Destruction＝Install

３８ 責める者

「あれは魔界のケルベロス。」

「やっぱ魔界か。」

「それを所有し、コントロールしている者がいた。察するに、この死の霧から特定すると、『冥王神ハーデス』か。」

「正解だとも。『ガブリエル』君。」

　拍手をしながらハーデスはケルベロスの頭上から姿を現した。

「こちらも観察されていましたか。」

「お互い様だね。『真実の目』は天界の中でも翼を宿した者に与えられる力とは聞いている。

　だからこそ、ある程度は絞れたよ。」

「逆にお前は俺と同じ死を司る事もか。」

「そうだとも、アズライール君。私と君はほぼ同胞・・・・みたいな者だ。」

　そう言われたアズライールは不機嫌な表情へと変わる。

「『真実の目』がなくとも解るか。流石は冥王神だ。」

「お褒めに預かり光栄なのだが、そろそろ遊ぼうかね？」

　ケルベロスが唸り声を上げる。今か今かと、戦いを待ち侘びている。

「いいのか？我々がここでもたつけば、後ろから更にLRの援軍がやってくるぞ。

　お前たちは前線にも人数を割いている。

　なら、これ以上騒ぎを大きくしてもそちらが損をするだけだぞ？」

「ふむ・・確かに。

　しかし、主人を守るのが使命でね。だからと言っても2人を一気に相手できるほど、そう自惚れてはおりますまい。」

「あらあらあらあら。」

　今度は奥から別の女性が現れた。

　褐色肌のお嬢様ガイアである。

「あら、天使さんがお相手かしら？」

「古の女神だと！？」

「『大地の聖母ガイア』・・・・・・・これは切り抜けられるか？」

「大地であれば、やりようはあります。

　ガイアは私が。アズライールはケルベロスとハーデスを。」

「了解した。」

「貴女はどうしてここへ？生命を愛しむ身分としてはさぞ辛いのでは？」

　ハーデスはガイアへ問い掛ける。流石のハーデスもガイアが来るとは思ってはいなかった。

　死や地獄を象徴する者、自然と生を象徴する者と両者は極端な存在であった。

「ここは悪趣味で下劣な場所ですこと・・・・アレイスター様はお優しい。そんな下々の民を己の民として新たにここで浄化し、迎入れて下さっている。

　穢れた者たちも新たな生を宿し、共にこの大地で生きる事ができる。」

　理由になっていない気がする。とアレイスターならそう思うであろう。

「ほう。矛盾は少々あるが、それでも生まれ変わりを主張するか。

　では、この者たちにも教えねばならない。」

　ハーデスは問い掛けに答えてはもらってはいないが、元より話が通じるとも思ってはいない。

「そうね。生命は皆等しくアレイスター様から受け取られるべきモノであると。」

　死の天使と死の神、水の天使と大地の聖母による監獄防衛戦が始まった。

　そんなアレイスター

「！！！」

　いきなり建物に衝撃が走った。

　ヘパイストスが作った建造物なだけに頑丈ではある。

　だが、その頑丈な建物が大きく揺れた。

「そんなに相手強いのかよ・・・・割と召喚士じゃないと無理ゲーじゃないの？」

　自分の野望を進むと決意したまでは良い。

　だが、冷静に世界を相手にする事を見つめると、凄く厳しい状況下であるのを再認識してしまう。

　嘆いてもフレイヤによる宣戦布告のせいで今更だ。もう少しだけ考えてから行動した方が良かったかもしれない。

　そんなたられば不安の影響により、更に深く考え込んでしまう。

「最初は召喚だけでとか思ってたけど。いつのまにか、そっち系の道に入ったな。

　堕転・・・か。俺自身の好みの問題もあるが、世間ではウケてない。前世もマイナーな話ではあったし、差別的目線はこの世界も同様か。」

　ただそれでも生まれ変わり、退屈な人生生活からおさらばできた。2度も同じ過ちを繰り返したくない。

　であるなら、この決断は俺にとっても最大の選択であった筈だ。なら後悔するな。歩くのを止めるな。

「ただひたすらに突き進むしかないか。」

　アレイスターの目には覚悟の火が灯る。野望と欲望という濁った火が。

　しかし、建物は依然として揺れる。そんな彼の瞳と決意も揺れる。

　アテネ、イザナミ

「アレイスター様は勝利のみをご希望とされている。そして、世界を我々と同じ姿で更新されようと動かれている。」

「？？どうしたの急に？」

　アテネにイザナミが付き添っていた。

