34 戦は新たな戦を呼ぶ

「アレイスター様よ、ご気分は上々かの?」


 ナナカと行為に及んだ後、タイミングを見計らってやってきたっぽいオーディン様である。


 こういった気遣いは割と恥ずかしい。

 しかも、呼んだ手前でもあった。


「えーと・・・・すいません。」


「怒ってはおらぬ。

 何、ひと暴れした後はどんな奴も落ち着く者よの。

 だからこそ聞かなくてはならない。アレイスター様はこの世界に何をもたらしたい?」


 スッキリしたからか、オーディンの言う通りに頭が冴える。

 しかしだ、今その質問か。


「・・・・・・・・・まだ定まった。って訳でも無いけど。取り敢えず、そうだね。理想郷を作りたい。かな?わがままかな?それとも無謀か?

 まあでも、俺は俺で自分が楽しくなる世界を作りたいらしい。」


 かなり魔王じみた発言ですが、先程のナナカとの話を精査すると。ざっくりではあるが、今やってる事とマッチしていたらしい。

 

 但し、今度は自分自身の意思でソレが明確になりつつある。


「そのために滅ぼすのか?」


「違う思想はやがてぶつかる。どちらかが生き残り、どちらかが衰退する。更に俺は傲慢で愚かな1人の人間だし。

 けど、今までが何もしなさ過ぎた。」


 前の世界では、ルールや倫理観は勿論だが、ある程度の世界観が確立されており、その敷かれたレールの上を走って生きていた。


 人によってそのレール内容は違うが、どうも俺自身は厨二病が治らなかったためか、納得いってなかったらしい。


 ま、実際に恋人や家族ができた。友人が何人も。会社の重役に。国の代表に。

 なーんて、崇光な理由を持ち合わせてはおりやせん。

 なので、ある種では世界が窮屈に感じた。

 

 正しく傲慢だ。


「神である以上、人の傲慢さには呆れるべきであるの。・・・・・・・アレイスター様なら別じゃ。大いに結構!

 ならワシらも力を貸し与えよう。元より、ワシらはお主の声に賛同して集まったのじゃ。

 

『ラグナロク』という完全なる滅びではなく、世界を塗り替えるという滅びを。

 滅びの先に何を見出すのか。全てを根絶やしにしてしまっては何も残らぬ。


 下手に掻き乱し、中途半端な安寧を手に入れるぐらいならいっそ己が理想郷のために滅ぼして終えばよい。

 その方がワシらも、いちいち手出しせんで済むからの。」


 輝かしい身体の神、その身体にはさまざまな刺青が入っている。

 ひと昔の紋様のようなもの。宝具と思わしきもの。

 そんな堂々とした姿は、歴史に語り継がれた神そのもの佇まいであった。


「ワシらはかつて何度も世界を滅ぼし・・・・・何も無くなったよ。何もね。夢や理想、欲望、野望、希望も。

 空になってしまうのは本当の意味で無じゃ。

 ならいっそのこと、中途半端なテコを入れるかの?自分の大事な女、男や仲間だけの世界?自分にとって周りが都合の良い世界?誰もが笑って暮らせる、都合の良い明るい楽しい世界?


