第24話 - 出会い
女王立フレシャア学園。
世界中の国々から15歳の子供たちをを育てるための施設。騎士、魔術士、冒険者、学者や領地経営などと学生たちに幅広い未来へ道を示してくる。
だがそんな学園、いや、この世界にも問題がある……
貴族。
そう。漫画や小説どころか、地球にもあった身分差別はこの世界にも存在する。
幸い、奴隷制度みたいなものない。平民は普通の人生を送れるが、貴族との違いはどこに行っても見られる。
この学園でもそうだ。例えば高位貴族は入学試験なしで合格だ。小さい時から教育を受けているから、試験をするまでもないっというのがこの学園で当たり前のように通っている。
(アホくさぁ)
っと。そんなことを考えていると入学式が行われる会場に着いた。そこはまるでコロシアムのような建物で、その中央で数千人の新学生が立ち、複数の列を作っている。
入学試験の点数で冒険者よろしく、クラスがランクF、E、D、C、B、A、Sっという風に分かれている。
(俺は〜……あっちか)
俺は自分のクラスのあるDランク、1年5組の列に入った。
女神たちの配慮か、転生しても体の外見は同じ。だがなんと、身体能力と魔力量は少し上げている。
(まあ、地頭は同じがな)
流石世界一の学園。入学試験は結構難しくて、前世?の記憶があっても自分ではSランクに入るかどうかは怪しい。
だが当然、高ランククラスは貴族だらけだ。必要なくそいつらと関わるつもりは無い。
「ね、ねえ!あっちを見て!」
「なに?うわああ!あの方がお姫様なの!?」
「なんて綺麗!」
考え事をしていると周りの生徒が騒ぎ始めた。みんなが見ている方向へ視線を向くとメイドを連れて、一人の少女が会場へ入ってきた。
(うわ、あれが姫か。そりゃあ騒ぐわ〜)
みんなと同じ制服を着ているが、朝の日差しを受けるその長い金色の髪が白く輝き、瞳はここからでも分かる深い青色をしている。
姫さんは当然、Sランククラスの列に並んだ。他の列の人は知らないが全員が世話係を連れているから、高い身分のが分かる。
(それにしても多いなあ)
このコロシアムの中は生徒でいっぱいが、それ以上の人数が客席に居る。2年と3年の生徒だけじゃなく、色んな国の貴族、商人や各ギルドのトップが集めている。
「…………」
コロシアムの一番高いところに客の人数が少ない場所がある。そこでは逆に騎士の人数が増えて、その騎士に守られている人たちの中でも格段に目立つ存在があった。
(あの人が女王か)
流石にここからその姿は小さく見えるが、他の人は取り巻きのようにその女性と話している。
パーン!
っと。会場の前から大きな拍手が聞こえた。
どうやら始まるようだ、天恵の儀。
貴族たちがここに来たのは入学式を見るためだけじゃない。この世界の人たちは15歳の時にこの天恵の儀で天恵スキルに覚醒するんだ。
女王までここへ来たのは優秀なスキルを貰った生徒を見極めるためだ。
……
…
「―――それでは、名前を呼ばれたら前へ来てください」
説明が終わり、先生らしい人が次々と生徒の名前を呼んでいく。呼ばれた生徒はコロシアムの中央にあるステージに上がり、その上にある水晶に手をかざす。
その水晶は天恵スキルのレアリティ色に応じて輝きを放ち、空中にステータスと同じ白色の巨大画面がコロシアムに居る全員にその結果を示す。
FからSの順番で生徒が呼ばれている。
天恵スキルは完全にランダムってわけじゃない。例外はあるが、種類はその人が一番得意としているもの、もしくは一番欲しがっているもの。例えば剣術適性や鑑定などという違う種類のスキルがある。
そこでレアリティ。ここも種類と同じだが、ランダム性がより高い。なんの訓練をしていない人がレアなスキルに覚醒する可能性は極めて低いがゼロではない。
「1年5組、ギリェルメ!前へ!」
そうして、ついに俺の番になった。
(さて、今度こそ貰えるのかな?)
スキルを貰えなくても、女神たちが上手いことに俺のステータスを誤魔化すと思うが。
(出来ればこの新しい人生で天恵スキルを貰いたいなあ)
少し緊張しながら、俺はステージに上がる。
(うわあ、マジで人が多い)
何千人の人が見ている。勇者パーティーに居た時でもこういうのは避けた。
「さあ、鑑定を」
先生に言われて、俺は水晶に手をかざした。すると……
「え?」
おおおおおおおおおおっ!!!!
