第37話 - いつか………




夜。


あの後みんなで学食に行って、その後は解散になった。夜になり、みんなはもう寝ている。


そんな夜、俺は女子寮にあるテレザさんたちの部屋の上で隠れている。


(ストーカーだ!誰か来てくれ!)


まあ、あれだ。普通?に彼女たちが心配だ。あの異世界の奴らや貴族たちがなにもしないとも限らない。


「…………………」


ふと綺麗に輝く夜空を見上げる。


(本当に不思議な人生を送っているね、俺?)


異世界に召喚されて、でもそれは普通の村人として……かと思えばどこぞのアニメの主人公よろしくに死に戻りの能力があった。それで同じ時間を数十回繰り返して、世界を滅ぼそう化け物の黒い竜を倒した。それでもすごいことなのに、次は赤ん坊として転生して、異世界の学園に入ったと思えばそこで一人の少女に召喚された。まだまだ続く人生で、姫だの伯爵の令嬢だのとパーティーを組み、挙句には数十人の異世界の少女たちとパーティーを組む。


「…………………なんでやねん」


(まあ、冗談はともっ――――)




=――――――――――=――――――――――=


異世界ハーレム、楽しんでいるかしら?


=――――――――――=――――――――――=


「ッ!?」


何年ぶりだろう。また、あのメッセージだ。



=――――――――――=――――――――――=


そこで止まるつもり?

魔王を倒す勇者たちを育成して、

君は止まるつもりかしら?


=――――――――――=――――――――――=


そのメッセージで俺の胸が苦しくなった。まるで何もかもを見透かされたような感覚だ。


確かに今回の魔王が前のヤツと同じ強さなら勝てる見込みがある。その後であの子たちと楽しく生きられるかもしれないっと、そんな風に思い始めている。


「だけど、俺は………………俺は止まらない、止まるわけにはいかねえ」


(そうだ、これだけでは俺の夢は叶わない)



=――――――――――=――――――――――=


目が覚めたわね。

行きなさい。

ここへ戻るかどうかはあなた次第。


=――――――――――=――――――――――=


突然、目の前にあの白い扉が現れた。


「ッ!―――…ああ、分かった。ありがとう」


この扉を使う意味を分かっている。


それはテレザさん、テレザたちの前から消えることだ。


(女神か何かは知らない、でもこの人は俺に力を与える)


テレザの部屋の窓を開けて、持っていたアイテムと金を全部置いた。


「いつか………………………」





その部屋へかけた言葉はつづくことなく、俺は、世界から消えた。












◇◇◇◇











小さな黒い部屋で立っている。それ以外何もない、何も聞こえない。


突然。


「初めまして、ギリェルメさん」


ゲームみたいなエフェクトをして、部屋の真ん中で丸いロボットが現れた。


「初、めまして?」


サッカーボールよりも小さいそのロボットは空中で飛んでいる。どうやって飛んでいるかは分からないがその黒色の機体にはピンク色の二つの目があり、機体に触れない耳みたいなアンテナもある。


(いきなりハイテク?)


「ワタシはギア、貴方のサポートをするために来たのです」


「お、おう。初めましてギアさん、よろしくお願いします?」


そこで………


「ん?これは?」


部屋の壁に今度は白い画面が現れた。そしたら……



アニメ、ゲーム、漫画等々。画面に見たことのないそれらの映像が流れている。


「いきなりなんだ?って、あれは……」


偶には見たことがあるもののシーンも流れる。そしてその中で一つのアニメの映像が大きくなり、壁全体を覆う画面に1話から始まった。


「どうか、最後まで見てください」


ギアさんの言葉に俺はアニメに集中する。


このアニメは見たことがある。

主人公と他のプレヤーがゲームの世界に閉じ込められるアニメだ。


「…………」


………

……


数時間後。


黒い部屋で腰を下ろし、そのアニメを観ていた。


主人公がゲームのラスボスを倒し、無事に現実世界に戻る。そしてゲームの中で出会ったヒロインたちと結婚する。


地球に居た時にこういう物語はありきたりになっていたが、俺は好きだった。



=――――――――――=――――――――――=


地球でアニメとして知っている物語、その大半は

実際に起きていることよ。


=――――――――――=――――――――――=


「いやいやいや!?」


アニメが終わると同時にまたメッセージが来た。


(何を言っているんだこの人?)


「………今更だ」


そう。俺は違う世界で魔王と戦っていた。アニメの物語が実在したっと言って驚いていいが、否定は出来ない。


=――――――――――=――――――――――=


あなたにもう一つの力を与えるわ。

世界を渡る力。


=――――――――――=――――――――――=


「え?ま、待って……それは………」


それ以外の説明はなく、続いたのはギアさんだった。


「貴方には数多くの世界を渡り、強さを手にするようにワタシがサポーターとして送られてきたのです」


「…………………」


(マジかよ!!)


「どんな世界でも行けるのか?」


(もしかしたら、あのアニメの!)


「いいえ。今の貴方には無理です」


「え?」


「説明します」


そう言うと部屋の壁にまた画面が現れた。そこに………


「ヒカルと………」


色んなアニメのキャラクターがあった。


「簡単に説明をしますと、世界には力の基準があるのです。今の貴方が高ランクな世界行ってもそこの人たちの戦い方すら理解できません。場合によるとその世界の環境にすら堪えません。それでは修行になれないのです」


(マジで修行をするのか………)


「貴方には比較的に力が弱い世界から体験を始めます。その世界にある試練を超えたら次の世界へ。それを繰り返します」


「…………………」


(どうして俺にそこまでの力を与える?)


説明が終わり、画面が消える。すると………


真っ暗な部屋にあの白い扉が現れた。


「行きましょう、ギリェルメさん」


「…………………」


(いや、構わねえ、俺は夢を探すだけだ)


躊躇いもなくその扉を開ける。








これが俺の終わりの見えない旅の始まりだった。






つづく




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