54 アレイスター冒険記 4
さてさて、これはオーディン様の来降前の話
「ここは元々潜入のために経営していたアジトって事か。」
「左様でございます。」
ふむ。なんか潜入調査っぽい。
「道理で旅先の金が貰えた訳だ。」
「それは何よりです。
ですが、直接国と国のやり取りや輸入輸出の関係を作れている訳ではございません。
ですので、稼げる金額はそう多くはございません。」
なんか嫌な事聞いたわ。
「そ、それはす」
「ですが!」
「あ、はい。」
遮られる。
「それは全てアレイスター様のモノでございます。決して、臆される事はございません。この身含めて全てが貴方様のモノでございます。
我々はアレイスター様と共にいつまでもおります。」
「あ、ありがとう・・・・・ございます。」
いや、逆にそこまで言われると臆するよ。
「とんでもございません。
ですので、どうぞこのタジャマールをなんなりとお使い下さいませ。」
「ああ、うん?というか、その姿?」
「ええ、これは擬態です。
私のスキルを使い、元の肌色や性質を変化させております。」
確かに身長は高く、ピアスやイヤリングといったアクセサリー類は多い。
が、しかしだ。刺青無く、肌色が普通だ。
「これはすごいな。俺たちの国は確かに変色しかいない。それを上手く隠せれば。」
「その通りでございます。この美しい装飾類はアマゾネスや他部族も付けておりますがゆえ、問題ないかと。」
「レッドウォルフはいつもそんな感じなのか。」
「はい。」
「うん?じゃあ、あのお婆さん」
「あれは擬態を超えた変化です。」
「変化?」
「つまり、肉や骨といった身体の組織を完全に変える事ができるスキルです。」
すごっ!潜入には完全にうってつけや!
「だからか。それだと尚バレないな。あれ?結構優秀だったの。」
レッドウォルフは元暗殺者を片っ端から狩り出し、堕とし尽くした集団だったが。案外いい拾い物だったのかもしれん。
「皆んな綺麗な肌に身長や刺青とかピアスと豊富だったからさ。そこまで派手だと。とは思ったが・・・」
「問題ありません。
むしろ、その美しさを与えていただいたのに隠さねばならぬ方が堪えます。」
なんでや。いや嬉しいけど。
「世界も狭いと言えばいいのでしょうか。肌の色が違くとも受け入れぐらいはできるでしょうに。」
ま、白を消している俺も変わらんがね。
「それよりも・・・・えーと、最後に。」
「はい?」
「タジャマールの元は?」
「ああ、私は元『砂丘国』出身の者でございます。
元は小柄で胸もあまりなく、貧相な育ちでございました。暗殺の部隊なので、使い捨ての奴隷として日々こき使われておりました。」
しれっととんでもない事言ってますよ。
「え、えーと。大切な人とか」
「ええ、おりました。同僚で恋人が。」
やってんねー。これNTRだよ。俺もいつ食べたのか記憶ないが、やってるわこれ。
背徳感を感じるのはなんというか、いけないことをしているようでゾクゾクくるが、それはあくまでも分かっていてやってるのと、後で知るのとでは訳が違う。
「何か・・・・・すいません。」
「!!ど、どうして謝れるので!?
むしろ、こちらが感謝しております!」
何で感謝やねん!
「私は大切な彼氏がおりましたが、この身体を経てから世界が変わりました。今まで自分が如何に愚かで矮小な存在であったのか。それを知りました。
そして、アレイスター様と1つになった時、更に全てが満たされてました。アレイスター様ともっと共に居たい。そう願うばかりです!」
手を握り熱弁するNTRされた女子です。
「で、でも帰れるならさ。」
「いえ。帰るも何もこの手で殺しましたので。」
ふえ?
「構いません。アレイスター様との出会いで私は変われました。愚かで矮小な私から大きな私へ。彼はそんな私でも愛してる。
などお楽しみという愚かな事を言っていたので、つい殺してしまいました。」
あかん。知らない間に殺人に手を貸してた。NTR殺人はかなり罪が重いぞ。
「殺した瞬間私は後悔しました。」
お?
「何故もっと苦しめないのか?と。私の罪も囁いておりました。アレイスター様との時間と彼の時間は比べるまでもないと。
どちらかというと、彼と過ごした時間が如何に無駄で私という存在が汚されていたのか。」
やばい。何言ってんのかもう分かんない!
