第6話 パラレルループは小学生時代から

 井藤君には、相談できなかった。

 まさか、私がデスゲームみたいな約束を引き受けてしまったこと。

 正しく言えば、引き受けてしまったんじゃなくて、強制的に参加させられたと表現した方が正しいかもしれない。


 私は井藤君の家に来ていた。


「井藤君、唄さんのことを聞かせて。


もしかしたら、言いたくないかもしれない。


だけど、君のことを狙っている以上、私に関係のない話って言い難いから」


「唄は、人の幸せを妬む女性になってしまったけれど、やっぱり今回も失敗だったかな?」


「井藤君?」


「もっかい、やり直そう。


青葉がいた頃に戻りたいんだ」


「井藤君、急にどうしたの?」


「時間はいくらでも、どうにでもなるんだ」


 私は、ここで目が覚めた。

 夢?


 私は小学校に入学して、井藤誠君、東海とうかい青葉あおはちゃん、北島きたじまりょくちゃん、みなみ紫帆しほちゃんと仲良くなり、いつも五人で行動した。

 井藤君と青葉ちゃんは、初対面のはずだけど、前にも会ったことある気がした。


 緑ちゃんは、髪が緑色の女の子。

 一人称は「うち」。


 紫帆ちゃんは、紫髪の女の子。

 一人称は、名前呼び。

 

 みんな、私の大切な友達。

 井藤君のことは最初は上の苗字で呼んでいたけれど、今は「誠君」と下の名前を言うことも抵抗がなくなってきた。


 ある時、二人の時にこの話を持ち出してみた。


「誠君、私ね、パラレルワールドの夢を入学前に見ててね、青葉ちゃんが唄さんって人に殺されて、誠君が時間を戻した夢を見たことがあるの」


「この話は、誰にも言わないでくれる?」


「え?」


 誠君は、こわい表情をしていた。


「俺がパラレルループしたことを、誰にも言っていないよな?」


「パラレルループ?


何それ?」


「それより、他の人に言ったか言ってないかってことを聞きたいの」


「言っていない。


だけど、誠君、急にどうしたの?」


「俺は、パラレルワールドの状態で過去に戻れるんだ。


そのことは、パラレルループって言うんだけど、どうやら記憶が残っているみたいだね」


「どうする気なの?


記憶消すの?」


「ファンタジーの読みすぎじゃない?


実際は、そんなことできないから」



「じゃあ、どうするの?」


「どうもしない。


とにかく、誰にも言ってなければそれでいいよ。


この時間では俺は幼稚園の年長の頃に、発達障害ってことがわかってしまって、親が離婚して、幼稚園を卒園式の日に転園ってことになっているみたいだね」


「うん、誠君がこの日に転園生としてきたことは驚いたけど、来てくれて嬉しいって気持ちもあったよ」


「そっか、ありがとう」

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