　そんな不意な一言にイザナミが疑問を抱く。

「今アレイスター様の決意が聞こえた気がした。私は特に『魔化』を授かった！からな！」

「そうね。羨ましい限りよ。」

　ややジト目するイザナミ。

「だからこそ、主人の決断に応えねばなりません。」

　アテネの色々なキャラ崩壊にため息をつく。

「そうね。だからこそ、私たち2人だけでこの王国『スペリメル王国』へやってきたのよ。」

「勇者を生み出す先進国に大打撃を与えましょう。

　そして、隣国との戦時下を増やして差し上げましょう。戦争を周りが行えば行うほど、こちらに利があります。」

　アテネの手には弓が形成される。

「鳥は羽ばたき、そして鳥は巣を作る。その鳥は全てに安らぎを与えべく、空への彼方へと翔る。」

　彼女が放った矢は途中から鳥へと姿を変える。その鳥は徐々に空中で分裂を始める。

「この手はアルテミスの方が上手だけど、私は私なりに攻め方があります。それに。」

　アテネは鎧を換装する。

「この『アイギス』と新たな力がある。」

「私居る必要あるの？」

「イザナミはオマケです。」

「ハッキリと言いましたね。」

　いつか殺すと心に留めるイザナミ。

「貴女の誘引する力は居るだけで効果があります。」

「ま、そうね。アテネの戦いを観察させていただこうかしら。ヤバそうなら参戦するよ。」

　イザナミも腰にある一本の刀を握る。

「その時は・・・・・・・」

　王国に騒ぎが起こった。

　警報が鳴らされ、市民の声が町全体へ響く。

「さて。開戦の狼煙は上がりました。」

　女神による一方的な進軍が開始した。

　オーディン、トール

「何でお主なんじゃ。」

「こっちは何でババ、っいでででででえ！」

　トールのほっぺを摘み引っ張る。

「この口は災いを呼ぶの？」

「いっでぇ〜〜〜！て、テメェ！」

「ロキめ。共和国へ行きおって。」

「はあ。まあ、見るからに面白そうではあるしな。」

　オーディン、トールは暇そうに城にて待機していた。

「つい最近、国を一つ潰したような・・・・まあ、そんなのは些細な事かの。」

「いきなりなんだよ・・・・まあ、現役の頃に比べればな。」

「まあの・・・・あの時は滅ぼし過ぎたの。そう思えば、今度は作り直しという訳か。その方が神らしくて良いの。」

「確かにな。アタシはアレイスター様のために動くだけで理由は十分だが。」

「なぁーにお主だけ気取ってるんじゃ！ワシもそうじゃし！」

　オーディン自慢の魔法の杖でトールの頭をペシペシと叩く。

「だぁーもう！解った解った。早めに終わらせようぜ！・・・・だからロキとが良かったんだよ。」

　あまりのウザさにトールは小さくボヤくのであった。

「それじゃ、やるかの。」

「アタシの一撃でアイツらをぶち壊す。」

　トールはその巨大なハンマーを片手に持つ。

　そして、空が曇る。公国城の周囲には複数の暗殺兵が潜んでいた。

　そんなトールは周囲の建造物なぞお構いなしにハンマーへ雷を落とす。

「いっくぜぇぇぇぇぇぇぇ！！『雷の審判』！！」

　容赦ない一撃が巨大な城の周囲へと撃たれる。

　雷の光が国全体を包む。

　少しずつ少しずつ光が止んでいく。

　すると、撃たれた周囲は一瞬で跡形もなく消し炭になってしまった。建造物や必要な素材まで。

「ふぅ。久々にドカンと1発撃てたぜ。」

「お主・・・・・・」

「あ？・・・・・・・てへ。」

「何しとるんじゃ。」

　自国が1日足らずで崩壊しかけたのであった。

　アレイスター

「うーむ。やっぱ意外といい戦いか？それとなんか嫌な予感も感じるぞ。」

「うんうん。」

　ヘパイストスさんが俺の護衛に付いてくれた。適当な相槌もさることながら。

「あんな戦い方が俺たちにできる訳ないわ。

　けど、召喚士は退屈だな。俺も前線とかで役に立つ職業とかスキルが欲しかったぞ。」

「うんうん。」

　適当か！ヘパイストスは会話が苦手なのは知ってる。

「けど、死と生は相反してる。」

「反する？」

「生に死を与えられる。でも、死から生を与えられる。」

　なるほどね。強弱はないと。

「うーーーーん。それって五分五分だよね？」

「そうなる。けど、ガイアは・・・・」

　ガイアは？・・うん？何の話してんだっけ？

　珍しくヘパイストスが口を開いたが、話が噛み合っていない。