「私は大きく後悔しました。アレイスター様と過ごすための時間を返せと。昔の自分を殺してやりたいと。」
どんどん目の色が黒くなってるぅーー!召喚士だけにヤンデレを召喚してしまう!
「ま、お、落ち着きたまえ。」
「かしこまりました。」
「何があったかはいいんだ。これから何をするのか。が重要だからね。」
NTRしといて何言ってんだ俺。
「流石でございます。
きっと、私以外の者たちも救われます。」
後何人いんのかなー?そう言えば前に、未亡人や人妻が居るとか言ってたぞ。数えらんないぐらい抱えてんのに、属性まで付けられたら敵いませんや。
「はあ。とりあえず、外出ようか。」
空気が重いというより、俺の精神が重い。
「ですが」
「いやね。このまま指を咥えてもしょうがない。行ける所まで街を把握しないとな。」
早く外の空気を吸いたい。
「かしこまりました。」
そして俺たちは宿を出ると・・・・・・凄い囲まれてるし。フードしてるけどもう嗅ぎつけられてる。
流石は冒険者国家だぜ。じゃなくてさ、外も内も重い事ばかりだよホントに。
そして、鬼ごっこが始まって今に至る。
「オーディン!」
「ワッハハハハ!よかったの!」
「オーディン様っ!」
「解っておるわ。『タイムストップ』」
世界が静止した。
「ほれ。こっちじゃ。」
オーディンは裏路地へと案内してくれる。
「こんなもんかの。ほれ『動け』。」
そして時は動く。
当然いきなり俺らを見失った彼らは右往左往している。
「今のうちに離れるか。」
「かしこまりました。」
「うむうむ。」
すぐさま3人で街外れへとテレポートした。
今の今まで黙ってたが、なんか凄いことのオンパレード。
「オーディン、使えたの?」
「まあの。」
「オーディン様。助かりました。」
「ええわい。気にするな。」
照れ照れやないか。輝かしい黄金肌が一部赤くなった。
「ナイスタイミングというのか、どこからか眺めていたのかというのか。」
「ビンゴじゃ。」
当たりなのかよ。楽しんでたろ?
「ワシはこうも活躍しておるのにアレイスター様が居らんとなってはやる気が出なくての。
折角じゃし、愛してもらおうかのと。」
ここ外なんだけど!
いきなりスキンシップを取ろうとグイグイ迫り来る。
「お、オーディン様。そのー、今は。」
「はあ。解っとるわ。先にあの国を滅ぼすかの。」
杖を冒険者の国へと向けた。
「ちょっ!ちょいちょい待ち!」
「アレイスター様?」
「あの街はそんなに悪い気はしないし、別にこちらへ危害を加える事もないから良いんじゃないかな?」
「まあそれもあるがの。」
オーディン様露骨に納得いかなそうである。
「アレイスター様の仰る通りです。
別にあの国は裕福でもなければ、王がいる訳ではありません。冒険者は自由ですから。
そう考えれば死にに行くような選択は1番取らないかと。」
「ワシはアレイスター様を追いかけ回す国は死ねばいいと思うがの。」
バーサーカー思考なのは何で?だから不満だったの?
「今はいいんじゃない?」
「ちぇ。アレイスター様の命ならしょうがない。」
「ほっ。」
神の裁きは後送りにできた。
「けど、お陰であそこへは帰れないな。」
「如何致しましょう。」
「んにゃ、先へ進むさ。何たって世界を見る冒険だからね。」
「かしこまりました。では、お供致します。」
「前の俺なら断っていたが、そうも言ってられないしな。よろしく頼むよ。」
「ワシも行くぞ。」
「え?そ、その格好と肌で?」
「ほれ。」
オーディンの魔法で肌色と格好が変わる。
「どうじゃ?旅人っぽいじゃろ。」
「確かに肌も普通だし、露出もない分、刺青や装飾も見えにくい。これなら行けるな。」
「じゃ、これで決まりじゃな。」
ここまで上手く合流や騒ぎが起こるから、誰かに誘導されてる気がするけど。
フッとアテネの顔が浮かぶ。
ま、爪の甘い俺が悪いんだ。アテネにはむしろ助けてもらった。って事かな。
「そしたら次は。」
「この方角なら『アクアリウム』水の都へ参りましょう。」
おおーー!水の都!
「よし!決定だな!」
俺の旅はまだ始まったばかり!多分?
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