53 ティータイム

 アレイスターが騒ぎ起こしている間の『エデン』


「そうか。無事にお救いできたのか・・・優秀な犬を配備して置いて良かった。」


「おいおい、折角私の部隊が見つけたのにその言い方はないだろ?こっちだって人数少ないんだぜ。」


「ほう。少なければヘルメスはアレイスター様の護衛には割けないと?」


「へぇ〜・・・アテネはいつの間か自殺願望者になってんだ?」


 ヘルメスは珍しくその怒りをアテネへと向ける。


「・・・・・・・・」


「はあ・・美しくない行為は控えては?まだ脳筋アーレスたちの方がしっかりと軍備を熟してよ。」


 アフロディーテ、アテネ、ヴィーザル、ヘルメスは小さな庭園にてティータイム中であった。

 そのすぐ近くではレイレ、スカーレットが待機している。


「というより、アレイスター様の無事が確保できたのは喜ばしい事でしょ?だったら次の段階は?」


 少し苛立つスカーレットがアテネへ問いかけた。

 自身の主が単独である上、危険に巻き込まれている。その事実に胸が張り裂けそう想いであったため。(アレイスターによる失態である。)


「スカーレットにしては珍しいですね。

 アレイスター様は恐らくこのまま進まれるでしょう。それはそれで問題ありません。

 むしろ、私たちは喜ばしい事にアレイスター様からチャンスをいただきました。」


「チャンス?ですか。」


 流石のレイレはアテネのその考えを訝しむ。


「レイレもか・・・解らないかい?

 アレイスター様はただ旅に出られたのではない。私たちが何時迄も行動が遅いので、「席を空けている間に何とかしろ」という事です。」


 当のアレイスターは何も考えていない。


「ふーーん。ま、私は気付いていたけど。」


 ヘルメスによる謎のマウント。


「本当かしら?美しい私は失念していたわよ。

 ただ、アレイスター様には確かに申し訳ないと思っているわ。我々のこの体たらく振り。」


 ヴィーザルは興味なさそうに花をいじる。


「そこは・・・・・・そうですね。」


「政策を推し進めてはいましたが、どこか納得されていない様子でした。

 LRももう1年は堕とすのに時間が掛かる予定でしたが、それを半年もいかない程に自ら縮めた。」


「その時点で。って感じだけどね。

 遅過ぎるってさ。マヌケな話だよ。これでも神様なんだけどね〜。」


「けど、スイッチは入った。みんな。」


 ヴィーザルが初めてその口を開く。


「驚いたわね。貴女が口を開くなんて。」


「ま、その通りだからね。

 という訳でアテネ、作戦はもう進めてるんでしょ?」


「ええ。ロキとウトガルザは先に行動に移してます。

 トール、オーディンも既に移動中です。今残っているのはゼウス、ポセイドラ、アポロン、アーレス、ベローナ、イザナミ、ミネルヴァ、ヘパイストス、アナシン」


「それと、今ここにいるメンバーとデザイアたちね。」


 スカーレットが最後に付け足した。


「ハーデス、ガイア、ジャンヌは仲間外れ?」


「いや、彼女たちは彼女たちの仕事があります。

 それと、今後はアレイスター様の護衛でLRを1人付けます。流石にSSRでは不安過ぎる。」


「アテネに賛成だよ。という訳で私」


「ふざけろ」


 ヘルメスのしれっとした便乗を見逃さないヴィーザルの殺気が空気中に漂う。


「全員護衛に付きたいに決まってるわよ。」


 アフロディーテは殺伐とした空気を変えようと、その本心を敢えて明らかにした。


「オーディンたちに聞かれたら大変ですよ。気を付けて下さい。」


 レイレもこのカオスな状況にやや慌てるのであった。


「チッ・・・・・ですが、着けねばいけないのもあります。

 よって、ここは・・・・・・面が割れていないヴィーザル。」


「・・・任せろ。」


 フンスと大きな胸を張った。


「ふんっ!ま、私らは確かに攻めたり、面会したりと忙しからね!?