(うおお、マジか!!)
水晶は最初に白くなったから、またスキル無しっと思ったが、その光が金色に輝き始めて、客たちはコロシアム全体が震えるくらいな歓声を上げた。
俺も頭を上げて、そこで俺が前の人生でも憧れたスキル名があった。
【 金色天恵スキル : 結界術適性 】
「素晴らしい!Dランククラスで金色の天恵スキルに覚醒するなんて、相当な努力をしたであろう。おめでとう、少年!」
「ありがとうございます!」
(変に目立ちたくないが、流石に嬉しい)
そうして、拍手を浴びせながら自分の列に戻る。天恵の儀が続き、クラスランクが上がる度にスキルのレアリティも上げてくる。
ちなみにあの姫さんも同じ金色スキルで、召喚魔術適性の天恵スキルに覚醒した。会場も俺の時以上の騒ぎを見せて、あの女王も席を立ち拍手を送った。
…………
………
こうして、入学式が終わった…わけではない。これからもう一つのイベントがある。
特に高クラスの貴族たちのためのものだが、今から金色のスキルに覚醒した生徒がそのスキルの効果を披露するイベントだ。
スキルというのは訓練して、始めて使えるものだが、レアなスキルに関しては最初からその効果を発動できるものが多い。
(俺もなんとなくだが、初歩的な結界術なら使える気がする)
………
……
他の学生も客席に座り、コロシアムの中央に残ったのは金色もちの生徒だけだ。
全員Cランク以上でDランクは俺だけだ。というか……
上位クラスの何人が俺を睨んでいる。
(笑える。俺は口が悪いから、何も言わない方がいいだろう)
それよりもあの姫さんのことだが、近くではもっと分かる、とんでもない魔力量だ。
(勇者たちと同レベルだぞ)
彼女には比べないが、他の生徒も結構の量だ。
っと。スキルの披露イベントが始まった。
まずはクラスランクが一番低い俺からだ。今更かもしれないと思うけど、これ以上は目立ちたくない。
(ぱぱっと下級結界を貼って終わろう)
そんなフラグを立ちながらも、ステージに上がった俺は無事に小さな結界だけを貼った。
「プロテクトウォール!」
魔術の名前の通り、俺の前に半透明な白い壁が現れる。高さ2メートル、広さ4メートルのその壁を見て客たちがまた拍手をしたが、金色スキルの想定内の結果みたいだ。
俺もステージから降りて、他の生徒のスキルを見ていた。
(あの姫さんは召喚術でどんなものを呼ぶんだろう?)
召喚魔術スキル。
召喚されるものは人による。自分と規約をする魔物を召喚する人が居れば、燃え盛る魔法の剣を召喚する人も居る。
そしてこの披露イベントだが、姫さんが召喚のスキルに覚醒したから、貴族たちの提案という名の命令でクラス関係なく召喚スキルの人たちは彼女と同じく最後になった。
(一緒に召喚をして他との力の差を見せつけるためか、他のヤツらにとっては不愉快だけだろう)
でもそんなものは必要なかった、彼女の魔力量ではとんでもないものがくるのは一目瞭然だ。
………
……
そうして、姫さんと他に召喚魔術の天恵スキルに覚醒した人たちがステージに並んだ。
入学生は数千人っと多かったが、流石レアスキル。覚醒したのはたったの11人。
(これはすげえな……)
他の生徒の中にも上品な雰囲気の人は数人居るが、やっぱり彼女はその立ち姿すら目立っている。
(お?)
姫さんも平民の金色スキルが気になるのか、目が合った。
(うむ。他のやつみたいに明らかな差別を見せていないみたいだ)
「それではみんな様、始めましょう」
(さて、どんなものが来るだろう)
俺と他の金色もちの生徒はもうステージから離れて、その瞬間を待っていた。
「Cランククラス1年1組のレベッカさん、前へ」
最初は11の中でもただ一人のCランク。桃色のショートヘアーと勝気な顔の彼女も姫さんの引き立て役をさせられて不満か、むっすっとした顔をしていたが、自分のスキルへの好奇心が勝ったようだ。笑顔になり召喚を行った。
(いい魔力量だなあ)
「召喚されし者よ、契約の時が来た、己の力を示しなさい」
彼女の言葉に前の空間が歪み、その中から黒い狼が現れた。
(おおおお!あれはCランク上位魔物のダークファングだ!最初の魔術でそんな魔物を召喚するなんてすげえじゃないか!)