 欲望は果てしないが、何分狭い世界じゃ。

 故に人はその狭き世界の内にいるからこそ、本当の目的を見失う。」


 すごく哲学です。頭悪過ぎ君の私には厳しい。煽って炎上させる事しかできまてん。


「漠然としてるけど、俺は俺でこの世界の全てを手に入れて俺色に染め上げたい。


 野望と欲望の塊なのは勿論だけど、俺は世界そのものを壊してみたい。それを永遠に築き上げるのはとても難しいけど、それでも俺はやってみたいな。」


 ただ単になんとなく、俺はそうしたい。今は細かい目的とかはどうでも良い。ただ今は破壊して作り続けたい。


 すると、オーディンはいきなり服を脱ぎ始めた。その美しい身体で近づき、俺の頬を触れる。


「じゃが、お主はそれを実行している。故にお主は変革を行う。

 神でもない唯の人間が世界を作り直す。矮小な人間の手により、再び世界を欲望と野望のために変革させようとしている。」


 オーディンと唇が触れ合う。


「ワシはそんなお主に惹かれた。

 この全知全能なる神が、ワシがお主を支え、守り通す。共に永遠を生きてほしい。」


 本当に誘導されているのでは?と思う。


 矮小な人間だからこそ、俺を呼んだ奴によってコントロールされている。と思え思うほど、これは俺がしたかった事なの?と疑問に思う。


 神々を召喚したとはいえ、それが正しいのか、やりたい事なのかは分からない。本当の敵が誰なのかも分からない。


 ただ1つだけ言える事は、ただ単に俺は世界に対して復讐がしたかったのかも。

 国がとか、周りがじゃなくて。ただ自分だけが満たされ続ける世界が欲しいのかもね。




























































 フレイヤ


 アレイスターの部屋にある広いベランダで月を眺めていた。

 正確には入ろうとした所、オーディンに先を越されていた。


「はあ。最初それ気付いたの私なんだけど、全く。何でアレイスター様に引き寄せられるのかな?・・・・・・愛の化身、私は彼の愛だ。

 だから、彼にはだ。


 例え他の神を増やそうとも、彼には必ず私が必要になる。だからこそ、アレイスター様・・・・」


 フレイヤの顔には慈愛ではなく、神とは思えない狂気の笑みが浮かぶ。

 彼女自身も神ではあるが、野望はある。


 彼女も理想を追い求める1人の女であった。




















































 アレイスター


「何回戦したんだ?」


 理性はとっくに消えてますね。

 ナナカさんはパタリと倒れてソファーでオネンネ。なのに、この神様はケロッとしている。


 これが人間と神様との器の違いか・・・・げっそり。


「ホッホッホッホ。ワシも満足過ぎて、白目剥いたわい。」


 と言いつつ、またしても誘惑して来る。


 ま、まずい。誘惑される!


 セクシーポーズを取りながら、指で俺の身体をなぞる。


 マジであかんて。


「・・・・・・ワシらは1つになった。これからも1つよろしく頼むぞ。」


「うん・・ああ、俺からもよろしく。」


「後どんぐらい待てばいいんだよ!!」


 トールが無遠慮に自室の扉を勢いよくバタンと開けていた。そこにはロキもいた。


「アタシらは後どんぐらい待てばいいんだよ!!」


 2回言ったよ。


「トールの言う通り。オーディン様、少々小狡いのでは?」


「ハンッ!ロキに言われとうない。」


 ここから3回戦が始まるようだ。

 しかもプラスで2人かよ。


 目を光らせた神に逆らう事などできない。

 今の俺には、どうここを生き抜くか。ただそれだけを考えろ。


 ・・・・・・それから暫くして。


「スッキリした!」


「ありがとうございます。」


「うむうむ。これはこれで面白かったぞ。」


 3人は凄く肌艶がお綺麗になっている。こちらはカサカサだけどね。

 アニメだと、木の棒一本に全身を委ねたいよ。


「スッキリした所でだけど。これ、お便り。」


 フレイヤさんがまたしても後ろから登場する。ほんと、いつ現れたのか・・・・・そして、顔が赤い。


 さすがに4回戦は死ぬ。ムリムリ。


「って、ん?お便り?うげぇぇぇぇ!!」


 山のようにお便りが俺の頭上へ降り注ぐ。


 初めて書類に埋もれた。これでも処理速度はめっさ早い方だ。


「こ、これは?ラブレターにしては多くね!?」


「ま、ある意味ラブレターだよ。」


「どれどれ?」


 オーディンは素肌そのまま手紙を拾う。

 あ、後ろが美しい。じゃなくて!


「どんな内容なの?」


「あ〜、のお〜、これは。」


「どれどれ?」


 ロキまでも素肌そのままだ。

 綺麗な水色肌とお胸が。じゃなくて。


「アタシにも見せろよ。」


 トールも銀色の綺麗な素肌のまま、覗き込む。

 その胸も、ヒデブ!


 理性を保つために自分を叩く。


「・・・・・アレイスター様。残念だが、お友達になろうってヤツじゃねえわ。こりゃ宣戦布告だ。」


「さいでしたか。」


「驚かないね。」


「まあ、国を獲ってる以上、標的になるわな。

 だからこそ、孤立状態からの戦続きは不味い。消耗戦になれば、確実にこちらがくたばる。」


 如何に強しと言えど、俺が貧弱だ。

 ただでさえ、夜の営みで殺されかけてる。


 俺も身体的チートスキルが欲しかった。戦略系は苦手なんだよ。

 正に今やろうとしてることは野望ゲームの戦略系だけどね。


「アレイスター様の仰る通りかと。

 籠城も可能ですが、結局の所は消耗しながら戦いの日々を送るだけ。

 整っていない状態で、攻撃をただ待って受け続けるのは愚策かと。」


 ロキも気付いていた。

 そうだ。割と結構詰んでいる。


 LRが召喚できる。召喚士である。ネタのようなネタ職ではない。国1つ情勢を変えれるほど凄い。

 だが、俺というかなり致命的で最大の弱点を抱えている。


 他の奴らは1人でも戦える力があるのはナナカとソヨで解ったが。

 俺という頭が獲られたら終いです。


「安心しろ!アタシたちが居るぜ!」


 心境察したのか、トール様からなんと温かく、心強い支えが。


「そうだね。トールもいるから大丈夫だね。

 ただ、状況は良くないってこと。」


「脳筋はこれだから。」


 フレイヤさんは脳筋嫌いなの?