 それに捕らえて堕とした奴らもいるという始末だし。と考えるとだ、ヴィーザルの寡黙さが生きたね。」


「悔しいですが、美しき私が側に行ってしまえば返って目立ってしまう。」


 そこからは何とも言えない雑談が始まった。


「それで?続きは?」


 ヘルメスはいい頃合いで再び話を戻す。


「ええ。LRの存在を既に何人か確認していますが、野良もおります。下手に動くより、やはり攻めれるメンバーと守りのメンバーを固定で編成する必要があります。」


「でも、私たちに勝てるLRなんているのかしら?」


 アフロディーテの疑問は最もである。


 神を映すようにこの世界へ現界した彼女たちに太刀打ちできるのは、英雄クラスでもほんの一握り。もしくは同じ神が対抗できるとされている。

 だがしかし、アレイスターから特別な能力を授かった彼女たちは、普通の神では倒す事ができないレベルまで昇華されていた。


「LRの存在で同等のレベルなら問題ないわね。美しく殲滅できますが。もちろん相性もありますけど。」


「その通りです。

 それにこの世界にはSSRからLRへ進化する奴もいる。魂を消化する事で進化する方法もあれば」


「別の方法もあるのね。」


 スカーレット、レイレはつい最近LRへと進化を果たした。

 だが世界は広い。他の方法もまた存在する。


「ナナカのLRはそうらしいが、どうしてそこへ至ったのかは解らないらしいね。」


 ヘルメスはやれやれと語る。


「そこは今あまり問題ではありません。どちらかというと、LRを堕とす必要があります。

 アレイスター様の力抜きで。」


「それは相当骨が折れる。私は個人的に調教して欲しいけどね。」


「ヘルメス、殺しますわよ。」


「アハハ・・ディーテ美しくないよ。」


「もう!貴女たちはすぐに!」


 スカーレットも痺れを切らす。


「スカーレットも落ち着いて下さい。」


「アテネ、それで?」


 ヴィーザルが続けるように促す。


「LRを堕とすのに時間が掛かるのはアレイスター様を知らないから。なのでしょうがないですが、そこは時間を掛けます。

 フレイヤのペットも使ってじわじわと壊します。そこはどうしても時間がかかります。

 ですので、その代わりに今いるSSRをLRへと昇華させます。」


 つまり、追いつかない分は人の命で賄うという意味である。


「人数をそこで補填する方が早いね。」


「良かったですわね。スカーレットはともかく、貴女たちに仕事が更に回りそうで。」


「皮肉でしょうか?」


 レイレはプライドをアフロディーテによって刺激される。


「レイレ・・・・貴女が落ち着けって言ったでしょう。」


「あ・・・・・・」


 ヘルメスがフォローを入れた。


「いいよいいよ。ディーテが悪いからさ。」


「む。」


「ですから!よろしくお願いしますよ。」


 アテネはこれ以上話が拗れるのも厄介と感じ、話を一度区切りづけた。


「次に攻めるのはもちろん軍備チームです。」


「以下略だね。」


「そう。で、守備は?」


「守備はアポロン、ゼウス、オーディン、ミネルヴァで十分です。

 いざとなればハーデス、ガイアを使えば良い。それにロキたちもその頃には終えて帰ってくるでしょう。」


「ふーーん、んで?私たちは?」


 ヘルメスは自身の役割を理解している。だからこそ、改めてアテネへ問いかける。


「引き続き情報の収集とアレイスター様の護衛に人数を割くように計らえばいいです。」


「なんか適当くさい・・・・・」


 納得はいかないが、節々と承知したのであった。












































 オーディン


「うむ。蚊帳の外も悪くない。が、しかし。」


 オーディンは自室にあるテーブルで水晶を照らす。その水晶にはアレイスターの姿が映し出される。


「お、まだ『フィルディン』にいるのかの。うーむ・・・・・・ならば向かうかの。」


 オーディンは立ち上がり、魔法を使い一瞬で支度を済ませる。


「よし!それじゃ、テレポートじゃ。」


 オーディンの輝かしく光り消えていく。


 そして再びアレイスターへ。


「アイツが魔神だぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「殺せぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「マジでぇぇぇぇぇぇ!!」


「舌を噛まぬようにお気を付けて下さい!」


 俺はまたしてもタジャマールの肩に担がされた上で逃げている。そして追われております。

 そんな今日も健気に生きております。恨まれに恨まれまくってね。


「こんな簡単にバレます!?」


「アレイスター様は姿を変えられない上、既に手配書がここも出回ってしまいました。」


 今までは出回っていなかったの?冒険者国家は本当に自由で素早いですね!


「けど早過ぎない!?」


「上に誰かが告発したのでしょう!」


「そんなに俺嫌われてたの!?」


 ぴえん。もうお前らなんて嫌いだ!知り合いいないけど。


「うぉ!!」


 突如、タジャマールの逃げる先で輝かしい光が発光したのであった。 

 思わずタジャマールや周りも立ち止まった。


「くっ!こ、この光・・・まさか!」


「まさかじゃ!」


 神々しい輝きから更に美しい金の輝く肌が見える。


「オーディン!どうして!」


 つーか、アンタもテレポート使えんのかい!

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