第16話 - ………






……………………………




…………………………




………………………



……………………

………光……

……………

…………

……


「あれ?皆、誰か来たよ!」


「外国人?」

「そうみたいけど…」



「……………………………………?」


………………………………


「ぁ、な、なん――う、ッうおぉえええええぇぇ―――」


数秒間思考が止まり、再度動き出した瞬間に吐き出した。


「えッ!」

「なんだ!?」

「おい!?どうした!?」


(どうなっているッ!?何だよこれ!?俺は死んでった!戻ってる!???何なんだよッ!?)


力なく膝をつき、吐き気を何とか抑え込もうとした。


やがて冷静になり、脳が状況を分かるようになっているのに、体がそれを否定しているように気持ちが悪い。


あの白い空間だ!またあの部屋にいる!


「大丈夫ですか!?」


学生の一人が心配そうに近づいた。


(俺のことを覚えていない?いや、これは………)


「あ、ああ……大丈夫だ。すまない、いきなりここに現れて流石に驚いた」


動揺を隠すようにそう言った。

学生たちは俺のことを覚えていない…というより………


(俺だけが戻ったのか?)


少なくとも状況はあの時と同じ。

そして部屋にとある機械を見て、その考えが確信へ変わりつつある。


天恵スキルのガチャマシーンだ。


(今度はスキルを貰えるってこと?いや、そんなことより!あの子はどうした!?アメリアさんは!?町の人たちは!?あの世界は、どうした………)


「ねえ、あれは何?」


混乱している俺の隣に、先ほど心配していた女の子がマシーンを見ながらそう言った。


(…………ここは合わせよう。下手なことを言ったら怪しまれるだけだ)


「さあ……? でも何か書いているようだ、少し待ってくれ」


そう言って、俺はガチャマシーンの近くまで移動した。俺に続き、学生たちもマシーンに書いている文字を読みに来た。



(天恵スキルガチャ、勇者への贈り物………)


同じだ。あの時と同じ内容だ。


(なら……)


………

……


その後、全員がガチャを回し終わった。公開しない人もいたが、俺の覚えている限りで学生たちの貰ったスキルは全く同じだった。


虹色の数も、0だ。


ついに俺の番になり、ガチャを回したが………



=―――――――――――――――=


君は天恵スキルを与えられなかった


=―――――――――――――――=


(こっちも同じか。まあ、いい)


正直、俺が心配しているのはこれからのことだ。

あの世界がどうなったのが知りたい。あの世界に戻るのか、最初からになるか、それとも死んだ後からか?


(そもそも………俺は本当に死んだのか?どうしてこんなことになっている?)


頭の中で色んな疑問が浮ぶ。

だけど、一つだけは分かる。今も感じるんだ………



(もしかしたら、持っていたスキルが使えるのか!?)


あの世界で生きるうちにそういうご都合は諦めていたが、目の前の状況はそうとしか言えない。


そうしていると、あのカウントダウンがまた始まった。


「みんな、何が起きているかは分からないが、不安なら友達の手を握ってみて!それだけで少しは落ち着くさ」


不安がっているのを見て、前のように学生たちを落ち着かせてみた。


今度もその甲斐があり、みんなで手を繋ぎ、静かにその時を待っていた。



3


2


1



=―――――――00――――――――=





◇ ◇ ◇ ◇





カウンターがゼロになり、全員が眠りに落ちた。そして…………


ガタガタ


「―――!!!」


思わず手に力が入って、叫びそうになった。


(あの馬車だ!!!マジで戻った!!!)


8年前と同じく、あの荷物馬車の中で隠れている!


(やばいやばいやばい!考えることがあり過ぎる!)


これは何だ!?天恵スキル!?女神!?

分からないことだらけだが、一つだけ分かっていることをもう一度確認した。


「………」


集中して、周りの気配を探てみる。


馬車の前に一人、グレッグさんか?

他の馬車の奴らも察知出来る。


(使えるんだ!スキルが使える!)


混乱して気が付かなかったが、体も8年前に若返っている。


(そうや、あのメッセージは?)


そう考えた瞬間、例のメッセージウィンドウが目の前に現れた。


=――――――――――――――=


頑張りなさい。


=――――――――――――――=


「ぁ?」


思わず声が出た。


(女神たちか………)


どうやら女神たちは事情を分かっているが、説明するつもりはないようだ。


(いや、それも早とちりかもしれない。教会に行って、話しを聞くべきだろう)


「お、起きたか!」


そんなことを考えていたらグレッグさんが馬車の前から声をかけた。


(マジで同じだ……)



…………

………

……


それからまるで同じ映画を見ているような感じで時間が経った。

まだその名を貰っていないヴィセンス村で自分のテントを作り、その中で横になった俺はこれからのことを考えた。


「ふう……どうするんだよ」


あの時、女神たちは魔王に関わるのは自由って言ったが、なら俺はどうすればいい?蘇生、いや、この死に戻りに何の意味がある?これと、これは一度きりか?


疑問が終わらない。


(頑張りなさいっか…)


分からないことだらけだが、やることは一つだ。


(これがチャンスなら、掴むまでだ)


「絶対に止まらない………」


夢へ向かって進むだけだ。


この状況に一種の恐怖を抱きながらもその言葉を胸に誓い、俺はもう一度この不思議世界で眠りに落ちた。






つづく



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