第3話 ライバルがいなくなっても続く片思い

「弟と、幸せを築きあげたのは、青頭なのね。


よーく、わかったわ」


 冷たく言い放ったその言葉には、私は恐怖を感じた。


 次の瞬間、青葉ちゃんは血を出して倒れていた。


「青葉ちゃん!」


「青葉!」


 私と井藤君は、青葉ちゃんのところに駆け寄っていったけれど、脈も感じないし、息もしていなかった。


「そんな・・・・どうして・・・・?」


 私は、目の前の現実を受けれられないでいた。

 青葉ちゃんは、死んだ・・・・。


 唄さんは、せせら笑っていた。


「美しい光景ね。


あたしより、幸せになるとか信じらんない。


これで、誠を、弟を、不幸にできたわ」


 こうして、唄さんは去っていった。


 ひどい・・・・。


 青葉ちゃんは救急車に運ばれて、警察からの事情聴取を受けて、警察は唄さんを捜しに行く形になった。

 唄さんが何者なのかはわからないけれど、私は恐怖を覚えてしまった。


 私もあんな目にあうのなら、唄さんに告白する気にもなれない。

 青葉ちゃんがいなくなった今からでも、私は自分の気持ちに蓋をすることになった。


 青葉ちゃんに両親はいないから、児童養護施設の職員や子供たちが、お墓参りやお葬式などほかにも参加する形になっていた。

 私はというと、お墓参りにもお葬式にも行く気になれなかった。


 殺人現場を生まれて初めて見てしまった・・・。


 学校がある日は、井藤君がクラスの男子たちから「死人の彼氏がいるぞ!」とからかわれるところを見ては、私が「ちょっとやめなよ」と止めることが多かった。


「お前は、死人の親友か」


 クラスの男子生徒たちは、なぜか笑っていた。

 どこがおもしろいの?

 私には、クラスの男子たちの言動も、行動も理解できなかった。


「いいんだよ・・・。


僕は、まだ青葉のことが好きだし・・・・」


「井藤君?」


「はっ、死人のことを好きとか亡霊とか幽霊が好みなのか」


「言えてる、言えてる」


「ほんとにやめなってば!


本人は傷ついているの!


大切な人を失う気持ちがわかっているの!?」


「なんだよ、偽善ぶってさ」


「そーだ、そーだ」


「第一、井藤みたなバカで赤点とるようなやつに彼女できるとかありえねーし」


「俺が親切に東海のやろうに、井藤が発達障害があることを教えてあげたのに、否定しやがってよ。


そんなことないだって、よ!


事実に目を向けないことが、ほんとの恋愛なのかつっのー!」


「え?


井藤君に発達障害?」


「知らねーのか。


こいつの障害のせいで、両親が離婚になって、家族みーんな不幸にしちまったんだ」


「井藤君、どうなの?


本当のことを教えてよ。


でないと、勝手に否定するわけにはいかないから」


 井藤君はしばらく黙り込んだ後に、静かに口を開いた。

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