World's Wish

第38話 - World's Wish




「どこだここ?」


知らない部屋に居る。

だけど今までと違って、何だか地球の部屋みたい。


「ここはあのアニメの世界にある日本です」


「…………………」


俺の世界じゃないが、久しぶりにみる地球の物に少しの間言葉を失くした。


「正しくはそのアニメの内容が起きる世界に転移された、のです。貴方がアニメで見た全てはこれからこの世界に起きるものの記録です」


異世界転移した俺にもう驚くことがないと思ったが、これはヤバイな。


「今はそれより、ギリェルメさん」


「それよりで片付くなって、それは……」


部屋のベッドの上に機体があった。首に付けるための白い機体。


「あのアニメのゲーム機か。Dream Diveドリームダイブだけ?」


「はい。World's Wish世界の願いも既にインストールされているのです」


ワールドズ・ウィッシュは主人公たちが閉じ込められたゲームだ。


「あのデスゲームを超えろってことか」


「はい。ですが、貴方も一度ゲームに入ったらクリアするまでは絶対に出られません。それでも、入るのですか?」


「ああ、このゲームを超えに行く」


「わかりました」


彼女に使い方を教えられ、俺はゲーム機を首に付けた。


「ギアさんもゲームに来るのか?」


「はい」


「そうか。改まった挨拶はよくわからないが、よろしくね」


「よろしくお願いします、ギリェルメさん。貴方の旅のサポートをします」


「うん。ふぅ………― Dream Inドリーム イン


ベッドで横になり、そのキーワードを言うとドリームダイブが起動した。目の前にメニューのホログラムが現れて、考えるだけで望みのゲームを探す。


そうして、アニメでも見たそのイラストのあるアイコンを選び、俺は急な眠気と共にゲームの世界へダイブした。
























◇◇◇◇






「これはすげえ………」


俺は今、キラキラとした空間で浮いている。


そして目の前に顔のないモデルキャラのある画面が出ている。


「キャラメイクと設定か」


その横でゲームの設定がある。


「お、メニューの言語も選べるのか。久しぶりだし、ポルトガル語にしようか?いや、やっぱり日本語か」


「好きな時に変えられるのです」


「そうか」


ギアさんも俺の隣で浮いている。


「キャラの名前はギイでいいか。あれ?課金アイテムのショップ?え?ゲームを始まる前で買えるのか?アニメでこれは見ていないなあ」


(…………………)


ギアさんをチラッと見てみる。


「………特別な効果なしの物ならいいのです」


「はい!ギア様!」


(何だか母さんみたい………)


ついにお母さんのことを思い出す。


(集中しろ)


ショップの画面を開き、買ってもいい物の値段が全部無料だったのにびっくりした。


(本物のチートだ)


「年齢は今の16歳で外見も同じものでいい」


キャラの外見の設定が終わり、次はゲームの戦闘のところだ。


「マジで好きなアニメで見たことが出来るのかよ」


画面が消えて、今度は周りに無数の宝石が現れた。


この宝石を選んだらプレーヤーの選択肢した武器になる。問題はデスゲームが始まると最初のと同じ種類の武器しか使えなくなる。


「俺はもちろんこれだな」


そう言って俺は茶色の宝石を取る。色によって武器の属性が変わる。俺が選んだの土属性。


宝石は俺の手の中で形を変わり、剣と盾になった。


「お、課金アイテムのと同じ形になったな」


それを装備して。


「行こうか、ギアさん」


「はい」


ついにゲームの世界に入る。


――――――――――――――


設定が終わったことでキラキラの空間から一瞬で見える光景が中世みたいな町並みになった。


「おお、すげえ!」


ここはゲームのスタートポイントの一つで次々と他のプレヤーが現れる。


「ギリェルメさん、来てください」


そう言ってギアさんが飛んで行った。


(他の人は見えていないみたいだな)


ふよふよと進む彼女を追って、大きな広場に着いた。ここもスタートポイントのようで、プレヤーでいっぱいだ。


「見てください」


止まったギアはある方向を見ていた。そこには……


「マジかよ……」


そこに主人公とヒロインの2人が喧嘩をしていた。


(って、噓!?)


