第12話 偽物の正体

 誠君は、しばらく泣いていた。

 私はなぐさめてあげたいけれど、どうしていいのかわからなかった。

 他人の恋事情に口出ししていいのだろうか?


「大丈夫だよ。


誠君。


私がいるか、元気だそ?」


 って、声をかけられたらどんなにいいか。

 

 泣いていた誠君は、しばらくしてから涙をふいた。


「誠君?」

 私は心配になって、思わず声をかけた。


 だけど、それ以上のことは言えなかった。


「目の前にいるのは、青葉じゃない。


青葉は、俺が目の前で泣いていても、傍観することなんてしない。


俺に何かしらの喝ぐらいかける。


青葉と名乗る女は誰なんだ?」


 誠君は、鋭い顔つきで問いかける。


 勇気さんも青葉ちゃんもきょとんとしているけれど、私も誠君の考えていることがわからなくて、戸惑っている。

 

「本当に青葉なのか?」


「何を言いたい?


この目の前にいる彼女こそが、青葉だ。


人は、誰でも俺色に染まるのさ。


人っていうか、全世界の女ども、イチコロにできるかもしんないな!」


 勇気さんは、なぜかケラケラと笑っていたけれど、誠君は表情を崩すことはなかった。


「偽物だ・・・」


「なんて?」


「ほくろの位置が、青葉は左下にあるのに、こいつは右下にある。


だから、青葉じゃない」


「ほくろの位置なんて、覚えているのか?」


「青葉のことなら、何でもすみずみまで確認してるから」


「これは、これで気色悪いな。


はぁ、うまく騙せたと思ったけどなあ。


ほくろでバレるとか、想定外だ。


甘く見すぎたかもな」


「仕方ないわね」


 青葉ちゃんそっくりの女の人か拘束を自力で解き、椅子から立ち上がった。


 拘束、解けるんだ・・・。

 私は思わず、まじまじと見てしまっていた。


「聞いていると思うけど、あたしは東海青葉の3つも年上の姉よ。


そして、勇気の恋人」


「自己紹介なんて、重要じゃない」


 誠君は冷たく言い放つけど、自分から聞いておいてそれは酷いと私は思い、一言。


「誠君!?」


「自己紹介を求めておいて、失礼なやつ」

 

 私が言うよりも早く、青葉ちゃんのお姉さんが正論を言い放つ。


 誠君は悪気はないけど、時々理不尽なことをする。

 

「青葉をどこにやった?」


「まだ、妹が好きなわけ?


青葉に彼氏できたら、どうするの?」


「奪い返す」


「重っ!?


さすがにドン引き。


それは、ないわあ」


「だろ?


本当に血がつながっているとは思えないくらい、真逆なんだ。


ハニー、なく子に地頭は立てぬと言わないか?」


「何?


そのことわざ、知らないわ。


そろそろ、本物の青葉、登場させない?」


「そうだな。


青葉がどこだとかで埒が明かないしな」

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