Rendez-vous
第40話 - Encontro
「お疲れ様、ギリェルメさん。休んでください」
「ああ、ギアさんもね」
俺たちはあの黒い部屋へ戻っている。
(ここは拠点みたいなところってことか)
「ん?」
部屋で腰を下ろそうとしたが、部屋の形が変わった。
「お、おお?」
お風呂、キッチン、ベッド。何もなかった部屋がその姿を変えていく。
「ここに装備を置いてください」
ギアさんの言葉に部屋が広くなり、その新たなスペースにアイテムを置く場所があった。
「すげえなあ」
「この部屋を貴方のアイテムボックスと思ってください。例外はありますが、ここに置いたアイテムを違う世界に使うことも出来ます」
「そうか、それは嬉しいねえ。段々チートになっていくぜ」
ギアさんがどうやったかは分からんが、
「それでは、一週間休んでください。傷は浅いですけど、次の世界では万全な状態が求められます」
「分かった」
ギアさんの言葉で俺はベッドで横になった。
………
……
一日中休んで、今はギアさんと次の世界の話をしている。
「次の世界は魔法学園系か」
「はい、地球と似ている世界のですが、魔法がある世界です」
そう言って、ギアさんは壁の画面にそのアニメを再生した。
……
…
「これはヤバイな………」
そのアニメの名前は
「この世界のダンジョンの難易度はテレザさん達の世界の数倍です」
ギアさんは更に続く。
「そこではダンジョンにランクもあります。FランクからSランクの順ですが、この世界のAランクの魔物ですら貴方が倒した魔王以上の強さを持っているのです」
「やっぱりか…」
このアニメの主人公たちは強くて、そのAランクをも倒したが、俺は……
「ギリェルメさん、貴方には一つも残らず、世界中のダンジョンを攻略してもらいます」
「――ッ!」
ギアさんの言葉で恐怖からか、血の気が引くのを感じた。顔を手で隠し、どうにか言葉を絞る。
「あいつより強い魔物が居る、全ダンジョン……それは………そう言う意味か」
「あの魔王を超えるために千年以上を使いました……ギリェルメさん、この世界で貴方は確実に死にます」
(いつ、テレザたちとまた会えるのだろう…………)
◇◇◇◇
新たな旅立ちの日。
俺とギアさんはまたあの扉の前に居た。
「ふぅー………行こう」
「はい」
俺が落ち着くのを待っていたギアさんにそう言いて、扉に入った。
………
……
「久しぶりにこういう建物を見るね」
俺にとっては、もはやあのファンタジー世界が故郷みたいだ。いま目の前にいるコンクリートやアスファルトにすら違和感を感じる。だけど……
「かわいいい~!」
「ドヤァ!買ったぜい!」
校舎の前に居る女子は友達に新しい髪飾りを見せる。だが、あれから魔力を感じる。何かの効果を持つアイテムだろう。
それだけじゃない、周りの生徒たちは物騒にも武装している。こんな世界でそういう装備を使っているのは結構不思議な光景だ。
「森本さん、お待たせ。この子も転校生よ、仲良くね」
担任の先生と一緒にクラスの前まで来たが、そこにはもう一人の転校生が居た。先生は教室の中に入り、俺たちは外で待っていた。
(………………誰?)
