第5話 デスゲーム開始

「それを知りたいの?


知らなくちゃならないの?


誠を不幸にするってことを達成できているから、いいんじゃないの。


それに、あなたに関係あることなの?」



 唄さんの目は、冷酷だった。

 だけど、青葉ちゃんを奪われた以上は、井藤君のために何かやらないと・・・・!


「関係あってもなくても、相手が井藤君であっても、誰であっても、唄さんはそれでいいんですか?」


「それでいいって?」


「誰かを不幸にすることで何が残るんですか?」


 唄さんは、腕を組みながら何か考え込んでいた。

 しばらく、沈黙が続いてから、唄さんは答えた。


「残る残らないで、やるわけじゃないの。


あたしは小さい頃から、父からの威圧を受けながらだったわ。


あたしの大好きだった兄は、姉にとられてしまったけれど、母がいてくれたの。


ずっと、あたし達を支えてくれた。


だけど、誠に発達障害があるってわかってから、家庭崩壊したのよ。


だから、そもそも誠がいなければ、そんなことは起こらなかった。


あたしには、もうすでに何も残っていないのよ。


なら、残る残らないの話じゃない。


父にも復讐をとげて、姉や兄にも弟にも復讐して、あとは母を取り返すだけ。


だけど、今はそんな母も憎らしい。


あたしには、最初から何もないのだから、あとは失うだけなのよ。


あなたには、そんな気持ちがわからないでしょう?」


「わかります。


全部ではないかもしれませんが」


「ほんとうに?


言葉だけじゃない?」


「私も家庭崩壊はしています。


ですが、家族を憎んだり、復讐しようとか思いません。


今は父も母もいませんが、私は伯父夫婦と暮らしているんです。


だから、幸せというのは別の形で存在すると思うんです。


私も最初は家族といられる時間こそが幸せと思っていたんです。


でも、私は友達も叔父夫婦もいます」


 これで、説得できたかはわからない。

 だけど、井藤君をこれ以上は悲しませたくない。


「はあ、あなたって人はいつも斜め上を行く」


「斜め上?」


「まあいいわ。


そんなに言うなら、あなたがあたしを幸せにしてみなさいよ」


「え?」


 予想外の返答に、私は戸惑いを隠しきれなかった。


「あたしを救えるんでしょう?」


「そこまで言っていない・・・・」


「あたしを幸せにできなかったら、幸せと主張するあなたの命も奪う。


いいわね?」


「そんな約束、引き受けられない!」


 これって、唄さんを満足させることができなかたら、ペナルティーを食らうみたいなデスゲームみたいなこと、私は望んでいない。


「これは、強制よ。


ただの表面上だけの友達だから見逃そうと思ったけれど、このまなざしを見る限り、本物の友情を感じたわ」

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