45 動乱の時代へ 3

 最後にミネルヴァさんだが。


「主人様。この無知無能な愚か者に愛を注いでいただき誠に感謝しております。

 愚かな事に、今まで私は無駄な人生を歩んでおりました。

 しかし、主人様に出会ってから世界が変わりました。」


「そんな大袈裟な。」


 ミネルヴァ神が無知無能なら俺は塵芥のゴミみたいなもんだが。

 つか、口上長いんだが。


 他の3人に比べれば凄く大人しい。


「主人様。私の力を全て貴方に。」


 そんな畏まるミネルヴァは青色の肌に髪はシルバーと青の2色でショートヘアー。

 刺青は多数身体から顔へと刻まれている。


「凄い派手になったな。」


 4人を改めて見渡すと凄い絵面である。


 これ、俺が変えたのか?歪んだ欲望が人を変質させた。

 だが何故だろうか、凄く気分が良い。


「満たされてるのかい?」


「満たされてる。驚くほど歪んでいるのに。」


「フフ、そうだよね。それでこそアレイスター様だ。この4人もきっと幸せだ。」


 悪の親玉みたいな感じだけど、不思議と自分に罪悪感を感じない。

 むしろ、清々しい。


「そうだな。・・・・お前たちは俺の物だ。」


「「「「はっ!全てをアレイスター様に!」」」」


「さて。団結した所で、どこへ攻めようか?」


 フレイヤがジャンヌへと問いかけた。


「既にアテネ様が目星を付けているのでは?」


「ま、そうだけど。君の意見を聞いておこうかなって。」


「はあ・・?初めに帝国を見せしめに潰した方が良いかと。

 最大の理由はアレイスター様を謀ったこと。まあ、後は世界でも名だたる国を潰す事で、各国が出づらくなること。」


 後の理由が正式な方ですね。


「他にもあるけど、アテネと同じ。なら合格だね。」


「舐めるなよ?」


 そんな妲己はフレイヤを睨み付けた。


「私はアレイスター様の側近だからね。アレイスター様の事は何でも解る。

 。」


「アレイスター様。彼女を天へ還しても?」


 ジャンヌさんもお怒りだ。


「私の暗殺を間近で見せれるとは。」


「早速イジメがいがありますねえ。」


「止めぬか!!」


 5人の中央に雷が落ちる。


 この綺麗な雷はしびれびれびれ。


「ゼウス。」


「はい。貴方のゼウス、ただいまお側へ。」


「呼んでない。」


 あかん!フレイヤさんが更に不機嫌に!


「アレイスター様をお迎えに上がりました。我と共に大ホールへ参りましょう。」


「別に私を呼べば良いだろ。」


「我が会いたいのだ。」


「ストレートだな。嬉しいけど。」


 俺としてはね。周りは余計に殺伐とした気がするけど。


「行こうか。(逃げよう)」


「かしこまりました。」


「私も行くよ。」


 ゼウスとは反対方向に隣へやってきた。


「な。」


 見えない戦いが始まっていたようだ。

 そんなジャンヌたちも後から続いて付いて来る。


 そんなこんなでメラメラピリピリしつつ『エデン』城内 大ホール


「アレイスター様。この『エデン』を作り、半年が経ちました。

 ここからは我らのターンです。」


「ターン・・・・・攻めるのか。」


 アテネを中心にLR全員による会議を始めたのであった。もちろん、レイレたち新生上限突破LR様もいる。


「はい。待っていてもジリ貧になるだけかと。

 それに、この大侵攻のキッカケは帝国のせいです。

 あの女狐が評議国と関係があったからです。放っておいても後々面倒になります。」


 確か帝国の異界人ソヨだったか。


「帝国自体かなりの強国です。その帝国を陥落させれば。」


「じゃがの。」


 オーディンが口を挟んだ。


「あの帝国、そんな簡単に落ちるのかの?」


「前に隣国へアタシら3人で攻めたが、確かにあの国は何かあんぜ。まあ、今の戦力で攻め入れば余裕だろうが。」


 トールとロキ、オーディンは見せしめで隣国潰してたな。

 確か、一応そのお仲間さんたち(女子限定)は全員堕としてたような。あの男のマスターさんはどうなったんだか。


「けど、そんな大人数で向かえばこちらが手薄になる。」


 いくらLRが増えたといえど、人数としての規模はウチの方が小さい。

 それに『監獄』からあまり人を割きたくない。アテネの懸念点は理解できた。


「全世界が敵だと動きづらいな。」


「守る事は容易だけど、攻める方が難しいね。人数が分断されてしまう訳だから。」


 フレイヤとゼウスも総指揮官として理解していたようだ。


「して、アテナよ。我らはどうすればよい?」


「指を咥えて見るつもりはありません。帝国へ攻めるのは攻めます。

 ですが、攻め方があります。何も直接攻撃できずとも良いのです。周りから崩していきましょう。」


 周りね。帝国の前にあった王国・・・・確か『レッドテイル』?は潰した。でも、アレは・・・


「今、帝国は評議国以外にスペリメル王国、ダシー王国、レガシー法国、カミネ皇国と4国ほど支援を受けています。」


 ヘルメスが言うのだ。確かな情報だ。

 しかし、あの人5国とも上手く関係を構築していたのか。道理で優秀な匂いがした訳だよ。


 異世界を怨む割には、現状を何よりも理解して適切に動いている。


「俺と比べれば酷い差だな。」


「ハハハ、その通りでございます。アレイスター様と比べれば天と地であります。」


 ウトガルザさん。きっとそれは意味違うし、えらくご機嫌良いのでは?