「まあ良いではないかの。暗ーく落ち込むのも困るしの。」


 今更だが、神々とは言えどその力そのものを行使できる訳ではない。

 つまり、世界を一気に変えれるほど、素晴らしくご都合的な理不尽はない。


「しっかしまあ、国取り合戦したからか、一気に人気者になったな。」


「この短期間で3国落としたからね。イヤでも注目の的だよ。

 アレイスター様の力を探りに周辺を嗅ぎ回っているゴミもいる事だし。」


「ワシの警戒網にも既に引っ掛かっておるからの。」


 ま、神様が言うのだからそうなのだろう。うん、今なんて?


「頼みますよ。オーディン様の結界網で敵の位置を常に把握し続け、こちらから先手を。

 アレイスター様の周囲だけには、決して近付けてはなりません。」


 ロキも既に気付いていたようだ。


 俺シラナイ。シラナイノニ、タノシンデタ。


「うんん!とは言え、俺も油断できないな。」


「このロキめにお任せ下さい。」


 綺麗な水色肌のロキ様が改めて、俺の手を握った。


 なんかまた興奮してるよ。


「何か策があるのか?」


 フレイヤさんからドス黒いオーラを背に感じる。


「ええ、王は男性であるという事は既に知れえしまっている。

 だが、問題は誰?どんな素顔?ここがポイントです。」


「なるほど。影武者か。」


「ご明察通りです。ですが・・・・・」


 うん。皆んな見た目麗しい上、カラフルなんですよね。適性者が居ないのでは?

 いや、俺のせいだけど。俺の趣味の問題だけど。


「下手に幻影や変幻の術を用いた所での・・・目ざとい奴等には勘付かれるしの。」


「そうだね。だからどうするつもりなんだい?」


 フレイヤは怖い上司だよ。


「・・・・・・簡単だ。男に変化する者をアレイスター様に召喚していただければ良い。」


 ・・・・・・・うん?


 ロキはフレイヤの態度にイラつきながらも、そう提案した。


「えーと、俺、召喚は確かに想像を反映しているが、ピンポイントで狙い撃てるのか?」


「召喚は召喚者の望む姿形以外に、今必要となる能力に合わせて応じられます。

 そのため、必然的に変わり身を要求する意識さえ強ければ、向こうから応じる事は可能でしょう。」


 しかし、男に変化となると・・・・素肌なども変化させられる事が必須条件だ。

 うーーーーむ。元が両性ではなく、身体の形を変形させる感じだな。


 月や季節で変わるとかだと、ボロが出る。完璧なる怪人二十面相か。


「よ、よし。やってみるぞい。」


 あかん、変な方向に気合い入った。


「私はアレイスター様に労力を強いるのを良しとはしないが。」


「なら貴様程度のボンクラな脳みそに何か策略があるのか?」


「・・・・・・・」


 ロキとフレイヤから嫌な雰囲気が。


 トールは面倒くさそうに横になってるし、オーディンは退屈そうに欠伸してる。

 全く・・どいつもこいつも好き勝手だぜ!


「本来、貴様らが我々を召喚する前に暴れたからこそ、アレイスター様に負担を強いるやり方になってしまったのだぞ?

 ああそうだ。事前に厄災の種は取り除くのも1つの策だな。」


「そうだね。私もそう思った。

 君のような裏切り行為がある危ない神様は消さないとね。」


 俺程度でも解る殺意だ。


「ロキ、俺は大丈夫だ。フレイヤも任せてくれないか?たまには俺もやるぜ。ってとこ見せたいしな。」


 つか、ココで殺し合い始められたら王手かけられる。俺がペシャンコになる。


「アレイスター様・・・・・・」


 フレイヤが申し訳なさそうな視線を送る。


 ま、一か八かではなく、国の行く末も賭かってんだ。生半可な事はできんな。

 後、俺の身近な脅威のために。


 このSSR召喚石で絶対に成功させるしか道はないか。

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