すかさずギアさんに聞く。この子はアニメにはいなかった。
『監視です。元の世界でアリシアさんが貴方を見ていたのは知っているのですね?アリシアさんには貴方の監視を任されていました。この少女はこの世界の女神から君の監視を任務を受けています』
(マジか)
『大丈夫です。貴方と同じ時期に転校しているのはワタシがこの世界へ来る前に連絡をしたからです』
「お久しぶりです、ギア様」
「さくらさん、お久しぶりです。この人はギリェルメさん、変わっている人ですが、悪い人ではありません」
彼女はペコリと、ギアさんに頭を下げる。
(お、ちゃんとギア様を見えている、ギア様を)
ギア様の偉さは今度聞いてみることにして。
「初めましてギリェルメさん、私は
「あ、ああ」
監視だからこっちを厄介者扱いをすると思ったが、普通に歓迎しているようだ。
「さあ、2人共」
教室の中から先生が呼び出した。2人で入った瞬間、クラスは声を上げた。
(そりゃあ、とんでもねぇ美少女だからな、森本さん)
ていうか、ポニーテールに結んでいるその綺麗な黒髪は床に届きそうなくらいに長い。
(っと、それも今度)
クラスを見回す。
(居る。主人公もヒロインたちも居るぜ。やっぱり変な感じだな)
ギアさんに教えてもらった挨拶をして、まだ注目を集めている森本さんと席一緒にへ向かった。
俺の席は窓際の二番列の一番後ろ。森本さんはその隣の真ん中の後ろ。
(主人公たちはアニメ通りか)
主人公は窓際の2番前、そいつを囲むように5人のヒロインが前、右、後ろと斜めに座っている。
(……爆ぜる)
っと、自分の事を棚に上げて呪いを飛ばす。
(クッソ!俺もテレザたちとイチャイチャしたかったよ!)
「…………」
そんな心の声を聞いているギア様は隣で静かに飛んでいる。
「?」
(そうや、こういう時は隣の人に挨拶をするんだな。何だかこっちと森本さんをちらちら見ている)
「初めまして、俺はギリェルメだ。よろしくね」
窓際の席の子に挨拶をする。
「お、小野寺あんずです。よろしくお願いします」
そこで先生が話を始める。
「それでは、せっかく二人の新しいクラスメイトが来たことで、今日はグラウンドで体育の授業よ」
おおおおおお!!
クラスメイトたちが盛り上がる。
(はは、こういうのテレザたちに見せたいな)
ちなみにここは1年1組のクラス。授業が始めてから1か月しか経っていない。
……
…
ジャージに着替えた俺たちは先生と一緒に大きなグラウンドに集まった。
もちろん、ここの授業はただの体育ではない。アニメで見たが、走り込みや筋トレもあるけど、今日は違うみたい。
「2人も知っているけど、この学園はダンジョンを攻略する冒険者を育つ場所だ。今日の体育はそのための訓練として模擬戦を行う。使うのはもちろん本物の武器ではない、これだ」
先生は体育倉庫から運んだ訓練用の武器を見せた。
「さ、使う武器を取りに来て」
他のクラスメイトも武器を取り、俺と森本さんも取りに行く。森本さんは薙刀、そして俺はもちろん盾と剣。
「ギリェルメさん、戦い方を増やすためにこの世界では違う武器を使ってください」
(違う武器か…)
昔で騎士団に入った時に色んな武器を試したが、やっぱり盾と剣を諦めることはできなかった。
(ここは両手の物を選ぼうかなぁ)
「弓、杖、棍棒、刀、大剣……どうしようか?…ん?」
(そうや……)
一つの武器を見つけた。
(これをずっと使いたかったな)
手に取ったのは細剣。ここにあるのは俺の使いたいものと少し違っているが。
「うむ、これにしようか」
結局片手剣から離れないが、この武器での戦い方は今までと違う。
「今日の模擬戦は自由だ、2人も1戦くらいはしてね」
そう言って、先生はただ俺たちを見守ることにした。
「お、やっぱりか」
予想通りに森本さんが大人気だ。模擬戦どころか、自分のパーティーに誘っている人が多い。
(俺はちょっとこの新しい武器を試すか)
クラスメイトたちから離れて、訓練用の人形に近づいた。
「さて、突くことに特化した武器だな」
昔に見た人たちの真似を人形の前でしてみる。
「んんん~」
(やっぱり違うな)
盾を持っていた時は敵の攻撃をドンッと防げる心構えだったが、こっちはなんとも不安なものか。
(でも、イケるね)
俺がしたい使い方は斬りを混ぜた攻撃だ。
「体をもっと横向きにしてください」
ギアさんに教えながら色々試してみる。
(でも、見られているなぁー)
そんな俺をクラスメイトが見ている。
「模擬戦しようぜ」
そんなクラスメイトたちに俺から声をかける。
「いいのか?」
「ん?もちろんだ」
(なんか遠慮している?)
