第6話 - ダンジョン





村を出て、西にある森へ向かった。


(これから魔物と戦うのか………)


森の中を歩きながら今までのことを思い出した。

この村に来てから魔物は見ている。だけどそれは鳥、うさぎや猪のような食用のために使われている比較的弱い魔物で、既に死んでいたものだった。


スキルなしでも戦えるかどうかはわからないが、異世界に来た俺には目標がある。

そのためには強さが必要だ。


(スキルがダメならレベルを上げるまでだっと願おう)


不安を払い、意気込んでいたら目的地に着いた。


「あれがダンジョンか」


パーティーでも組んでいるのか、村の人たちが集まていた。そしてその人たちの前に小さな洞窟があった。


その洞窟は蔦や苔で隠れていて、見つかるのは難しいが、変わったところは

そこじゃない。洞窟の入口には透明な水の泡みたいなものが張っていた。


(違いないな、あれが冒険者たちに教えてもらった女神の結界だろう)


この世界には色んな種類のダンジョンがあるが、魔物が出ないように女神たちは

入口に結界を張っているだそうだ。


結界が張っている限り魔物は外に出られないが、問題はその結界が壊されて、ダンジョンの中から魔物が暴走することだ。


異世界漫画でよくある『スタンピード』だ。


(さて、行こうか)


ダンジョンに近づいたら、目の前に半透明な画面が現れた。


=――【Fランクダンジョン - 洞窟型】――=


ソロ推奨レベル: 5

パーティー推奨レベル: 1


=―――――――――――――――――――=


あのメッセージウィンドウと違って、これは誰にも見えるものだ。


(やっぱりゲームそのものだなぁ)


この推奨レベルは全ダンジョンにあり、人が無暗にダンジョンに入らないためっと、女神たちが作ったらしい。


だけどあくまで推奨で、レベル1だろうと、100だろうと、誰でも入ることが出来る。


(さて)


ソロの推奨レベルは5だが、低ランクダンジョンならちゃんと装備を整えたらその差でも問題ないって相談に乗った冒険者たちが言ってた。


(考え事はここまでにしようか。これからは憧れの冒険だ)


画面から目を逸らし、洞窟の中を見ようとしたが、真っ暗で何も見えない。

少し怖くなってきたが、いつまでもそうしているわけにもいかず、俺は装備の

確認をして、ダンジョンに入った。



◇ ◇ ◇ ◇



洞窟、ダンジョンに入った俺の前に不思議な現象が起きていた。

外からは何も見えなかったが、入口の結界を通したら洞窟の壁が僅かな明かりを灯した。


(すげええー)


綺麗な光景だが、光はそれほど強くなく、洞窟全体は少しの薄暗った。

それに少し緊張をしながら、俺は静かに歩き出した。


………

……


(足音が聞こえる)


歩くこと数分、洞窟の奥から足元らしきものが聞こえてきた。


この世界にあるダンジョンにはゲームみたいな仕組みがある。

それは二人の人があの結界を通し、同じダンジョンに入っても別々の専用ダンジョンへ転移されるんだ。ダンジョンの形、魔物の種類や数が一緒でも、他の人と会うことがない。


だからダンジョンの中で何かが動いたら、それは……


(魔物だ!)


足音が段々と大きなっていると思ったら、洞窟の奥から3匹の魔物が姿を現した。


(こいつらが棍棒カエルか)


このダンジョンに出る魔物は棍棒カエルという、名前通りに棍棒を持った二足歩行の大きなカエルだ。


身長は1メートルくらいで、このダンジョンの奴らのレベルは1~5までだ。


(どこかのカエル騎士を思い出すぜ)


ゲロ?

ケロッ!ケロッ!


カエルたちは俺に気づいた瞬間一斉に襲ってきた。


(なるほど)


俺でも何とかなるっと冒険者たちの言葉通りに、そいつらの動きは大したものではない、子供ならともかく、大人ならスキルなしでも戦える。


少し安心していると、俺の左側から最初の一匹が棍棒で攻撃をして来た。

そいつらの力を計るために攻撃を左手の盾で受け止めてみた。


バンッ!


ぶつかる音は大きかったが、攻撃力はそれほどでもない。


(頭に当たらない限り問題ないな)


確認が終わり、俺は反撃とばかりに正面から来たカエルの腹に蹴りを入れた。


ケッッ!?


ゲロッ!?ゲロッ!?


あまりの衝撃で呼吸できなくなったそいつを見て、他の2匹は動けなくなる。


「ッカハハ!」


(グレッグさんに頼み、ブーツの周りに鉄の板を付けたから、痛いだろう!?)


笑いを抑えて、その隙に剣を握る腕に力を入れて、3匹に切りかかる。


(死ね死ね死ねぇッッ!!!)


剣なんて使ったことない俺に技術や型も何もない、ただただ殺人鬼の如く暴力を振りかざす。


(…………怖っ)


やがて3匹は動けなくなり、自分にちょっと引いていながらも体の緊張が少しずつ消えていくのを感じた。


「ふう………」


(出来た。やったぜ、魔物討伐………)


そうしていると、棍棒カエルたちの体が紫色に光りだし、そして消えた。

その場に残ったのは3個の小さな赤い宝石だけだった。


(魔石だ)


ダンジョンの中の魔物は外のと違い、倒されたら消える。だけど、その代わりにゲームみたいに魔石やアイテムをドロップする。


魔石には使い道が多く、そしてアイテムは強力。

人々にとってダンジョンは危険と共に富をもたらす存在だ。


(アイテムのドロップ率は結構低いって話だったな)


考えながら魔石を拾い、俺は静かに薄暗いダンジョンの探索を再開した。




つづく

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