58 水の都と神秘 2
「異界人が居る=国なのは解った。
でも、問題はオーディンのような神話級の存在か。」
「そうじゃの。そこは先ず、タジャマールとかいった存在であるとSSRと区分され、天界、冥界、地界、幻界のどの世界でもおる存在となるのじゃ。
いわゆる、排出されやすい下っ端じゃ。他にも細かく分ければ沢山あるがの。」
あまり増やされても困るので、そんなんで大丈夫なんですけどね。ただ解る事は、どの世界にもSSRという下っ端?は存在するということ。
まあ、それは何となく公国含めた潰してきた国々を見れば想像が付く。
「中でも幻界は特別じゃ。本来存在を許されないのじゃ。」
「許されないとは?」
「そう。迫害、差別などのように見えない概念や神、信仰のような存在しない物への願い。
怨念や希望といったあやふやな存在の世界じゃ。
誰もがそれを狙いガチャを狙うが、当たらず終いでの。英雄クラスはともかくじゃが、極稀に神が当たると言った感じじゃの。
まあ殆どが、滅多にお目に掛かれない存在ではあるがの。」
そんな確率なのね。割と捕らえている方ではあるが、どうやって捕獲してんだ?
今は・・・・アレ?ミネルヴァ以外心当たりないわ。
「異界人が殺し合う理由は解るじゃろ?」
俺と同じなのか。形が違うだけで願いや欲望か。果てまたは、誰かによって戦わされている。だけなのかな?
「そのために手段は選んでいられないからの。今も各国はヤケになってアレイスター様の首を狙っておる。」
「そ、そうだな。」
俺が死ねばコイツらは・・・・
オーディンはアレイスターの悲痛な表情から察する。
「間違いなく死を選ぶの。何かされるぐらいなら死ぬ方を選ぶ。ワシらは一連托生だからの。自分で死ぬことぐらいはちゃんと奥の手として隠しておる。」
「嬉しいような。重いような。」
「どちらでも良い。まあ、死なせはせんし、死にもせんがの。アレイスター様がお力を授けて下さったのだ。
愛をいただいた以上、ワシらが答えねばならぬ。」
決意とも取れる目に俺は少し居心地が悪くなる。自分の欲望を代わりに叶えようとしてくれている。
しかし、自分が動けない。動いても何もできない。そんな無力という罪が俺の心象を悪くする。
「・・・・それでじゃ。ガチャからしか引けない奴らの戦力はかなり制限される訳じゃ。
同じマスターを10人殺して10回じゃ。そう簡単に何十人も戦争を起こして殺す事は叶わない。
野良の連中を狩ろうにも、下手に他勢力とかち合えば隙が生じて戦争となる。」
「被害は最小限にして、力を得たいと。」
「まあ、そんな所じゃの。」
甘い汁だけを啜りたい精神はどの世界に行っても直らない奴は直らんのな。
「にしても、ウチはどうやって?」
「そもそもワシらは全世界共通の敵じゃ。
野良を狙うにしても、他勢力が来ようともまとめて潰して捕えれば良い。
逆に言うとじゃ、何してもワシらは戦争を回避できんしの。」
凄いやりたい放題なのは伝わった。圧倒的強さゆえの暴力か。
つか、しれっと多方向からいつでも喧嘩が売られると言うのは想像するだけで恐ろしいな。アテネたちが、前からどうも近隣中を荒らしまわっている理由が分かった気がした。
「だからこそ、戦争を、戦いを起こした分LRやSSRを引っ張って来れると。」
「国を滅ぼしておるのもあるからの。それぐらいの報酬が無いとワシらも人数に押される。
じゃが、野良や小規模の異界人のLR、SSRも狩り出しておる。
そうでもせんと、戦争以外に人を得る手段を失う。」
「でも、野良の奴らは評議国のような所へ逃げ込まないのか?」
「逃げたとして、その先は?