「この変態!!」


「ま、待って!俺は何もッ―!」


パンッ!


ヒロインのビンタ炸裂!


「きゃはははははははははは!あははははは!」


(やべえ、ついに笑い出した…でも…)


「ぷっ」


(なにこれ!!アニメのあのシーンが見られるなんて!)


「ギリェルメさん」


「おっと、すまん、ふふふ」


変なテンションになっていた俺にギアが呼びかける。


「あの人達はこのゲームのボスを倒し、プレヤー達の命を救うのです。その主人公達に関わるかどうかは貴方の自由です。ですが、貴方の行動で彼らの行動の変わり、生き残るはずの主人公達も死ぬ可能性があります」


「ああ、命はもちろんだが、俺は主人公達の恋愛の物語も結構好きだったから、それの邪魔もしたくないなあ」


彼らはお互いを守るために戦った。俺のせいでその出会いすら消すのは避けたい。


(まあ、それを言うなら最初から何もするなって話だがな)


「ワタシに任せてください。今はここを乗り越えましょう」


「ああ………来た」


ギアと一緒に空を見上げる。


「おい!何が起きるぞ!?」


プレヤーの人が声を上げる。

その声に他の人も空を見上げて、その異変に気づいた。


青空は段々と黒い雲に隠れ始めた。確かに変わった光景だがゲームならそれほど不思議じゃない。


「何かのイベントかな?」


「イベント?あなたは何かを知っているのですか?」


「いや、ベータでもこれはなかったなあ」


「ベータ?」


「え?知らないのか」


俺の近くでそんな会話が起きている。どうやら一人はこのゲームのベータテストに参加したが、もう一人はベータという言葉も知らないゲーマーの新人さん。


周りに似たような会話も聞こえる。


だが、やがてプレヤー達は気づき始める。この人たちはプレヤーじゃなく……このゲームのNPCということに。


「AIなのかな?」


「でも何だかリアル過ぎるよ?」


「すごいなあ!やっぱり新世代のゲームだよね!」


そんな会話をしていたのは既に仲良くなっている主人公たちだ。


「ちょっと公式サイトを見てくるよ」


主人公はそう言ってログアウトをしようとした。が……


「あれ?」


「どうしたの、ヒカルくん?」


「ログアウトのボタンが消えているよ!」


「え?」


主人公、ヒカルの声を聞いて他のプレヤーはログアウトを試すが、ボタンは無い。


(俺のも消えているね)


プレヤーたちが混乱し始めた時、街の上から眩い光が視界を占めた。


視線を上げると黒い雲を分かて、大きな隕石が空を駆ける。


「何だ!?」

「これもイベント?」

「きれいー」


隕石はやがて視界から離れる、数秒後、大爆発音が聞こえた。その音は隕石が遠い山々の間に衝撃したものだ。


「どうなっているんだよこのゲーム?」


主人公の疑問は尤もだが、まだ終わっていない。


町、いや、世界全体に地震が起きた。誰もが地震の理由は隕石の衝撃によるものと思っているが、それは違う。


「え?なに?」


地震の次、町のプレヤーとNPCの武器が光り始める。そして……




『我が子達よ……とうか……生きて………』




世界中の人に女性のその優しくも弱い声が聴こえた。


「ね、ねえ…何だか怖いよ」


「どうなっているよ、これ?」


武器の光は声と共に消えていく。


(…………)


「ギアさん」


「はい。主人公はもう2人と知り合ったのです。ここは好きなようにしてください」


その言葉に俺はこの広場の中央にあるダンジョンへ向かった。この町がスタートポイントになっているのは初心者のためのダンジョンがあるからだ。


たけど先の地震。あれは隕石の衝撃のせいじゃなく、世界中にあるダンジョンの結界が壊れた反動だ。


(本当に消えている)


目の前に巨大な螺旋状の階段が地下の奥へ続いている。これがこの世界のダンジョンだ。本来その入り口に魔法陣があり、モンスターは外へ出られないが、その魔法陣が消えている。


