第36話 - スキルの可能性 2




「うわあ~!出来た!」


「うむ、上手だな」


一人の少女が目の前に水玉を魔術で作った。


テレザさんたちも手伝い、俺たちはスキルの練習した。


中にはとんでもないスキルを持っている人も居るが、びっくりするくらいにみんないい子だ。


(野郎たちだけ少しバカのは何でだ?)


「さて、君のスキルは確かにダンジョンマスターだったか」


「す、すごい?」


「ああ、すごいだろうね」


今は確認するのは黒髪を小さなポニーテールにしているギャルだ。


「何となく使い方が分かるよ?自分のダンジョンを創ることが出来るみたい、それで合っている?」


「君のスキルは初めて見るものだが、多分それね。そのダンジョンがどんなものかは分からないから、使う前に少し待ってくれ」


そう言って、俺は他の子たちから離れて、自分の盾と剣を取り出した。彼女はびっくりしたが、直ぐに安心させた。


「大丈夫だ。これはもしもの時のためにみんなを守るためだ。それじゃあ、先ずはパーティーだ。インヴァイト」


彼女にパーティーの招待を送る。


「本当にゲームみたい!」


(だろう?)


「それじゃあ、試してみてくれ」


彼女と無事にパーティーを組んで、スキルを使うように言った。


「えっと、はい!」


その掛け声と共に彼女は両手を前に伸ばした。その先に黒い渦が現れて、2メートルの四角い板の形になった。中の様子は見えないが、それもダンジョンの入り口と同じ。


「確かにダンジョンかもしれないな」


「何だか構造が分かるよ?えっと、暗い洞窟で、ぷよぷよしている魔物がいる?あ、レベル2のスライムって画面に出っている」


「画面?」


「あれ?お兄さんには見えない?」


どうやら彼女の目の前に画面が現れているようだ。


「ん、見えるようになった」


「何だかお兄さんに見せようっと思ったら出来たみたい」


彼女に近づいてその画面を見た。


「ああ、 これはFランクダンジョンだ」


(こりゃあすごいな……)


まるでゲームの画面のようなものが彼女の目の前に現れている。一つだけじゃない、ダンジョンの地図、魔物の能力、更には攻略方法の説明まである。


「あ、何だかヒントがあるみたい」


彼女は[HELPヘルプ?]っと書かれているボタンをクリックした。そしてなんと、シンプルだが、スキルの説明が現れた。


[ダンジョンマスターになったあなた!自分だけのダンジョンを作ろう!ダンジョンを攻略したら、次はそこを改良してまた攻略!仲間を集めて、みんなで強くなろうね!]


(テンション高い説明だな)


「このダンジョンを攻略したら、今度はもっと強いダンジョンになるってこと?」


「そうみたいだな。でもそれだけじゃないはずだ、虹色はとんでもないものが多い。攻略したら何かを貰えるかもしれないな」


(自分を鍛えるためのダンジョンか。こりゃ羨ましいぜ)


「まあ、入るのは後にしてくれないか?まだ確認を終わっていない子も居るからね」


「うん、分かった」




◇◇◇◇




数時間後。


「みんな、準備はいいか?」


「「「「「「はーーい!」」」」」」


俺たちは数十人の大軍で普通のFランクダンジョンの中に居る。


不安がっている子もいるが、どんな道を選ぼうと魔物という化け物と出会うことがある。彼女たちにそれを見せるためにここへついてもらたった。


(それにレベルを上げるだけで安全も上がる)


もちろん使い慣れていないが、全員は国の支援で貰った装備を使っている。武器は危ないから訓練用のものを渡しているが、イレネさんのアイテムボックスで全員の本物の武器がある。


「それじゃあ、先ずはこの1階層を攻略しよう。君たちは戦わなくてもいい、俺についてくれ。テレザさん、イレネさん、エリザベスさん、お願い」


「はい!」

「はい!」

「はい!」


戦闘はテレザさんたちに任せるつもりだ。ここの魔物は弱いが、この人数のパーティーでは相当な群れが来るだろう。彼女たちのためにもなる。


「じゃあ、行こう」



………

……



「テレザちゃん下がって!」


シュッ!


イレネさんの声でテレザさんが距離を取り、次の瞬間、戦っていたボススライムの核がイレネさんの放った矢で砕かれた。


こういう人数のパーティーでは、一階層ごとにダンジョンボスが現れることもある。


「はああっ!」


部屋の反対側でベアトリスさんは大きな剣を振り下ろし、もう一体のボススライムを真っ二つにした。


「すごい!!」


背後から少女たちの声が聞こえる。


「私たちもあんな風に戦えるのかな?」


「ああ、出来るさ」


まだ残っているボススライムと戦っている三人を見ながら答える。


「戦わなくてもいいのは本当だが、自分を守るための護身術を学んでほしい。これみたいに魔物との戦いじゃなくてもいい、走り込みでも、木剣の素振りから始まってもいい。自分と友達を守ろう」


「うん!」


(おっと、見てるぜ?)


「ストーンバレット!――っと、気配察知を止めるなテレザさん!」


「あ!」


ダンジョンの陰で一体のスライムが隠れていた。そいつの近くでテレザさんが居たが、気配察知のスキルを使っていなかったようだ。


「すみません!ありがとう、ギリェルメさん!」


「頑張れ!」


俺の些細な助けのお陰じゃなく、彼女たちは無事に1階層をクリアした。


「ヒール!お疲れ様ですわ!本当にすごいですの!」


ジュリアさんは何だか誇らしげに彼女たちに回復魔術を使いながら労いの言葉をかける。


(本当にいいパーティーだな)


姫さんはというと朝から黙って勇者の少女たちを観察している。彼女も俺と同じくスキルの悪用を心配している。


「それじゃあ、今日はここまでにしよう。落ち着いて話したいことも多いだろう」


何だかんだでこの状況を受け入れている人が多いが、まだ混乱している人も居る。


こうして、彼女たちの最初のダンジョン探索が終わった。


「…………………」


(何だろう、この違和感)




つづく





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