第2話 - 天恵スキルで異世界無双





37人もの外国の学生に見られて、異能力をくれるガチャガチャマシーンの前に立つ俺………



(………どんな状況よ?)



学生たちは不思議そうに俺を見ている。理由は俺が唯一の大人、日本人だけの中にいきなり現れた外国人。そこで俺はこれから虹色を出すかもしれない。

怪しい以外の何でもないだろう。


(正直に俺が一番不思議に思っているがな。っとまあ、考えても無駄だ、回るか)


ガチャマシーンの全体を見てから、覚悟を決めた俺はついにボタンを押した。


(さて、どうなるだろう)


ポン!


他の人と同じくガチャマシーンの中が動き、ボールが落ちる音がした。

だけど、今までと違うことが起きた。


「「「「………………え?」」」」


俺だけじゃなく、周りの学生たちまで間抜けな声お出した。


そう、ガチャから出したボールは虹色。


ではなかった………


「白?」


ガチャから出たのは虹色のLEでも、他の色でもない。真白なボールだった。

しかも一個だけ。


全員の視線を感じながら、それを手に取った俺はガチャの画面を見た。


【無】


真白な画面にはそれだけがあった。


(何だろう?)


流石にいつまでも見つめるだけにはいかず、俺は緊張しながらも皆と同じように白いガチャボールを開けた。


ボールは手から消えていき、俺の目の前にも天恵スキルの青白い画面が現れた………


=―――――――――――――――=


君は天恵スキルを与えられなかった


=―――――――――――――――=


(やべえな……)


それ以外の言葉がないだろう。

色々考えることがあるが、まずはマシーンから離れた。


「俺にスキルはないみたいだ」


初めて学生たちと話した。

隠そうと思ったが、流石に怪しさがもう一段と増すだろうっと思って、素直に話すことにした。


(信じるかどうかは分からんけどな)


「マジか?ていうか日本人だったのか」


男子の一人が話しかけた。


「俺もよくわからんけどマジだ。そして、普通に外国人だ」


(どう説明しようか―って、あれ?)


本当に何ももらっていないと説明しようとしたが、いきなりガチャの上に大きな画面が現れた。



=――――――――――――――――=


これから異世界への転移が始まる。


=―――――――97――――――――=


そこにはこう書かれていた。

そしてしたの数字がだんだんと下げていた。


(本当に何の説明もないんだな、おい)


それを見た学生たちはざわついた。

泣いている子、笑っている子、静かにその時を待つ子。

この状況にそれぞれの答えを出している。


(唯一の大人だけど、出来ることは何もないな)


大人だからって責任を感じなくてもいいが、泣いている子たちを見たら何か力になれないかなと考えた。


カウンターが30になり、俺は全員に声をかけた。


「全員!この中に友達がいるならその人の手を握て!」


最初は戸惑ったが、学生の皆が動き出した。特に泣いていた子たちは友達と抱き合って画面を見た。


(少しは安心しただろう)


スキルのことやこれからのことを考えながら、俺も静かにそれを待っていた。



3


2


1



=―――――――00――――――――=






◇ ◇ ◇ ◇






あのカウンターがゼロになった瞬間に俺たち全員が眠りに落ちた。

その眠りから目覚め、俺はゆっくりと目を開けた。


「………………………」


言葉を失った。

ただ口をポカンと開けて、周りを見回した。


固い地面に眠ていると思ったら、それは土の上だった。

強い風が吹いていると思ったら、それは止める壁がないからだ。


だけど、それよりも、俺は今馬車で移動している。


(どうなっている!?)


少しだけ体を起こして周りを見た。荷物馬車か、あちこちに物がある。

音を立てないように隙間から馬車の外を確認した。


(草原?)


外には広い草原が広がている。違う隙間から見ても同じく、遠くにある山々以外に何もない。


そして、俺が乗っているこの荷物馬車以外に5つの馬車がある。


(学生たちは他の馬車にいるのか?)


シュッ


(え?)


荷物の中身を見ていると目の前にあの青い画面が現れた。


=―――――――――――――――――――――――=


これから開拓村へ向かています。

君はヘーベル村から仕事を探しに来ました村人です。

他の転移者はいません。

いい人生を。


=―――――――――――――――――――――――=



(へ?)


今日で何度目かの間抜けズラ。


(いや、これはもしかしたらあれか?勇者とか、魔物討伐に関わらなくてもいいっということ?自由に生きろ的な?)


魔物があるかどうかはわからないが、皆がもらった物騒なスキルから、敵くらいはあると考えてもいい。


(えっ!?俺の異世界転移、スローライフ系!?)


「お、起きたか!」


「え?」


いきなり馬車の前が開けて、声が聞こえた。

声をかけてきたのはハガーみたいなオッサンだった。


「何だ、寝ぼけているのか?もうすぐ村の場所につく。準備をしてよ」


「あ、ああ……はい」


(流れに乗ろう)


荷物の中から出て、馬車の前に座った。


「無茶をするなあ。仕事が欲しいならちゃんと言えばいいものを」


オッサンの話ではどうやら、この馬車はとある場所に開拓村を作るために町から出た。そこで俺は仕事をもらうために荷物の中に隠れたっと勘違いしているようだ。


(なるほど、あのメッセージの意味が少しわかった)


「すまない、故郷を出たのはいいけど、仕事が見つからなくて」


「必死のはわかったけど、もうこんな無茶をするなよ。で、俺はグレッグだ、お前さんは?」


「俺はギリェルメだ」


オッサンの名前は普通の名前だった。だから俺も元の世界の名前を使うと決めた。


(っていうか、日本語で話している)


それからマップを見せながら、グレッグさんから色々と聞いた。

ここはグリーンシュという王国で、そして今いる場所はその西側にあるのリックス辺境伯領という。


どうしてここにいるというのはどうやら、フロート伯爵という貴族が功績上げて、王からこの辺境伯領に土地を貰ったらしい。そしてその新しいフロート伯爵領に最初の村を作るために伯爵の傘下にあるエルヴィン男爵、今は見えないが、グレッグさんによると先頭の馬車にいる人が駆り出されたっと。


そして俺たちはその村を作り、第一村人になる。


(面白れぇ!異世界無双も何もないが、本当に違う世界にいるんだあ!)


カタカタと馬車に揺れながら俺はこれからのことに胸を躍らせた。


数時間前までは部屋で小説を書こうとしたが、今はそんな小説の中にいるんだ。


これからは自分の手で、この世界に自分だけの物語を作りたい!




つづく

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