本来、数分後でモンスターが外に溢れ始めて、それに気がついたNPCが叫ぶが……



「おい!逃げろッ!!モンスターの声だッ!封印が消えているッ!モンスターがダンジョンから出てくるぞおッ!!!」


それを先回りにやる。


「え!?」

「本当だ!逃げろッ!」

「きゃあああああああ!」


俺の言葉に反応したのはNPCたちだ。走り出すもの、へたり込むもの、子供と一緒に建物に隠れるもの。


逃げるプレヤーも居るが、もちろんその大体はまだ状況を理解していない。


「うおお!これは稼ぎじゃね!?」


まだゲームのイベントと思っているか、武器を構えるプレヤーも居る。そこで兵士たちがダンジョンの周りに陣取って、プレヤーと武装しているNPCに叫ぶ。


「お前ら冒険者か!?非常事態だ!民が非難するまで手伝ってくれ!」


ゲームの設定ではプレヤーは駆け出しの冒険者だ。その言葉でこれはまだゲームと安心したか、プレヤーたちは兵士たちと一緒にモンスターを待った。


(プレヤーたちを逃がす方法はないのか!?)


このダンジョンから出てくるモンスターをプレヤーたちは抑えきれずにこの町の大半の人を殺す。


「ギリェルメさん、今の貴方が声をかけても言葉を聞ける人を少ないのです。ここは戦うか逃げるかだけです」


「ふぅ………俺も戦う」


(落ち着こう、まずは手が届く範囲を守る)


そう言って、俺は主人公たちが見えるところで武器を構えた。





「構ええッ!!!モンスターだあッ!!!」





兵士の声で戦いが始まった。







「はあっ!!」


主人公はゴブリンの胸に刀を振り下ろす。


「ギャアアァッ!!」


ゴブリンは悲鳴を上げて地面に倒れる。だが……


「ッ!?」


倒れたそいつは主人公の足を掴もうとするが、主人公は恐怖で距離を取る。


戦いが始まったから、たったの5分。プレヤーの9割以上が逃げ出した。


「嫌だッ嫌だッ嫌だッイヤだッ!!!」


近くで一人のプレヤーが腕に切り傷を受けてゴブリンから逃げている。


「こっちだ、クソ野郎!」


そのセリフの前に俺は後ろからそいつの首を切り裂く。


「おい!インベントリにある初期ポーションを使ってみろ!」


まだ走っていたプレヤーに言う。そいつが無事にポーションを使ったのを見て、俺はまた次のモンスターを探した。


(アニメで知っていた気になったが、こんな酷い有様か)


そう、逃げたプレヤーたちは気づいた。これはただのゲームではない。ここに痛みも血も……死もあるっと。


ヒロインの二人は主人公の後ろに隠れているが、その主人公は初期装備しか持っていない。ただの少年なのによく頑張っているが、限界は来ているよだ。


俺もそうだ。ギアに言われたがここで元の世界のスキルは使えない。武術の知識はあるがそろそろモンスターの数に対応出来なくなる。


(あのシーンはここでか?)


アニメではこれは敗北戦だ。主人公たちと数人の生き残りはモンスターで溢れる町から逃げ出し、隣町に非難する。


「民の避難は終わった!!俺たちも町を離れるぞ!!」


兵士のリーダーが声を上げる。それに続いて俺たちはモンスターから逃げるように走り出す。


俺は主人公たちの姿を見失わないように後を追う。


「ううぅ…ううぁあ…もう嫌だ、嫌だよ!怖いよお姉ちゃん!」


町の中は死体だらけだ。俺たちの守りを抜けたモンスターや違うダンジョンから出たモンスターに殺されたプレヤーとNPCの死体と血が町の光景を変わった。


それを見たヒロインの少女が姉と手を繋ぎながら泣き続けた。




………

……





数時間後。


避難した人たちに追い付き、俺たちは草原にある道を歩いた。そして日が落ちる頃にラベンドーという町に着いた。


領主の計らいで避難民は聖堂や学校の施設を使うことになった。だけどそれでも足りない。被害にあった他の町の人もここへ避難してきたんだ。


それで冒険者や戦える人は野宿を強いられて、あっちこっちで問題が起きている。


「これってやっぱりデスゲームじゃねえか」


「それは……」


プレヤーたちも冒険者として見られ、野宿している。しかもその人数も多く、寝る場所を確保するためにも喧嘩している人もいるが、流石に痛みがあるのを知ってからか、武器を使っている人は居ない。


