第18話 - 力




テントで横になり、隙間から見える星空を眺めた。


あの白い空間もグレッグさんとのやり取りも同じものだった。

今生きている事実が死に戻りは一回限りのものじゃないっと証明している。


(喜ぶべきか………)


「クソが」


悪態をつく。

だがそれは死に戻りに対してじゃない。自分自身にだ。


二回目の人生、今まで以上に努力して勇者たちの力になる。実際、その選択は正しかったと思う。冒険者としての腕を磨き、前は無理だったCランク冒険者になり、もう少しで勇者パーティーの一つに入る資格が手に入れるところまで上がりついた。


それだけじゃない、以前よりも強くなっていた俺は事件が起きる前に自分からあのホブゴブリンたちを探し、町の冒険者たちと一緒に倒すことが出来た。孤児院にももっと寄付することが出来て、ミリアンたちが不自由なく暮らせるように頑張った。


そう、俺は誓っていた通りに全力で頑張った。


………だったら何で死んだ?


答えは簡単だ。


全力を出して、負けた。



これがあの5年で手に入れた力だ。


=―――――――――=―――――――――=


【ステータス】

名前: ギリェルメ

年齢: 32 種族: 人族

レベル: 58

称号: ――


【天恵スキル】


【後天スキル】

『盾術』『剣術』『弓術』『火魔術』

『土魔術』『鍛冶術』『筋力増幅』

『視力増幅』『器用さ増幅』『気配察知』『魔力察知』



【ダンジョン攻略】

・『Fランク』

・『Eランク』

・『Dランク』

・『Cランク』


=―――――――――=―――――――――=



下位のCランクダンジョンも攻略出来るようになり、一番ランクの低いだが、勇者パーティーの一つに入る資格も手の届く範囲にいた。


そのためにレベルを60まで上げようとCランクダンジョンに潜り、魔物を狩りながら順調に進んでいた。


そのCランクダンジョンは今までの洞窟と違って、石の壁で出来た迷路型だったが、俺のレベルでは攻略出来ないほどじゃなかった。


がけど、15階層もあったダンジョンの10階層に着いた時にとある魔物と遭遇した。


スケルトンナイト。Cランク上位の魔物だ。

剣と楯、そして鉄の鎧を装備したその魔物はアクロスの町にあるDランクのスケルトンと比べ物にならないくらいに強かった。


正に騎士のような構えを取り、剣と楯の使いは同ランクの冒険者すら上回る。

だが、俺がこのダンジョンを選んだのもそれが理由だった。レベルを上がりつつ、剣と楯の腕を磨ける。


悪くない考えだった。強い魔物だが、今の俺ならそいつと互角で戦える。


だからこれが最適解っと思った。Dランク相手じゃレベルを上がるには時間がかかる、かと言ってより強い魔物に挑むのは自殺行為だ。


だから互角。だが、互角の相手でも、勝負するなら残るのは勝者と敗者だ。



長い闘いだった。スケルトンナイトの知能が意外に高く、自分と違って息が上がっている俺を見て、更に闘いを長引くために防御に回った。


だが、俺の剣の腕も少しは上がっていた。必死になり、奴の防御をかいくぐった俺は段々とダメージを与え続けた。そんな攻防が数十分も続き、やがて防御の隙を見つけた俺は奴の肉のない首を剣で跳ねる場面にまで粘ったが………それは罠だった。


気づけば、首に焼けるような痛みを感じ、視線を下げれば、奴の剣が喉を貫いていた。



そこからの記憶がない。



分かるのは目が覚めた時にはまたあの白い空間に立っていて、自分が負けたという事実だけだ。


(なんて死に方をしているんだよッ!?)


正直に迷っている。


最初の時もそうだが、俺は死んでいたはずだ。この死に戻りをあてにするべきじゃないっとも分かっていた。


だから、あれで死んだ俺は、ただただ自分が惨めに感じて堪らない。

全力を出したつもりだ。だが足りなかった、あれが俺の人生の限界だった。何せ、この死に戻りは自分の力によるものじゃないからだ。


「はあ…………」


(もういい。自己嫌悪感はここまでだ。事実、俺は生きている。ならあの時の限界を超えるまでだ)


まだ沈んでいる気持ちを抑えて、俺は馴染んでしまった星空の下で瞼を閉じた。


死に戻り。


漫画とかでそういう能力を持つ主人公を見たことがある。全員じゃないけど、そのキャラたちは精神不安定になることが多い。そういう場合にそばにいる仲間の存在が心の支えになるが。


(俺には、夢しかない………)





つづく


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