今度は籠の鳥じゃ。いや、入った瞬間に籠の鳥じゃぞ。戦争中にだって殺せる。評議国以外は取り込み殺して、SSRやLRを捕らえるじゃろうな。
まあ、大抵はLRやSSRたちごと殺されるがの。」
下手に抱えるよりは始末か。異界人10人殺せれば最低10人のSSRは引けるからな。
殺しすら効率かよ。
「そう考えると結構シビアな感じだな。」
「そうじゃ。この世界は非常に歪んでおる。アレイスター様の欲望による世界の更新はある意味良いのかもしれんの。」
「良いのか?」
「1つにまとめ上げられれば、戦争は打ち切れるしの。それに異界人が来たとしても対応可能じゃろ。懐に置くのもよし。調教するもよし。
ここは先に独立した方がいい世界なんじゃよ。」
独立が最後まで良い方向に転んだ試しがない気がするが。
しかしその話を聞くに、確かにそうかもしれない。民主を唱えようにも新たな火種を呼び起こす。
それを起こすのは他の異界人なのか、この世界なのか。それともオーディンたちと同じ神たちなのか。
そうなるくらいなら、初めから全てを1人で統治した方が良い。そう思ってきた。
「初めて欲望に利が叶ったのか?」
「叶わずとも叶えるがの。」
「それはありがたい。」
容赦ない神様です。
「ご歓談中に申し訳ありません。そろそろ目的地が見えて参りました。」
「おっ!凄いなぁ。」
つい見惚れた。
国が海側に一部建てられており、そこへ繋ぐ大きな橋が何本か見える。
国の周りには広大な海が広がっている。
その姿は太陽の影響か、宝石のようにキラキラと輝いている。
「綺麗じゃの。」
「神様でもそう思うか。」
「何を。ワシだって芸術や風景を嗜むぞい。」
「そうかい。それにしてもデカいな。大都市だ。」
「ここは貿易の盛んな国でもあり、他国との交流地としてもよく使われております。」
タジャマールの話を元にすると、つまり、そこを抑えれば我々の攻撃の手立てが増えると。
逆を言えば、向こうも総攻撃を仕掛けてくる可能性もあり。
「意外と諸刃の剣かな?」
「今の『エデン』よりはマシじゃろ。」
「そうだな。」
隣接している国や魔物が多かったし、アテネの策略によって今ようやく減ったが。
「あそこを支配している異界人はどんな奴だろうな。」
「異界人ではありません。正確に言うと、異界人はおります。
しかし、治めているのは違います。王族が国を統治しております。」
「という事は元々存在しておった国という事よの。」
「王国みたいなもんか。」
前にジャンヌが滅ぼしたスナイデル王国がそうであった。『勇者』という形で異界人を利用していた。
意外と異界人が作った国以外も存在が許されているらしい。別の形で異界人がいるのはあるけど。
「今回はどんな奴らが待ち受けているのやら。」
「ワシらだけでは心許ないがの。」
今は3人の旅人だ。
下手に事を構えても劣勢なのは火を見るより明らか。
大人しく観察でもしようかね。今回は幸い俺1人じゃないし。
「オーディンのお陰でなんとかやり過ごせそうだし。」
「ふん!任せるのじゃ!」
姉さん。大きな胸がバルンバルンしてまっせ。
「アレイスター様・・・・とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「そうだな。それはあかんな。
よし。俺の名はヨシンボだ。」
「は?は、はあ?・・・かしこまりました。」
「何か変な名前じゃの。」
オーディンはストレート、タジャマールは上司の発言に困惑しながらも同意する。
「うるさい。このくらいの方がここら辺は違和感ないの。
オーディンはディーン。タジャマールはマールで行こう。」
「ワシも安直な気がするぞ。」
「かしこまりました。」
オーディンの名前は割と有名だ。
タジャマールは・・・・念のためにね。
オーディンの方は異界人の人でも解るやつは解る。
「ヨシンボの方がバレ難いからな?」
「解ったが・・・・様を外すのか?」
「様付けたらおかしくね?」
「旅人の大富豪でどうじゃ?」
ただの女癖悪いクズですね。それ。
「ヨシンボ様。ここは私が従者、ディーン様が妻でどうでしょうか?」
「うむ。それを採用するのじゃ。」
「おい、さっきより悩まないやん!」
都合が良くなると即決即断しますね。
「ヨシンボ、ワシは愛してるおるぞ。」
「あ、ありがとう。ディーン。けどね、「ワシ」って言わないから普通はね。」
「ぬ。ならば、わ、私?・・・・・妾?」
そこ変に悩むのかよ。ま、良いや。
「御者の人には」
「問題ありません。御者もレッドウォルフの手の者を使っております。」
早く言えし。コソコソせんで良かったし。また骨格変える能力でも使ってんのか?
「マール。早いうちに報告をね。」
「申し訳ありません。以後気を付けます。」
スゲェ申し訳なさそうにしてる。下手したら自害しそう。
「そこまで気にはしてないからいいよ。
それよりも、橋を渡るけどその先に関所があるのかな?」
「関所は基本的に設けておりません。基本的に出入り中です。」
そんな物騒な。
「理由は簡単です。『真実の眼』を使える者がこの国に居るとか。」
「それ俺たち大丈夫?」
とんでも情報じゃないか。
「大丈夫じゃ。眼は遠距離だと掴める情報がたかだか知れておる。当本人に悪意あるか無いかの違いしか見分けられん。
妾たちは観光に来ている。
なら、引っ掛かることもないからの。それに、妾を舐めるでない。」
妾なのね。
「ディーンがそう言うなら安心かな?」
「まあ、近距離で見られたら終わるがの。」
それ結構不味いね。
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