「私が最初!」
その中から一人の女子が元気そうに声を上げた。
「お、いいぜ。よろしく」
その子と一緒に一つのサークルに入る。この大きなサークルには模擬戦用に防御魔法の結界が使われている。俺たちの周りに半透明な泡が覆い、攻撃の威力を下げる。これで武器だけじゃなく魔法も使える。
(まあ、完全に痛みと怪我から守るわけじゃないから、気を付けないと)
「ねえ、ギリェルメさんはどんな魔法を使えるの?」
「俺は結界魔法をメインに使う」
ギアさんの指示でワールドズ・ウィシュではゲームのものしか使っていなかったが、ここで持っている魔術を使ってもいい。
(それの悪用をしないためにも森本さんの監視があるだがな)
「へぇ~!珍しいね!あ、ごめん、私は水無月かなで。得意な魔法は風よ」
そう言って、水無月さんは持っていた弓に風の矢を作る。
「よろしく」
その言葉で2人は武器を構う。彼女は自信満々な顔をしている。
(俺を近づけないほどの速さを持っているのかな?)
先手必勝と言わんばかりに彼女が風の矢を放つ。
シュッ!
自信にそぐわない速さの矢が飛んできたが、それを細剣で弾く。
「は?」
「え?」
「すげえ…」
周りのクラスメイトはそれを見てポカーンとした。
(やっぱり、遠慮していたのは俺が弱いと思ったからか)
別に俺を見下ろしていたわけじゃない。クラスメイトたちは俺の周りにあるものが無いことを不思議に思っているだけだ。
それは精霊だ。
クラスメイトたち一人一人の隣に精霊が居る。小さなドラゴン、ゴーレム、鳥、ワンちゃん、蝶々、人魚、植物など。みんな小さな仲間たちと一緒に居る。
前の世界の召喚と似ているが、この世界の人々は全員その召喚が出来る。その召喚された存在を精霊と呼び、契約をする。
精霊を召喚出来た人は様々な力を使えるようになる。水無月さんの隣にもふわふわとした小さな雲が飛んでいる。
「精霊の力なしで今のを防げるか?」
「無理無理」
(ふふふふ……ついにこの時が来た)
「いや、居るよ、俺の精霊」
隣を指さし、みんなにそう言う。すると……
「………」
透明になっていたギアさんが静かに姿を見せる。
「えええ!?」
「黒いスライム?」
「スライムは飛べないよ!?」
「いや、お前ら、あれはどう見てもロボットだろう」
(くくく、驚くが良い。これでギアさんとの仲間感が増す!)
「まあ、自己紹介は後だ。続こうぜ」
「うん!」
真剣な顔をして、水無月さんが返事する。
(さて、行くか!)
今度はこっちから動き出し、彼女の方へ走る。近づけないために矢の数を増やし、水無月さんも移動するが、矢を防ぎながら彼女に近づいた。
「びゅーんちゃん!」
こういう時のためにの魔法か、水無月さんは近づいた前に両手を伸ばし、びゅーんちゃんこと、彼女の精霊と一緒に暴風の魔法で俺をふっ飛ばそうとした。
その暴風に立ち向かい、俺もついに魔法を使う。体の前に四角形の結界を作り、それで彼女の魔法を防ぎながら進む。
風を超えて、彼女に剣を向こうとしたが……
「降参、降参!」
彼女から降参した。
「うも、いい勝負だったな」
剣をしまい、彼女に握手を求める。
「いい勝負って、ボロ負けじゃない」
「いや、攻撃を一つも外れてないじゃないか?とんでもない弓の腕だ」
剣で落としたが、彼女の矢はちゃんと俺を捉えた。
「いや〜、えへへ」
これを褒められるには弱いのか、水無月さんはもじもじと照れた。
(さて、もっと戦おうか)
この世界にどんな力があるのが見たくて、他のクラスメイトたちにも模擬戦を申し込む。
つづく
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