほどボールは上がりやすいのだ。

 このホールのようにピンは手前、そして手前にはガードバンカーがあって、確実に上げなければならないような時には、瑠利のような6アイアンでは難しくとも、城野真理香の打ったPWや、涼花や里桜の使った9アイアンなら簡単に止められる。

 プロたちにとって、ショートアイアン(7~9アイアン)やウェッジ(PW、AW、SWなど)を持つ時は、ピンをデッドに狙う時。


 要するに、ティーショットで十分な飛距離を出し、出来るだけ短い番手のクラブでピンを狙えるようにすることが、ゴルフの基本なのである。

 


 そして、グリーン上。


 グリーン芝はベント。

 冬場でもあり、高速となったグリーンは上から速く、まだ経験の乏しい瑠利には厳しい状況だ。

 パター練習場で合わせたタッチをどれだけ再現できるかがカギであるが、結果はファーストパットでピンを2Mオーバー。返しの上りもショートし、3パットのボギー。


 瑠利は悔しそうにするが、その結果は仕方のないこと。そもそも、上に着けた時点で終わりであった。

 

 パターの基本は手前から。

 というのも、グリーンは比較的受けている事が多く(手前から奥へ傾斜がついているため、奥の方が高い)、奥へ着けたら下りのパットが残ってしまう。

 それを避けるためにも、ショットにしろアプローチにしろ、手前からの転がしに徹することがベストであったが、ここのコースは手前にガードバンカーが多くて有名だった。


 まだ中学生であり、飛距離の出ない瑠利にとって、ここは厳しいゴルフ場。

 目の覚めるようなショットを放てば十分な飛距離を出せたりもするが、安定してという意味では、まだまだなのである。



 そして、3パットした瑠利とは違い、城戸真理香と涼花は1パットで沈めてバーディー。里桜も2パットのパーと、彼女だけが出遅れたのであった。








―――――――――――――――――――――


ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。


昨日同様、文章の変なところは後で直す予定です。(2月以降)


それと内容ですが、ゴルフ場での用語の解説など、この際に済ませてしまおうと思いまして、このような形をとりました。

あと二ホールほど解説したら、最終ホールへ飛ぶ予定ですので、もう少しお付き合いください。


 

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