「これは!Cランク魔物の召喚とはなんて才能でしょう!?」
そう言った先生だけじゃなく、周りの客たちもその凄さがわかるか、同じようにテンションが上がっている。
レベッカさんという少女も嬉しそうに召喚されたダークファングと契約をした。
召喚された者とは即に主人と従者になるわけじゃない、お互いがの同意の上で契約を結んで初めて召喚が成功する。
そんなこんなで、姫さんの番を待ち遠しいと感じながらも他の人の召喚が続いた。
次は4人のBランククラスの生徒たちだ。
「Bランククラス1年1組のロイドさん、前へ」
(これがBランククラスの生徒か、魔力量はレベッカさんと同じくらいだな)
ロイドさんは前に出て、同じように召喚した。そして現れたのは……
「ロイドさんもCランクのヒーリングバードですか!今年はいい召喚士が揃えましたね!」
(確かに凄い。ヒーリングバードは中位のCランク魔物だ。だけど、俺が一番驚いたのはあのレベッカさんがBランクの生徒よりも上の魔物を召喚したことだ。本当に凄い子だ)
「Bランククラス1年3組のジュリアさん、前へ」
(お、ドリルだ)
そのジュリアさんという子は金色のドリルヘアーをしていた。正にお嬢様って感じ。
「召喚されし者よ!契約の時が来た、己の力を示しなさい!」
余程楽しみにしていたようで、先生の言葉も待たずにジュリアさんは召喚を始めた。
「ッ!?」
うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!
(なッ!!!???)
コロシアムがまた震えた。いや、もうはや地震だ!
「…………………」
先生、生徒や姫さん、俺ですら声が出ない。
それもそのはず、彼女が召喚したのは…………………
杖。
彼女の目の前に一つの杖が空中に浮かんでいる。
だが、あれはただの杖ではない。
その黒い杖から…………虹色の光が放っていた。
「せ、聖杖………」
先生がついにその名前を言った。
(なんて子だ!あれは間違いなく聖杖だ!)
聖杖。それは女神の手で作られた勇者のための武器の一つだ。その力はなんと、虹色スキルと匹敵する。
「これは……私の?」
ジュリアさんもついに動けるようになり、その杖へ手を伸ばした。すると聖杖の方から彼女の手へ動いた。彼女がそれを掴んだ瞬間、その体から虹色のオーラが溢れ出す。
そして聖杖を高らかに掲げた彼女にコロシアム全体から声が響いた。
(とんでもないものを見たぁ………)
「そ、それでは。Bランククラス1年3組のカミラさん、ま、前へ」
先生もまだ戸惑っているが、召喚はまだ終わっていない。
聖杖を嬉しそうに振り回すジュリアさんと変わるように緑色の少女が前へ出た。
(っていうか!そんなもん振り回すなよッ!!街が吹っ飛ぶぞ!!)
冷や汗をかきながらカミラさんの召喚を見ていた。
(先はドリルに気を取られてよく見ていなかったが、聖杖を召喚する前のジュリアさんだが、魔力量はレベッカさんとそれ程変わらなかった。それに比べてもこの子の魔力量はあの2人以上だ。さて、なにが来るかな?)
「召喚されし者よ、契約の時が来た、己の力を示しなさい!」
彼女の言葉に現れたのはBランク中位の魔物、フォレストゴーレムだ。
「おおお!Bランクのフォレストゴーレムではないか!本当に今年の新入生はどうなっているのでしょう!?」
4メートル以上の樹木で出来たゴーレムを見て、先生がそんな言葉をした。
(そうか。今年が特にすごいみたいだな。そりゃあこれがこの世界の普通ならやばいわ)
流石に聖杖には勝ったなかったが、Bランクでもとんでもないものだ。カミラさんが無事にフォレストゴーレムと契約をしたのを見て、客たちも拍手を送る。
(それにしても、この子たちがこんなに凄いなら、姫さんの時はどうなるだろう?いや、いくらでもあのジュリアさんは超えないと考えた方がいいだろう。あれは魔力量だけで召喚するものじゃない。あの子は聖杖に選ばれたんだ)
そんなことを考えながらも期待はそう簡単に消えるものじゃない。他の人もそうか、姫さんを見ている人が多い。
当の本人もそれが分かっているのか、真剣な顔をして、自分の番を待っている。
「それでは。最後のBランククラスの生徒、1年7組のテレザさん、前へ」
(うん、レベッカさん基準では少し魔力量が少ないが、この年の子にしては多い方だ)
次は黒髪の少女だ。他の子たちと違ってあまり派手な感じはしないが、それでもBランククラスの生徒だ、いいものを召喚するかもしれない。
彼女は前に出て、緊張した面持ちで目を閉じ、召喚を行った。
「召喚されし者よ!契約の時が来た、己の力を示しなさい!」
(緊張しているが、力強いこ……え…………)
ドクンッ!