(まだ、だがな……)


主人公たちは流石にというべきか、ヒカルはモンスターを倒すことでインベントリに金が増えることに気が付き、それを使いヒロインたちと宿に泊まっている。


俺も使えばいいが、もっと必要としている人もいるだろうと思い、ギアさんと一緒に宿の近くで夜を超えることにした。


………

……


翌日。


今日で主人公たちがもう1人のヒロインと出会う。


そして……




「最初は回復アイテムからかな」


主人公たちは宿から出た。アニメの話通り、この状況をデスゲームと捉えた彼らは対抗するために強くなることを決めた。


その最初の行動が回復アイテムを買うのはもちろんこの世界で痛みがあるからだ。


(今日で回復役と出会うがな)


今のパーティーは刀を使う主人公のヒカル。

そして弓使いの春菜さんとその妹で攻撃魔法使いの咲夜さん。


まだ出会っていないのは支援魔法使いと大剣使いの2人のヒロインだ。


「っと」


「ストーカーみたいですね」


「…………」


歩き出した主人公たちの後を追う俺にそんな優しい言葉をかけるギアさん。



………

……



「もうすぐだ」


主人公たちは町のことを調べながらアイテムを買っていた。俺もギアさんにアイテムのことを教えてもらい、買いながら彼らの後をついた。


そして、時間は丁度あの出来事から24時間後になった。


3人が町の噴水広場で休憩をしている時に……メッセージが来た。


プレーヤーたちだけじゃなく、NPC全員の前にもそれが現れる。


≪初めまして、俺の名前は加藤さとし。このゲームを作った人だ。俺の作ったゲームで24時間を過ごした感想はどう?――リアルでしょう?24時間を超えなかったプレーヤーも居たけど、君たちの想像通りにそのプレーヤー達の皆は………死んでいる。この世界の中だけじゃなく、元の世界でも死んでいる≫


(クソ野郎が)


≪君たちには一つだけクエストを与えよう。隕石にラスボスが待っている、それを倒したら全員を解放すると約束しよう。でも勘違いをしないように、それ以外の方法で皆様がこの世界から出られることは不可能だ。この世界で1年を過ごしても元の世界では1秒すらも経たない。なので、ドリームダイブが外れることはない≫


(確かに主人公たちが元の世界に戻ると数秒しか経っていなかった)


≪皆様、これが最後の言葉。この世界は隕石に宿るボスのせいで5年の内に破壊される。それを止めるのは世界そのものに選ばれた皆様だけ。さよなら≫


「本当にふざけたヤツ」


このメッセージを最後に、この人が現ることはもうない。


(さて)


アニメではこのメッセージの後でヒロインの一人がこの公園で主人公たちと出会うが、話している4人は誰かの悲鳴を聞いて、その主を探し出す。そして、そこでは人を殺しているプレーヤーの集団を見つける。


「ギアさん、どうだ?」


「大丈夫です」


ギアに確認してもらっているのはそのヒロインが無事に主人公たちと出会いそうかどうか。


ギアの返事を聞いて、俺はその集団が居る場所へ向かった。


………

……


(確かにアニメの奴らだ)


まだ何も起きていないが、あのメッセージを見たプレーヤーの集団が建物の間にで話をしている。


「ははははッ!すげえ、マジでデスゲームじゃねえか!!!」


「どうするんだよ!?」


「なあッ、この町のモブを殺そうぜ!!」


「昨日逃げた時に俺にぶつかったのもNPCだったな!ふざけんなッ!」


最後のヤツは腕を怪我しているようだ。NPCにぶつかった時に転び、モンスターにやられたらしい。


「でもそんなことをしたら他のプレーヤーは黙ってないじゃないか?」


「何言ってんだッ!そんなの殺してもいいだろう!ここはもう俺たちの世界じゃないんだよ!殺さないと殺されるぞッ!」


「そうだな!それに昨日の戦いでレベルも上がってるし!」



(……どんな思考してんだこいつら?殺さないと殺されるぞって、殺そうとしているのは町のNPCたちじゃなく、モンスターとあの聡というクズだろうが)