「えーと。ちなみにどっちが。」


「うむ?アレイスター様が天であり、地べたを這いずる虫ケラが帝国の姫だよ。」


 やっぱり。そこ!うんうんじゃない!


 ウトガルザの言葉に周りが無言で頷く。


 マネジメントで上手く動かしてはいるが、肝心の俺に特別な力がない以上、決定打に欠ける。

 いや、特別な召喚ならあるが。あまりにも他力本願である。

 しかも、なんかこう。召喚を急かされているような。召喚以外にも仲間ができる辺りから、なにか知らない力が働いている?


「それで?アテネはどう考えてるの?」


「はい。初めに王国を滅ぼすのが先決かと。

 既にここ半年で大分周りの牽制に役立ちました。そんな頑張った彼らにはご褒美が必要です。」


「へえ、ご褒美ね。それは楽しみだね。」


「ロキは行かせない。

 今回、攻めるリーダーはジャンヌ。貴女よ。」


「・・・・・解りました。」


 ジャンヌで攻めさせるか。つか、ご褒美基準が分からん。

 しかもそれをスペリメル王国の勇者たちへぶつけるのか。


 ニヤニヤと悪質な笑みがちらほやと伺える。


「ジャンヌ。」


「アレイスター様、お気になさらずとも。

 むしろ、この度のお話は非常にありがたい事です。愚かな私の過去を払拭する良い機会です。

 私はアレイスター様の雌豚だと、主人ズラするであろう奴に知らしめて参ります。」


 何か趣旨が違う気がする。


「部下は」


「元王国所属で固めてます。」


 わあ凄い下衆な考えだ。


「作戦に良いも悪いもない。あるのは使えるか使えないか。

 ま、気にしなくてもよい。アレイスター様はアレイスター様であれば良い。

 後は私らの仕事ですので。」


 テュールは俺の心情と葛藤を察したようだ。


 本当に頭のいい軍師さんだ。

 戦争に強いのではなく、人という生き物を考えられる人なんだ。


「ありがとう。テュールは優しいね。」


「なっ!そ、その顔は・・・・・が、我慢できん!今日は小生がいただくぞ!!」


 テュールさん!!


 テュールが大胆に全力で抱きしめてくる。無力な俺はやられたい放題です。

 勢いと力があるせいか、背骨が痛い。


「何をしておる!!」


「我のアレイスター様だぞ!」


 まずい!全員から殺気が!


「ちょっとちょっとちょっと!あーーーー!」


 早くも小さな部屋でプチ戦争が始まった。
































 ジャンヌ


「ああ〜〜〜!神よ!神よ!アレイスター様!私は貴方様を思う度に・・・・・・」


 月明かりの照らされる夜、ジャンヌは1人教会で祈っていた。

 かつてもそうであった。昔の彼女も祈っていた。勇者を愛していた。


「愚かな私に今!汚名をすすぐ機会を与えて下さった!

 感謝します。我が神アレイスター様。

 これが終われば、貴方様のお側で永遠の業火を。」


 ジャンヌの瞳には赤い炎が映っていた。


「ジャンヌ様。」


「・・・・・・・・」


「ぐふっ!!」


 ジャンヌは呼び掛けた自身の兵士を振り向いた直後に蹴り飛ばした。

 その兵士は以前、アッシュという名前で仲間であった人物である。


 そんな倒れ伏した彼女の頭を容赦なく踏み付ける。


「何だ?アレイスター様へのお祈りを邪魔するほど必要な案件であったのだろう?」


 聖女としてのジャンヌはもう居ない。そこには歪み壊れた1人の狂女の姿であった。


「じゃ、ジャンヌ様・・・・ご、ご報告・・です。ぐっ、軍の編成、が、完了・・しま、した。」


「そうですか。」


 ジャンヌは足を頭から離す。


「貴女・・・・・確かアッシュ?でしたね。」


「は、はい。」


 ヨロヨロと立ち上がる。


「そう。貴女は今回仲間であった人たちを殺しますが、抵抗はありますか?」


「い、いえ。全く。アレイスター様のために。」


 アッシュの顔もまた本気であり、汗一つ垂らさない。


「そう。本気であったのならいいです。

 躊躇う方が他にもいらしたのなら、私が殺します。

 アレイスター様のために活躍できない者も殺します。アレイスター様へご奉仕できない者も殺します。良いですね?アレイスター様のためにならないのなら殺します。1秒も待ちません。」


「かしこまりました。」


「では、参りましょう。王国の虫ケラを潰しに。」


 悪魔の聖女が進軍を開始した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る