24 奪い奪われ

 攻撃の手が収まり、数週間の時が経つ。


 暗殺隊レッドウォルフ、デザイアのメンバーが無事帰国してきた。


「戻ったという事はだ。」


「作戦が成功されたのかと。」


 アテネの言葉に少しホッとした。


「僕らも迎えに行く予定ではありますが、アレイスター様は如何なされますか?」


「いく必要がない。アレイスター様の手を煩わせるのか?」


 アテネが急にミリスへお怒りになる。

 カイネは下っ端だからか、その光景に気まずそうにしていた。


 王様だからかこっちにいろ。って事か。


「・・・・・・失言しました。申し訳あり」


「いや行こう。折角活躍したのに『ありがとう』の一言も無いのはいけない。」


「かしこまりました。アレイスター様の命に従います。」


 今更だが、アテネは従順である。


 頭は良い。

 しかし俺が創り出したせいか、俺が召喚した人たち以外ゴミを見るような目で見ている。


 賢いが偏屈というのか。癖があるのか。

 自分ほどではないが、ある意味特殊な人間性を帯びている。


「私から離れずにいて下さい。」


 アテネは隣へ来て手を繋いできた。


 迷子かな?

 けど、髙身長なお姉さんにエスコートされるのは最高である。

 しかし、これは・・・・


「・・・・・・」


 もう隣にはミリスがやってくる。そして手を握る。


「あ・・・・・・はい。大丈夫・・です。」


 カイネは2人の姿から一歩引くように歩く。

 カイネが不憫だ。


 4人で城を出て中央の広場へと向かう。


 このだだっ広い国ではあるが、たった数百人程度しか人口が無い。

 元の住民をほぼ抹殺したらしい。

 イマイチ現場を見ていないため、実感が湧かない。


 にしても、すっからかんの建物が多く目立つ。瓦礫ばかりだけど。


「再建できるのかな?」


「お任せ下さい。これから少しずつ理想郷をお作りしていきます。」


 アテネはニコニコと対応してくれた。

 訂正、何か興奮して涎を垂らしていらっしゃる。


 自信があるのか知らんが、とにかく過ぎた事をとやかく言っても仕方ない。


「あ、ありがとう・・・」


「僕もいます。」


 ミリスも唐突にアピールしてくる。


「ああ頼んだ。」


 少しだけ落ち着くというのか。どちらも好みのタイプだが。


「カイネもよろしくね。」


「!!か、かしこまりました!全力で取り組みます!」


 カイネも凄く嬉しそうにしてくれる。チョロインだ。


「恵まれてはいるのか。」


 そうこうしている内に広場へと辿り着く。


 軍隊のようにチーム訳された列が見える。

 肌色が異なるためか凄く解りやすい。


「赤が暗殺隊、褐色組がデザイアと。

 んで、前にいるのがフレイヤたち役職者と。」


「少ないですが、全員集まっております。

 皆、アレイスター様を一目拝みたいと集まっております。」


 視線に晒されるとはこの事か。


「そ、それは嬉しいな。」


 全員目の中がハートマークな気がする。捕食されそうな気分だ。


「やあ・・・・皆んな。任務お疲れ様だ。

 えーと、今回はレッドウォルフが他国を乱してくれたお陰で蓄える時期へ入れた思う。

 だから、このチャンスを是非生かしてほしい。」


「「「「アレイスター様に喝采を!」」」」


 誰かが声を上げる。そして、周りが拍手と涙を流す。

 皆が歓喜して拝み始めた。


 何だろう・・・ワザとではないのは伝わる。

 しかし、どこかの国を彷彿させるような・・・


 とにかく、視線が集まり過ぎると萎縮する体質なのでそそっと退散する。


「お疲れ様でございます。流石はアレイスター様です。

 皆も涙して喜び、絶頂を感じておりました。」


 何か不穏な語彙が聞こえた気がする。それに俺の言葉って当たり障りない程度な気が。


「僕らも嬉しいです。アレイスター様がいるだけで幸せです。」


 ミリスさん。俺を甘やかさないで・・・


 このお姉さんたちに全てを委ねてしまいそうだ。

 殆ど残ってないような理性をなんとか保たせる。


 その後、自室へ戻って休む・・・・と思いきや。

 ミリスやアテネに何人か女性を見繕われ、イチャイチャした。


 赤肌、黒肌、灰色肌、褐色肌とさまざまなバリエーションについ興奮が抑えられなかった。


 ダメやねん。分かっててもこれはあかんねん。


「幸せだな。俺も。」


 だからこそ、今まで散っていった異界人を思い返すと俺も油断はできない。

 この召喚士をもっと生かさないと。


 改めて召喚士として向き合う決意が宿る。





































 フレイヤ


「アレイスター様もよく食べてるようだ。」


「当たり前だ。アレイスター様に吟味していただけるなど、ご褒美以外何ものでもない。」


 ゼウスもまた近くにいた。


「アレイスター様の美しさを目の当たりにすれば、忽ちイッてしまいます。」


 アフロディーテはその美しく洗礼された身体をくねらせる。


「あ!それな!アタイもそうそう!

