第13話 佳斗と遥の会話

 佳斗と遥は事務室に設置されたソファーに対面で座り、先日決まった今後の予定について話をしていた。


「――――――ということに決まりまして、今後は離れの家を女子寮へ改修することになりました。着工は十一月ごろになるかと思いますので、早ければ翌月には完成して、入居できるでしょう。美里が寮母をするって言ってましたし、生活の方は安心してください。ただ、それまでは少し不便ですが、ルリちゃんには母屋の方へ泊まっていただくことになりますが、よろしいですか?」


 佳斗は大内プロと話し合った結果を、遥に伝える。

 すると、彼女はその内容に驚いた様子で、感謝の言葉を述べた。


「ええ、むしろ、こちらこそ娘のために気を使っていただいて、申し訳なく思います。改めて、ルリの弟子入りを認めていただき、ありがとうございました。もし宜しければ、女子寮へかかる費用も私たちに負担させていただければと思いますが……」


 そう言葉を続ける遥。


 元はといえば、娘の希望で始まった、佳斗への弟子入りだ。

 それがいつの間にか大事おおごとになり、想像を超えた大きな力が働きだしていた。 

 あとは、それをどう乗り越えるかは、本人次第。

 ならば、全力でそれを支えるのが、親の務めである。


 そう、覚悟を持っての言葉であったが、佳斗はそれほど重要には捉えていなかった。

 楽しそうに微笑んで、それに答える。


「ああ、それについては心配いりませんよ。全て雄介に負担させましたからね。まあ、その代わりに、もう何人か面倒見ろと言われましたが、ルリちゃんを優先するように念を押しておいたので、安心してください」


 それを笑って話せる佳斗は、やはり大物。


 生活の面まで面倒を見てくれるという万全のサポート体制に、遥はただ感謝しかなかった。


「ほんと、何から何まで、ありがとうございます」


「いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」


 こうして、プロになりたいという瑠利の夢は、大人たちの支えがあって、実現に向かっていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る