第38話 新年会②
パシオンゴルフガーデンイベント会場となるパーティールーム。
ここにはすでに多くのプロゴルファーが集まり、主役の登場を待っていた。
その主だった顔ぶれは、若き日の雄介や佳斗の戦友である井澤翔馬(42歳)。
最近ではラウンド解説をメインに活動している、シニアプロの陣馬秀雄(52歳)。
昨年度は大活躍。若手の筆頭株で、賞金ランク3位だった長瀬祐樹(28歳)。
更には、ツアーで何度も上位に顔を出す、
それに加え、女子プロ界からも来季のシード権を獲得している
そして大内雄介の愛弟子でありツアー通算3勝の実績を持つ
決して広いとはいえない会場に、総勢20名のプロゴルファーが、集まり歓談中なのである。
その彼らの会話を覗いてみれば、みな口にするのは神川佳斗の名。
昨年末に雄介のキャディーを務め、優勝に導いた彼の手腕に、みな興味があるのだ。
あわよくば、自分のバッグも担いでもらいたい。
そんな思惑が見え隠れするが、とりあえずは知己を結ぶことが大事。
顔なじみになっておけば、可能性はゼロではないのである。
そして、その会場で給仕係を務めるのは、大内雄介プロの門下生たちだった。
まだ未熟な生徒ばかりであるが、こうして間近でプロと接することで意識を高めようとの狙いである。
いずれはプロになって、同じ立場に立ちたいというのであれば、見習うべきところも多いであろう。
それを感じ取れるかどうかは本人次第であるが、こういった心構えの有無で、この先の結果へと繋がったりするのだ。
そして、常日頃からそう教育されている彼女たちは、真剣な面持ちで業務を続けていた。
☆ ☆ ☆
ところ変わって、こちらは神川ゴルフ練習場。
お正月気分も抜け、通常通りの営業が始まっていた。
本日は平日ではあるが、ゴルフ場ではまだまだ連休扱い。
トップのスタート時刻は土日祝日と変わらず7時からである。
そのため、早めの営業を始めたいところだが、この時期の6時といえば、まだ真っ暗だ。
おまけに寒さも厳しいということで、営業開始は冬時間の6時30分から。
起き抜けの身体が硬い状態での練習は故障にも繋がりやすいため、トップスタートの人たちには諦めてもらい、余裕のある人のみが練習できる環境である。
できれば十分なストレッチを行い、万全な状態で練習をして欲しいものだが、案外朝は忙しいもの。
結局は焦ってボールを打ってしまい、ショットはボロボロ、動きも最悪。
そして、その結果をゴルフ場でも引きずり、散々なラウンドになった愚痴る人たちが続出するのだ。
なので、くれぐれも余裕を持って、行動してもらいたいものである。
ということで。
今朝は、すっかりここに居着いた彩夏が5時30分からボール拾いをし、新年会へ出かける二人をフォロー。
ちなみに彼女には、大内雄介プロから手伝いの要請は無かった。
というのも、彩夏はすでに女子寮へと住居を移しており、瑠利に続く二番目の入居者となっていた。
そのため、優先すべきはここであり、佳斗のいない練習場を任されたのが、彼女である。
佳斗と瑠利が出かけていったのを見送り、今は受付で陸斗とおしゃべり中。
「ルリ姉ちゃん、だいじょうぶかな」
「そうね、あの子だったら、平気じゃない?」
「そうなの?」
「たぶん受付には光莉さんがいるから、上手くやってくれると思うわよ。彼女、普段は惚けたフリをしてるけど、しっかり周りを見ているからね。それにルリって、けっこう気が強いでしょう」
「うん! だって、小学生の僕相手に本気で勝ちにくるんだよ。手加減されるのはイヤだけど、それでも全然勝たせてもらえなくて、すっごく悔しかった」
そう話す陸斗は、その時のことを思い出したらしく、ちょっと拗ねた様子。
けれど、そこは年の離れたお姉さん。
「ははは……、それは流石に大人げないかもね」
と、彩夏が同意したことで、陸斗の機嫌も直っていた。
そして、その後も二人で楽しくおしゃべりし、いつの間にか瑠利のことをすっかり忘れていたけれど、もちろん彼女には内緒である。
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ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。
次話についてですが、申し訳ありませんが一週間程度お休みとさせていただきます。
理由は本業が忙しくてと、ありきたりなことですが、無理をするよりは公開を休んだ方がいいと判断しました。
31日までには10万文字届かせる予定ですが、ギリですかね。
すみませんが、よろしくお願いします。
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