メタ・ワールド・システム(仮)を考える

2023年末から2024年初は18000字ほどのお話を書いておりました。今年の(小説を書くに当たっての)目標は、構成と心理描写をよく考える、だったのですが、一本目から完結させるので精一杯。やれやれ……


でも一つ気付きました。私は文芸に詳しくないので(言い訳。すみません!)元より自明の理なのかもしれませんが、小説を書く場合『登場人物をまず考えて、動かす』か『シチュエーション(場面)を描くか』という二つの手法があるのだと思います。短編だと人物のバックグラウンド説明にあまり字数が取れないので、シチュエーションつまり出来事が起こって、それに対する人物の感情や思考を掘り下げるほうが面白いのかしらん、と思い始めたものの時既に遅し。


私自身は八割がた人物を始めに考えているような気がします。『いつか泡と消えるまで』もレイモンドと槙野がいて、マリアがいて、リックとハインリクがいて、彼らの関係はどういうものなのか、彼らの過去と現在はどういうものなのか、それがどう変化するのか、というふうに構成を考えました。実はレイと槙野の同級生(女性)が訪れるエピソードもあったのですが、時間と字数の関係で割愛。


そうして有象無象に登場人物が増えていき、スピン・オフではないのですが、同じ人物が別のお話にカメオ出演(?)している場合が有ります。マリアは『無情遊』に名前だけ出てきます。『アップサイドダウン』の佐久さんと、『サザンクロス・ナイツ』の小野さんは大学競泳での後輩と先輩の間柄です。豪州が舞台になっているお話は基本的に、小野日暮・小野秋人姉弟が人間関係の軸になっています。『Above the』のかずらと、『FW:』のハルキとミン、それから日暮は元バイト仲間。


スター・システムと呼ばれるものがありますが、言うなれば世界枠を共有しているメタ・ワールド・システム(造語)。全く独立していて関係無い人たちも大勢いますが、ともあれ書いている人は一人なので、どうしても好きなタイプが多出する。男女ともに20代後半から40代までの骨太マイペースがツボ……なぜならこの人たちなら多少酷い仕打ちをしようが自分で打開しそうだから。可憐な女性(男性も)や子どもたちが悲しい目に遭うのは辛いんだ……読みますけれども。


それから今回自主企画に参加されている他の作品を拝読して、どれも美文なのですが、魅力的な文体にもいろいろ有るのだな、と思い至りました。流れるようにスムーズな、音楽が鳴り響くような、殴られるようにパワフルな、雷鳴フラッシュのように鋭く斬新な、じっとりと湿ったような、華やかさにも個性があるし、温かい冷たいリジットな柔らかな文体というのは、どこからやってくるのでしょうかね……? 書き分けできるものなのかしら。


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