35 再び

 SSRを1人召喚するため少し席を外すことに。行き先は城内の修練所へ。


「お、おし。」


「あまりご無理をなさらず。」


 側にはレイレとカイネが、護衛にアイナとゾラが側に着く形に。


「召喚・・・・・・・創造・・・・何となく・・・・」


 肌艶は褐色肌は外せない。

 しかし、問題なのは変化を行える者だ。


 俺を中心にいつものように召喚陣が形成され始めた。創造と想像がリンクしたのか、召喚が進められていく。


 そしていつもの如く、強く光出す。


「まぶっ!」


 アイナの一言の後、煙が宙を舞う。


 流石のSSRでも眩しいらしい。俺の場合はチカチカしてますよ。


「せ、成功したか?」


 明らかなフラグ発言な気がした。


「お初にお目にかかります。」


 そんな煙の中から。


 肌は褐色、背丈は俺と同じと、初である。

 髪はボーイッシュヘアーの短髪だ。

 色はカラフルなものの、イケメンのような顔立ちである。


 いや俺はイケメンじゃない。自分で言ってて悲しいわ。

 しかし、スタイルは女性その者であり、巨大なお胸が露わになっている。


「どうも、初めまして。」


 ファーストコンタクトは大事だ。

 召喚したから全員が言うことを聞くかは別である。

 常にどこにリスクが存在しているのかをしっかりと確認し、未然防止を行うべき。


「召喚していただき、ありがとうございます。私は」


「あっ!テメェはユンフィ!」


 ゾラさんが自己紹介を遮った。そうそう。そう言うことよ。


「貴女・・・・ゾラ、こんな所に。」


「久しぶりね。ユンフィ。」


「レイレも?何故・・・・もしや、このお方が?」


「ええ、私たちの最高の王にして、愛しい殿方です。」


 そんなに褒められると照れますなあ。

 背中は痒いが、顔はポーカーフェイス。


「なるほど。君たちがそこまで惚れ込むとは。

 つまり、私も何か役割のような者で呼ばれたのかと。」


「役割?」


 レイレが疑問を投げかける。


「ああ、フェイカーと。」


 うん?ああ、偽物って事ね。厨二病みたいなような言い回しだよ。


「アレイスター様、コイツ当たりだぜ。」


「アイナ。」


「おう。久しぶりだな。」


 アイナも面識あるという事は、デザイアの一員か。つか、どっから入ってきたの?


「よろしく。俺はアレイスター。」


「アレイスター様。私をお呼びしていただき、誠に感謝申し上げます。

 必ずや貴方様のお役に立てるかと。」


 忠義者であり、かなり冷静な人だ。この人ならトラブル対応も可能だろう。態度で解る。


 王としての振る舞いを逆に期待できそうだ。俺より上手いだろうし。


「ちなみに特技は?」


 一応、想像とマッチしたか照らし合わせと。


「はい。この身体その者を骨格から変形させ、あらゆる人物になり変わる事です。」


「グッド!」


 おっと、某ディーラーが出てしまった。あまりにも想像通りの能力につい。

 まあ、これくらいはできて当たり前か。


 しかし引っ掛かるのが、この想像はどこまでを再現できるのやら。無制限なら強いが・・・・・いや限度はあるか。


「なり変わるのは姿だけじゃないぜ。

 コイツは人の性格や癖も全て把握し、真似ちまうんだ。」


「ゾラの言う通りだ。コイツは俺にも化けれるしな。

 しかも戦闘もそこそこできるときた。ロキの作戦もこれならいけるぜ。」


 お〜、よかよか。


 俺自身の顔が出回るのはちょっとアレだが、まあでもあれだ。下手に狙われるよりかはマシか。それに顔バレ自体とっくにだし。


「それじゃあ、早速」

 

「アレイスター様っーー!」


 血相を変えた1人の褐色兵が報告にやってきた。


「どうしたよ?」


「はっ!いきなりのご訪問お許し下さい!

