第23話 - 鉄の匂い
「かわいいねえ~」
声……
「あっ!起きた?」
鉄の匂いがする……
「ふふ、大丈夫だからね~」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
美人が居て、俺がいる………分かった。
(!!!!!!!!!??????????)
「え!?どうしたの!?」
赤ちゃんがしちゃダメな顔に女性がびっくりする。
(いや、こっちがびっくりだよ!なにこれ!?転生?俺、生まれたてなの?この人、お母さん?)
「可哀想…お母さんじゃないからびっくりしちゃったのかなあ。大丈夫だよ、ほら、よっちよっち~♫」
女性が俺の不安を消すように頭を撫でた。
(これは申し訳ない………)
…………
………
数分後。
俺は少し落ち着いた。多分。
(これはどう見ても転生だ)
女神の話で俺はどこかへ転移されると思ったが、まさか生まれ変わるだんて。
「ほーら、ちゃんと食べてねえ」
腕の中の俺に食べ物を与えているこの女性はお母さんじゃないようだが、名前すら分からん。先から話そうとしているが、ああばぁ~とか、えへぇしか出ない。
「うううん、どうしよう?孤児院に行った方がいいのかなあ?」
(ん?孤児院?)
「はあぁ~こんなかわいい子を捨てるなんて……」
(そうか、そういうことか)
どうやら俺は捨てられたようだ。
「あれ?これは?」
女性は俺がいたかごの中で何かを見つけたようだ。
「名前はギリェルメちゃんか。名前もカッコイイのね。それと手紙もあるみたい。……アタシはこの子を違う国の森で見つけたけど、自分には世話することが出来ない。その国には戦争が起きていて、アタシはいつも死んでもおかしくない。どうか、この子を育てください、優しいあなたならきっと出来ると信じてる。ベーラよりって!?ベーラちゃん!?どうして!?」
(おう、更に俺を拾った人が居て、しかも知り合い?俺、訳あり?)
「ベーラちゃん………どうして戻ってこないの?」
うわあ、母さん泣いている!
「かぁ!」
やっぱ出来ない。
「あら、ごめんなさいねえ、大丈夫よ~」
色々と事情があるようだが、俺には笑顔を見せるしかなかった。
「ベーラちゃん任せて。あなたが戻るまで、私がこの子を育つよ。だからお願い、無事で居て」
泣きたい気持ちいいを抑え、俺に笑顔を見せるながら女性はそう言った。
(すごいことになったな。色々と疑問があるけど、何だかこの人をほっとけないっと感じる………赤ん坊だから何もできないが)
そんなこんなで、俺の転生?が始まった。
◇◇◇◇
一か月後。
まだよちよち歩きしかできないから、家の中で見つかった本やイザベラさんこと、母さんが誰かと話している時以外の情報収集は出来ないが、今いるこの場所のことは少しだけ分かってきた。
少しっと言っても、情報が多い。
先ずは
「すていたす」
練習のためにもどうにかその言葉を出す。そして、母さんが作ったちっちゃい椅子に座っていた俺の目の前に白い画面が現れる。
=――――――――――=――――――――――=
【ステータス】
名前: ギリェルメ
年齢: 1 種族: 人族
称号: ――
=――――――――――=――――――――――=
ここでは自分でステータスを確認できる。
(本当に何もないなあ)
女神の言う通りに、俺のレベルとスキルが消えた。
(まあ、記憶があるだけで嬉しい。みんなのことを忘れたくない)
そして、もう一つ。
家にあった地図で大陸を見たが、ここは同じ世界みたいだ。だが、違和感がある。国の名前と国土が全部変わっている。家の中の家具でここは少し先の未来って分かっているが、これはまだ調べることが多い。
そして、人。昔と同じく、ここでは人間だけじゃなくエルフや獣人などの他の種族もある。
ちなみに、母さんはハーフエルフでなんと、鍛冶職人だった。
「ふふ、どうしちゃったの?」
っと、朝ご飯を作っていた母さんを見ていたら、その綺麗な茶色の上を揺らしながらこっちへ振り向いた。
(ふ、かましてやろうか、この一か月で取得した必殺技を)
「おかあさん!」
「きゃああ❤!きゃあ❤!お母さんだって!もう一度言って~❤」
(ふ、攻略完了)
色々と不安はあるけど、この人がお母さんになってくれてよかったっとだけは分かる。
◇◇◇◇
早いことに、あれからもう15年。
「ギィ、大丈夫?忘れ物はない?」
心配そうな顔で母さんが聞いてきた。
「大丈夫だよ。母さんこそ無茶はしないでよね」
今日はなんと入学式だ。そう、俺にも異世界テンプレの学園編がきたぜ。
っと、ワクワクはしているが、この母さんのことが心配だ。
何せ、これから3年は学園の寮で暮らすことになる。母さんは仕事になると結構無茶なことをするから、離れるのは不安だ。
「もう、母さんは大丈夫よ。ニナさんも居るでしょう?」
ここに居ないが、ニナさんは母さんの弟子だ。俺が学園に居る間は一緒に住むことになっている。
「分かったけど、たまには様子を見に来るからな」
学園はここからそれほど離れていない。
(というか……同じ街です、はい)
「それじゃ、行ってくるよ、母さん」
「うん、頑張りなさい!あなたならきっとすごい天恵スキルを授かるよ」
母さんと別れのハグをして、俺は学園へ向かった。
◇◇◇◇
街の北側にある学園へ歩く。
南大陸の土地の大半を占めるヴァレン王国。その王都であるフレシャア。
この大きな街に目覚めて15年。分かったことが多い。まずはここは未来の世界で違いない。でも未来っと言っても、地球みたいな感じじゃなく、文明が少しだけ進んだ感じだ。
だけど、そこで矛盾。
文明は少しだけ進んでいるのに、国が全て変わている。
やっぱり違う世界じゃないかっと思ったが、この世界にも三姉妹女神がちゃんと存在した。それを知ってすぐにこの街にある教会に行った。そしてメッセージが来たには安心したが、その内容は少し不思議なものだった。
=――――――――――=――――――――――=
無事に転生ができましたね。
知りたいことは多いと思いますけど、
私たちからは何も言えません。
これからも、君は自由です。
=――――――――――=――――――――――=
そんなメッセージだった。
でもそれはいい。女神たちはここからは自分で夢を掴めって言った。ここへ転生してくれただけでありがたい。この世界に何が起こったのも自分で調べるつもりだ。
だが、俺が教会を出ようとした時にもう一つのメッセージが来た。
=――――――――――=――――――――――=
待っているわ。探しに来なさい。
=――――――――――=――――――――――=
(話し方も違っていたから、やっぱり俺を召喚した人かもな)
でもこの世界の女神はあの三姉妹だ、他の女神のことは誰も語らない。
そうしてその人物のことを探して15年。成果はセロだ。だけどただの平民の俺では調べる範囲が限られている。だから…
………
……
「ここなら何かあるかもなあ」
女王立フレシャア学園。
目の前にはその大きな敷地が広がっている。
(ここには大陸最大の図書館がある、そこでなら何か分かるかもしれない)
つづく
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