第10話 - 自由を手に………





………6年後。



雨上がりの夜、深い森の中のとある洞窟の前に冒険者が一人。


「…………」


=――【Dランクダンジョン - 洞窟型】――=


ソロ推奨レベル: 25

パーティー推奨レベル: 15


=―――――――――――――――――――=



6年間……

クリーンシュ王国を出て、勇者たちが召喚された国、トレジャー王国にたどり着いてから6年間が経った。


この国で冒険者として働きながら、俺も勇者たちと力を合わせて魔王を討伐に行く。


そう思っていたが、この国に足を踏み入れた日、俺は見てしまった…


力の差を。


勇者たちは召喚された後、幾つのパーティーに分かれ、トレジャー王国で冒険者や騎士として活動をしていた。


この国で俺が最初に着いたのは勇者パーティーの1つが拠点にしていた街だった。幸運か、その日はちょうど勇者たちが依頼された魔物討伐の任務から帰った日だった。遠目から見ただけだが、街の人たちから感謝されて、みんな笑顔だった。


そんな中、俺は近くの人に何の任務だったのかを聞いてみた。それはCランクの討伐依頼たった。それだけでもとんでもないことなのに、なんと、勇者の1人が単独でボスを倒したそうだ。


冒険者のランクはS、A、B、C、D、E、Fに分かれて、中級のCランクは大したことに見えないが、そのランクになるには何年も必要だ。

それを1年足らずに成し遂げた勇者たちの力が異常のは言うまでもない。


その日から俺は冒険者として依頼をこなし、毎日ダンジョンに潜った。


(それを続けて、もう6年か)


そんな昔の事を考えながら、目の前のダンジョンから離れた。


このダンジョンはもう100回以上も攻略している。出る魔物は武装したスケルトン。剣、槍、弓などと、武器は様々だ。


ダンジョンから歩いて十数分でテントに着いた。

この森は一番近い街からも結構離れているので、ダンジョンに潜るためにその近くでキャンプをしている。


「まるで山籠りだな」


まるでも何も、その通りだ。

2年以上もこの森で過ごしている。数ヶ月おきで情報収集や装備を買えるために街に行くが、それ以外はここで過ごしている。


どうしてかというと、もちろん、強くなるためだ。あの日以来、勇者たちに追いつくために色んなダンジョンを攻略した。その中で一番修行になるのはここのスケルトンダンジョンだった。


人型で武器を使うから、自分の剣術スキルを伸ばし、対人戦の修行を行うにはもってこいのダンジョンだ。


この6年間で俺は複数のスキルを手に入れた。

剣術、盾術、弓術、気配察知や魔力操作など、他にも冒険の役に立つものを手に入れた。そして…


「火よ」


魔術。

その短い詠唱を唱え、指先に小さな炎が現れた。

それだけで少し暗かった顔に笑顔が浮かんだ。

その炎を使い焚き火を作る。


まだ強い魔術は使えないが、使えるだけでめちゃくちゃ嬉しいかった。


そんな俺の6年間の努力は確かなものになった。

今では俺はDランク冒険者だ。


だけど……


勇者たちは大体BランクやAランクだ。

前に街に出た時で聞いたが、どうやら一ヶ月前に大きな討伐任務があった。その任務で勇者全員で戦い、Sランク認定の魔物をも倒したそうだ。


そう。1年足らずでCランクを倒し、6年でSランク。


それに比べて、俺は6年でDランクだ。

異世界人だからか、努力のおかげか、Dランクの中でも俺は結構強い方だ。それでもCランクの壁すら超えていない。


「ふぅ」


流石に勇者たちと一緒に戦うのはもう無理だ。


だけど、別に夢を諦めたわけじない。

異世界云々じゃなくても、人に向き不向きはある。俺は冒険者に向いていない…なんてことはなかった。


この世界の基準では俺はどうやら中の上という感じだ。このままではAランク以上はともかく、いつかCランク、いや、Bランクでもなれる可能性がある。


だから俺は諦めない、止まらない。

今は勇者じゃなくてもいい、俺は夢に向かって歩くだけだ。


「ふふ、もう34歳のオッサンだけどな」


そんな事を考えながら、俺は眠りについた。




つづく

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