「ぅ――……………………………」
心臓が止まると思った…上手く息が出来ない。
彼女の目の前では最初は何もなかった。彼女も他の人も失敗したのではないかっと思った、だけど………それは突然と現れた。
俺の目の前に。
小さな光の線。
それが現れたと思ったら……
その線が広がり、
白く輝く扉になった。
あの時と同じように心臓が痛い。だけど………
俺はその扉へ手を伸ばした。
それを開けると俺はステージの上に現れて、目の前に彼女が居た。
「え?」
彼女は突然のことに驚いた。もちろん、俺も同じだ。
そんな俺たちの近くに居た先生が戸惑いながら声を出した。
「これは、どういうことでしょう?」
コロシアムの人達のざわめきが聞こえる。そんな中で、俺と彼女はただただ黙っていた。
というより、何を言えばいいかは分からない。とにかく息苦しく、そして、顔が熱い。
彼女も顔が赤くなっていて、戸惑っているようだが、一歩前へ出て俺を見ていた。
「ねえ……君は………」
テレザさんは何かを聞いてきたが途中で止めて下を向いた。数秒後、彼女は決心した顔で俺の方へ右手を伸ばした。
それは………召喚契約の合図だ。
その行動でコロシアムがまたざわめいた。
だが、俺も静かに右手を伸ばす。
「!」
彼女が俺の行動、いや、返事に驚いた。
そして、その合図に反応するように俺たち2人の手首に黒いブラスレットが現れた。
(そうか…君だったのか。俺を呼んだのは…)
俺たちはそのブラスレットを見て、契約が結ばれたのが分かった。
「君たち、説明してもらえるかね?」
そこで先生がまた話しかけた。それい答えたのは彼女だった。
「私が彼を召喚したんです。召喚した時にあるお願いしたんです」
控えめな子か、彼女は申し訳なさそうに先生に言った。
「い、いや、それは見ればわかるけど。いいえ、それでも分からないよ?人間を召喚するなんて、歴史の中でも存在しないことだ」
確かに俺が生きていたあの時代でもそんな魔術はいなかった……一つを除いて。
「それで、君は何を願ったというのだ?」
「それは……」
先と同じく彼女は下を向いたが、また顔を上げてその願いを言った。
「私が願っていたのは――」
『ハンズ副長、そこまでにしなさい。2人には私が後で話を聞こう』
そこで一人の女性が魔術を使って、声をコロシアム全体に届いた。
女王だった。
「は、はっ!失礼いたしました、陛下!さあ、2人は自分の位置へ行きなさい」
俺たちは返事をして、一緒に召喚が終わった生徒たちのところへ向かった。
………
……
他の人たちに注目されているが、俺はテレザさんの隣に立ち、一緒に生徒たちの召喚を見ていた。
彼女も少し気まずいのか、何も話をしていない。だけど嫌な空気じゃなかった。
……
…
そうして全員の召喚が終わり、ついにあの姫の番が来た。
「最後にSランククラス、1年1組のオルガ姫様、前へ」
コロシアムは静かだ。今までのことをまだ理解していない様子だ。
ステージの上で姫は右手を前へ伸ばし、小さな声で召喚の詠唱を唱えた。
「召喚されし者よ、契約の時が来た、己の力を示しなさい」
(おお!)
「綺麗!」
隣のテレザさんが見惚れたようにそう言った。
召喚されたのは小さな魔物だ。
生徒たちのほとんどは分かっていないようだが、大人たちはみんな驚いている。
(あれは水精霊の子供だ)
この世界には魔物だけじゃなく、聖獣と呼ばれている存在が居る。聖獣たちは人類の味方だが、あまり人の前に姿を見せない。
その精霊はお姫の周りをぐるぐるっと小さな青色の翼で飛び回っている。空中に水玉が現れて、全員その様子に視線を奪われた。
精霊はやかた姫の手のひらの上にとまり、何かを話した後、2人は契約した。
驚きの連続の入学式がその幕を閉じた。
その終わりと一緒に、俺の新たな冒険が始まった。
つづく
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