第29話 報酬
先週、御殿場で開催されたツアー競技で、大内雄介プロが優勝。
優勝賞金4000万円を手にした。
これによりキャディーをした佳斗に支払われる報酬は、賞金の10パーセント、400万円。
ついでに言うと、キャディーフィー(相場は1試合10万円程度)は別であるため、佳斗はこの一週間で400万円以上稼いだことになるのだ。
もちろん優勝した雄介は賞金のほかに副賞も盛沢山と桁違いだが、それは彼がそれだけの存在であるからであり、キャディーでしかない佳斗がこれだけ稼ぐだけでも凄いことである。
とはいえ……、これが何度も続くほど、プロの世界は甘くない。
今回優勝したプロが翌週には予選落ちするなど、ザラにあるのだ。
コース替わりによる得手不得手や、天候の違い、または体調的な問題。
同じプロがずっと勝ち続けるようなことはなく、次々に台頭する新世代。
要因は様々あるが、ただ、それでも今回の雄介は、絶対に勝つつもりでいた。
それを実現してしまうあたり彼の恐ろしさであるが、どうしても優勝した報酬を佳斗に渡したかったのだ。
同学年で同期の二人がプロを目指し、一方はトッププロ。そしてもう一方は、しがないティーチングプロ。
支援を約束したとはいえ、ただの施しであれば佳斗も受けなかったであろう。
それを瑠利の師匠にさせることで認めさせ、今度は自らが稼いだ正当な報酬として、現金を渡すのである。
億を超える年収を稼ぐ雄介ならともかく、400万円といえば今の佳斗には大金だ。
これを簡単に稼げるところを見せ、彼の意識を変えたかった。
『これからも私のバッグを担いでくれるのなら、相応の報酬は約束するよ』
雄介は、そう彼へ伝える。
そして、佳斗もその意を汲み……。
『わかったよ。だが、全ては無理だぞ』
『ああ、それでも助かる。まずは残り三戦。頼んだよ』
『任せてくれ』
これが優勝した日の夜に交わされた、二人の約束であった。
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第29話をお読みいただきまして、ありがとうございます。
今回は専属キャディーへの報酬についてですね。
補足をしますと、一般的に支払われる額は、賞金の5%から10%です。
これは順位によって変動するという意味で、優勝者のキャディーへ支払われる額は賞金の10%が一般的であり、順位が下がればそれに合わせて率も減っていくようです。
まあ、賞金といっても上位に入らなければ多くないため、それ相応ということでしょうか。
下位では移動費やホテル代、キャディーフィーを払えば、無くなってしまいそうな額です。当然、専属のキャディーが経費を払うなんてことは無いので、お代はプロ持ち。
おまけに、予選を通らなければ全て自腹と、かなり厳しい世界ですね。
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