無茶苦茶な状況に混乱しているのは分かるが、その状況で真っ先にするのが殺しとは流石にどうかしている。


「どうします?」


ギアさんが聞いてくる。


「コイツらを止める」


「……サポートします」



俺たちは隠れて、移動を始めた集団を追った。


アニメでは主人公たちが来た時にそいつらは既に町の中央でNPCと他のプレーヤーたちを殺していた。俺がやるのは………



「おい、お前ら!先の話は聞いたぞ!どういうつもりだ!?」


先回りして、歩いてきた連中に声をかける。


(先ずは話し合いだ。まあ、出来ないだろうがな……)


「クソ!プレーヤーか!?」


「ここはただのゲームじゃねぞ!痛みがあるのはおかしいだろう!?あの聡っていかれたヤツの言う通りにここで死んだら元の世界でも死ぬだろう!」


「それがどうしたッ!?俺たちはベータテストで知ってる!このゲームでプレーヤーを殺しても強くなるぞ!」


「そうだぜ!お前もそんなことを言ってないで俺たちと来いよ!」


「やっぱりそれが理由か」


「なんだよ。知ってるんじゃないか」


「NPCを殺すだけでも強くなるぞ?プレーヤーは俺たちに任せろよ!」


(こいつらは他のプレーヤーを殺して、自分だけを助けるつもりだ)


「冗談じゃねえ。そんなもんはさせねえよ!」


「おい!全員で囲むぞ!」


アホたちは俺が断るのを見て、ついに殺しに来た。


「ギリェルメさん、正当防衛を忘れないで下さい」


(ああ)


最初に攻撃をして来たのは弓使いだ。


そいつの矢を盾で防げることも出来たが、わざと左腕に受ける。昨日でモンスターと戦ったからか、痛みはあるが傷口からあまり血が出ない。


腕から矢を引き抜き、奴らが次の攻撃を仕掛ける前に………


「おおおいッ!誰かあああッ!!助けてくれええッ!!!!誰かあッ!!!」


怯えった顔を作り、助けを呼んだ。


「ふざけるなッ!」


他のプレーヤーが来る前に俺を仕留めようと、クズたちが攻撃を続けた。


今の俺はこいつらに最初に襲われるはずのプレーヤーの役割をやっているということだ。


(まあ、それでだけじゃないが)


スキルはない、だけど前の世界で訓練した盾術を使いクズたちの攻撃を数分だけ防ぎ続ける。


「誰かあああッ!!!」


「おい!大丈夫か!?」


そこでプレーヤーとNPCたちが来てきた。


「助けてくれッ!!こいつら町の人を殺そうとしているよ!」


「ふざけんなあてめえッ!人を呼んだから助かると思ってんのかッ!!」


「全員を殺すぞッ!」


(………よし)


「させるかッ!!!」


今度は俺から奴らに攻撃をする。


「い、いてええええええええッッ!!!!」


剣を持っていた奴の指を斬り落とす。


「こんなことは辞めろ!本当に死ぬぞッ!!」


俺がそう叫ぶと同時に、ついにヒカルたちが登場した。


「何をしている!?」


ヒカルは俺の隣に立ちアホたちと対面した。


(おおお、すげえ!本当にヒカルだ!)


「ギリェルメさん」


ギアさんの声で現実に戻る。


「この世界がゲームか現実かは知らないけど、人が死ぬ可能性があるなら手を出しちゃいけないだろう!?」


(おおおお!アニメのセリフだぁ〜!)