 アレイスター様の声を聞くだけでメシが食えるってもんよ。」


「アーレス貴女ね・・・・・・

 まあ、普段からお側で仕えていると時々自身の理性が崩れかけてしまいますね。

 やはり、アレイスター様を見ていると心の疼きが止まりません。」


 うっとりとした視線がアレイスターへとむ


「アテネも変態じゃねえか。」


「貴女に言われたくない。」


「アレイスター様も罪作りな人だ。

 けど、まだまだ足りないね。」


 フレイヤは新たに国で建造している1つの建物に注目している。


「あの牢獄が完成すれば、アレイスター様はもっとお楽しみいただける。」


「我的に地下室は別の用途で使った方がいいな。」


「ゼウスの言う通り。あんなとこ、アレイスター様の身体には毒です。」


 その建物は五重塔のような構造をしている。

 お城のようではあるが、窓が一切ない。


 名を『桜花楼獄』と。


「フレイヤは特に繋がりがあります。

 そのため君の記憶を頼りに作らせてもらいました。」


「まあ、良いんじゃないかな。

 アテネが設計に携わった以上、完璧な仕上がりだと思うよ。

 あそこで色んな遊びができるし。」


 5人はこれから起こるであろうにワクワクのあまり、狂気的な笑顔で互いを見つめていた。















































 ヘパイストス


 私は今『桜花楼獄』の建設を指揮している。

 私個人は口下手だ。

 話すのは苦手だ。


 特にアレイスター様の前だと、興奮して言葉が出にくい。

 あんなに魅力的だと、こちらが困る。


「ヘパイストス様。これは何処へ。」


「それあっち。」


「かしこまりました。」


 仲間も増えていき、より必要な会話が多くなる。

 しかし、私はそれでも腕で語りたい。

 会話より気楽だ。


 あ、アレイスター様とはお話ししたい・・・

 そうだ。アレイスター様と今度一緒に武器を作ろう。


 私と共に作った武器はきっと素晴らしい物になる。

 そうしよう。

 しれっとお揃いにしよう。指輪代わりに。


 そう思うと俄然やる気が出てきた。


 何時も寡黙なヘパイストスではあるが、この時は大きなハンマーを手に現場へとウキウキと向かったのであった。


 その表情から何か嵐が起こるのでは?と周りから噂される。







































 アレイスター


「ふう。いつどこでも誰かがいるのも悪くない。」


「恐縮です。」


 今は赤肌、髙身長のナイスバディに変わり果てたナナカがいる。

 他の赤肌様も数人ほどいる。


「お前たちは・・・・大切な物」


「アレイスター様のみでございます。」


 1人残らずそう発言する。迷いのない瞳である。


「いや、何と言うか俺はさ。」


「アレイスター様。」


 ナナカが遮る。


「アレイスター様が悪いのではありません。世の中は弱肉強食です。

 以前の私たちが愚かであり、愚鈍であっただけの話です。

 むしろ、今は生き生きとしております。」


「ナナカの言う通りでございます。

 アレイスター様の快感を味わってしまっては、もう何も考えられなくなりました。」


 何か俺が堕としたみたいになってる。

 何と言うか、何も言えない。部下の責任は上司の責任だ。


 まあ、悪いとは思わないのでどちらかというと本望です。


「そ、そうなのね・・・・俺も幸せだからいいけど。

 やっぱり、奪い合いなのか。」


「この世界は国と国、王と王がぶつかり合う世界です。

 アレイスター様のお力はその戦いに終止符を打つため現界されたのかと。」


 ナナカは意外とファンタジーに浸かってるな。

 今チェックを掛けられそうなのは俺なんだけど。


「ナナカは同じ異界人で小国の」


「確かにレグルスを覚えております。

 しかし、今私は生きている。

 そしてアレイスター様の牝奴隷として生かしていただいている。それだけで満足です。」


 ナナカの目には本気と書いてある。

 堕転すると性格、趣味、思考、信念すら変えてしまう。

 まさに寝取りの極意だ。何しても許されるらしい。


「そ・・うか。じゃあ、俺は据え膳を食うぞ。」


 ナナカを抱き寄せる。ナナカも身を委ねる。

 何だろうか、何故か心が温まる。

 

 充実している証なのか、俺はその美しい赤い肌をもう一度愛でることに。

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