第9話 囚われのお嬢様
「やめて・・・・、お願い。
誠を、大切な存在を傷つけないで・・・・」
「ふうん。
それで?」
唄さんと、緑ちゃんは、誠君の攻撃を止めて、青葉ちゃんをにらみつけた。
誠君は何回も剣で刺され抜かれたり、唄さんに何回も蹴られたせいで、血だらけの状態で、目を閉じていた。
このままだと、誠君が死んじゃう・・・・!
だけど、私は恐怖のあまり、声もでないし、誠君の方に駆け寄ることもできない。
もし、私も攻撃されたら・・・・?
そんなことばかりが頭の中で映像としてでてくる。
「あたし、誠を守ってみる」
「無理だって!
あんなのに勝てるわけがない・・・・」
「あたし、誠が大切な存在だから、そんなにひ弱でも守りたいの!」
こうして、青葉ちゃんは誠君の方に駆け寄ったけれど、戦闘力がないために、唄さんにつかまってしまった。
「離して!」
「こいつ、人質にちょうどいいわね?」
「唄さん、もしかして、女の子にも手を出しちゃいますか?」
「やめてちょうだい。
女の子同士で、そんな趣味はないわ。
だけど、痛めつけた方がいいわね。
あたしと、緑に逆らった罰よ」
「唄さん、さすが!」
「ということで、この青頭は預かっておくから、誠の怪我の治療はしておくね。
今度こそ、誠に最大で、最高の絶望を味わうことになるわ」
こうして、唄さんは青葉ちゃんを連れて、緑ちゃんとともに姿を消した。
私は誠君の方に駆け寄り、電話して、救急車に運んでもらった。
私は、誠君が入院中は、青葉ちゃんが唄さんにさらわれたことも話した。
「早く、青葉を助けにいかないと・・・!
紫帆と同じ歴史を繰り返したくないし、青葉は俺の本当に大好きな人だから」
「こんな怪我で、行けないって・・・!
・・・・誠君、今はパラレルループするつもりある?」
「ないっていうか、したくない。
パラレルワールドに移動しても、幸せな未来が待っていると思えなんだ。
幼馴染が増えて、嬉しかったけれど、緑っていう俺のことを最初から騙すことを目的としたやつもでてきて、青葉のことも、赤音のことも、紫帆のことも巻き込むことになってしまった。
それに、唄さんの妬みのエネルギーも、俺が発達障害という事実も、パラレルワールドに行ったとしても、変わらなかった」
誠君は泣きがながら、私に話した。
「それでいい・・・・。
それでいいかもしれない。
青葉ちゃんが死んだ事実は、悲しいことだけど、唄さんはどんな形であっても、きっと誠君のことを不幸にしようとすると思う」
「うん。
そうだよね。
両親が離婚したことがなくなればいいのにって何度も思ったけれど、俺はそんなパラレルワールドに行けないみたいだね。
どんな形であっても、タイミングであっても、遅かれ早かれ、離婚しちゃう両親なんだなって今になってわかった」
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