 只今、覇王国、王国、共和国の3個が我が国へ向けて兵を動かしたと報告が!」


 ・・・・・宣戦布告のメールと同時にゴーしてたのね。タイミングが絶妙に良過ぎだろ。


 敵国の異界人たちも馬鹿ではない。もしくは頭の良いSSRかLRがいんのね。


「早速だぜ、ユンフィのデビュー戦がよ。」


「そうだな・・・・・メタモルフォーゼ。」


 ユンフィの身体がボキボキと鳴る。


 人が変形する様は意外とグロい。

 骨格や姿形が生々しく変わっていく。


 サイコパスレベルは低いので吐きそうです。

 そして、バキボキの変形が終わった。


「ふう・・・・後は話し方もか?・・・・・・あーあー、俺は晴天なり。」


 俺は晴天なり?・・・・しかしだ。凄い似ている。自分が2人いるというのは何か・・・・・・


「不思議な気持ちだ。」


「な?スゲェだろ?」


 アイナやゾラのようなタイプはユンフィのような雰囲気が好きなのかな。


「ああ凄いな。」


 召喚士はただのネタ職ではないか。

 まあ、世界が敵にはなっていくデメリットが半端ないけど。









































 変形したユンフィはその足で会議室へと出向く。


「お待たせした。状況は?」


「・・・・・・・・・どなたでしょうか?」


 アテネはアレイスターを見た瞬間に別人と判断した。


「私はアレイスター様の影武者を任せられたユンフィだ。幻界デザイアから召喚された。」


「ユンフィ!?いつのまに!」


「やあ、ミリス。」


「その姿と声で話すと何か変だね。」


 アレイスターの自室では作戦会議が行われていた。メンバーはアテネを含むLR全員とミリス、カイネ、ユンフィ。


「尚、この会議は私アテネが指揮する。異論はありませんね?」


「進めてくれ。」


 フレイヤはどうでもよさそうに爪の手入れを行っている。


「では。現在、この国へ愚か者共が接近しつつあります。それも厄介な事に同時に3国もです。」


 卓上には周辺の地図が記載されている。


「3国に対抗・・・・・いえ、殲滅するため、我々で前線を張り、兵を配置することにします。

 覇王国はゼウス、ベローナ、アポロンでお願いします。」


「我に任せておけ。丁度、アレイスター様からいただいたお力を試したい所であった。」


 ゼウスは早く新技を試したくウズウズしている。現に身体がピリピリしていた。


「アレイスター様へ勝利を約束します。」


 ベローナは通常運転である。


「怪我したら言ってね。すぐに治すから。」


 アポロンも同様である。


「次、王国はフレイヤ、テュール、ディーテで向かってほしい。」


「はいはい。」


「承知した。」


「はーい。って、またフレイヤなのね。」


 アフロディーテは少し面倒くさそうであった。


「イヤなのかい?」


「いーえ、美しくないと感じたまで。」


 ふーん。とフレイヤはスルーしているが、剣呑とした空気が2人から発せられる。


「はあ・・・・最後に共和国側だが、アーレス、ヘルメス、ポセイドラで頼みます。」


「任せろ!!」


「うん・・・・まあ、任せてちょうだいな。」


「承りました。」


 ヘルメス以外は2つ返事で応答する。

 すると、ミリスが挙手する。


「どうした?」


「僕的に残りをどうするのか気になる。」


「ええ、残りは逆に攻め入ります。

 向こうが手薄なのと、他の国にも大打撃を与える予定です。

 こちらばかり痛手をみるのも癪ですから。それに国の復興に力を入れる以上、こちらの時間も作る事が可能です。」


「了解しました。アレイスター(ユンフィ)様の護衛はレイレ、ダレネがほしいです。その2人以外は出払っても暫くは大丈夫かと。」


 ミリスの意見は、この作戦が成功する事を前提に発言していた。

 誰も失敗への考えは持ち合わせてはいない。


「本物のアレイスター様にはヘパイストスを付けさせましょう。

 ハーデスは監獄で忙しいと聞いております。残りのデザイアも念の為に守りへ人数を割くので厳しいでしょう。」


 カイネが今度は進言する。


「そのため、オリビエ率いる我々騎士隊は外壁を守護させていただきます。

 地の利や周辺の状況は誰よりも理解しておりますので。」


「良いんじゃない?元々この国に人たちだし。

 弱点や強みを私たちより、理論的に知っている事だ。」


 ラプラスもこの案を後押しする。


「構いません。元よりそうした方が賢明です。

 しかし、アレイスター様ご本人の護衛も手厚くする必要があります。そこに手を抜く事は死んでもありえません。」


「それならアレイスター様から伝言が。」


 今、アレイスターとして影武者をしているユンフィからメッセージが告げられる。


「『俺に人数割かなくていい。と言っても納得しなさそうだから、敢えて『桜花楼獄』にいる。』との事です。」


「素晴らしい。小生のアレイスター様はよくお分かりになられている。」


 軍神のテュールは感動し、涙を流す。

 他のLRも同じような事を始める。


 アレイスターが見たら、恥ずかしさのあまり悶絶死しそうである。


「誰がお前のだ!アタシのだ!」


 しかし、トールは器用に泣きながらも空気を読まない。


「ちょっとトール黙ってて、私もそれが1番いいと思われる。」


 ロキはトールを馬のようにどうどうと宥めつつ、賛成の意思を示す。


「では、大体の方針は決まりましたね。後は奪って殺すだけです。

 しっかりと礼節を持って蹂躙しに行きましょう。」


 アテネから心にもない一言を聞いた後、アレイスターの自室からは誰も居なくなる。











































 アレイスター


 何だ?この背中に走るビリビリくる嫌な感じは?誰かに噂されたとかじゃなく、何かやってんじゃないか?的な。


「だから私と共に居るという事かね?」


「まあ、そうなりますね。」


 どういうこと?


 俺は今ハーデスの部屋へと厄介になっている。

 ベッドの上なのは察してくれ。

 むしろ、食われた側です。


「嬉しい。こんなにも嬉しいのは初めてですね。

 人が堕ちる様は楽しく、歓喜に満ち溢れるが、アレイスター様と共に居る事には敵いませぬ。」


 人の堕ちる様と俺を比較にしないでくれ。


「下手に外にいるより、かな。」


「それもそうですね。ここはある意味では硬い要塞の中です。」


「正に鉄壁の地獄要塞か。」


「響きが良いですね。流石はアレイスター様。」


 ハーデスのオーバーリアクションと同時に、その美しき灰色の肌が俺の視界へと照らされる。

 地獄の王として、彼女の嬉々とした表情も窺える。


 つまり、エロく


「綺麗だ。」


「・・・・・・・ありがとうございます。」


 流石にね。ここから2回戦始められるほど戦争への楽観視はしてませんよ?マジで。

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