「………」


(すまん)


「ふざけんなッ!だからだろうが!!死なないために俺たちは強くなるよ!」


「ッ!」


今度はヒカルに攻撃を仕掛けるクズたち。俺は弓使いの攻撃を変わりに防ぎ、他の奴らをわざとヒカルに任せる。


周りのプレヤーは流石にまだ戦う勇気が出ない。無理も無い、昨日までゲームをしに来ただけだ、こんなことになった突端に対応出来るわけがない。


「ヒカルくん!!」


ヒカルは1人の剣を刀で受け流し、その隙に後ろへ下げるが、その背後に他の奴が居た。


だけど次の瞬間、両手斧でヒカルの背中を斬ろうとしたそいつの頭に矢が刺さる。


それを放ったのはヒロインの春菜さん。

ヒロインの中では一番冷静な子だが、倒れるそいつの死体を見て、顔は恐怖で染まる。


「ッ!」


それを見たヒカルは罪悪感に苛まれる。心の中では自分のせいで彼女に人殺しをさせたっと。


それが繰り返さないように彼は覚悟を決めて、反撃に出た。


「え?――!?あ、いやあああああああッ!!」


仲間がやられて、放心していた1人にヒカルは刀を全力で振り下ろす。


昨日でそいつらよりもモンスターを倒しているヒカルの攻撃であっけなくそいつの腕が落ちる。その痛みを抑える暇も与えずに次の攻撃を仕掛けようとしたヒカルから逃げ出すが。


「てめええッ!!」


そこでもう1人がヒカルに攻撃をするために駆け出すが、後ろから俺の蹴りを受けて地面に転がる。


「そこまでだッ!」


そう叫んだのは誰かに呼ばれた兵士だ。


「お前らはプレヤーだなッ!!人の町で何をしてやがる!?」


「クソッ!」


兵士たちに囲まれたクズたちも勝てないと悟り、両手を上げる。


俺もヒカルに近づき手を上げる。



………

……



1時間後。


被害者ということで俺たちは無事に解放された。


「腕は大丈夫か?」


「ああ、ポーションで治っているさ。それより、ありがとうな、助かったぜ」


建物から出て、助けてくれたヒカルに礼を言う。


「ギィさんも弓使いのプレヤーから守ってくれたな、ありがとう」


「まあ、お互い様ってヤツだ。それで、君たちはこれからどうするんだ?」


「俺は戦うつもりだ。でもそれは落ち着いた後にするよ」


ヒカルは少し離れているヒロインたちを見ながら言う。彼女たち、特に弓使いの春菜さんはまだショックを受けている。


「そうか。大丈夫さ、人を守るために戦うのは間違っていない。ちゃんと守れよ」


「ああ、俺も覚悟を決めるよ。ありがとう、ギィさん」


「じゃあ、俺は行くよ。落ち着いたらパーティーでも組もうぜ。あいつらも復讐をしに来るかもしれない、気を付けてくれよ」


「ああ、ギィさんも気を付けてくれ」


そう言って、ヒカルは3人の元へ向かい、俺も歩き去った。



………

……




翌日の朝。


俺たちは既に町を出ている。


この数日の行動はほぼあの殺戮を防ぐためのものだ。アニメではその事件を機に同じことをする人が現るから、その可能性も低くしたかった。


(他の町でもこういうことが起きているがな……)


ギアさんの話によると、あの4人がパーティーを組んだだけでアニメの通りにものが運ぶ可能性が高い。


もう一人のヒロインのことだが、その子はヒーラーの親友で、一緒にゲームをする予定だったが、スタートポイントが違う町になった。そしてヒカルたちはその子を探すためにこの町を出る。


「もうあの山に行ってもいいのか?」


「ギリェルメさんは既にこの世界で一番強いプレーヤーです。その武器の使い方を覚えて、数か月でレベルを上げるだけでラスボスを討伐可能になるのです」


「は、はあ………」


「千年の戦いは貴方をそれほど強くしたのです。実感はないようですけど、魔王以来、強敵と合っていないのですよ?」


「それは、まあ」


あの未来の世界には強い人は見てないわけじゃない。女王と一緒にいた貴族たちの中には強い人も居た。だけど、持っている知識を使ったら数年で超えるかもしれないっとも思った。


「そうか。強くなっているのか、俺」


「ですけど、忘れないで下さい。この世界の強さの順位は比較的に低いのです。次の世界はこうはなりません」


(次の世界か。気になるが、先ずはこのデスゲームを超えることだ)



そうして、俺とサポーターのギアさんの冒険が始まった。




つづく



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