23 無慈悲

 少し外を眺めたく城下街へと向かった。


 後ろには、アテネとヘパイストスが護衛で付いている。必要かな?


「そういえば暗殺者さんたちはどんなのよ?」


「なかなかの腕前がおります。

 特にサソリ、マイラ、ワオンと勢揃いです。

 既婚者、恋人持ちが多いようですが、今は生まれ変わり、とてもアレイスター様を愛しております。」


 何故か寝取った感じになってるー。

 ただどんな人が居たのか聞いただけなのに。しかも名前言われても誰が誰だか分からんてぃー。


「仕事の後で会いに行くか。」


「いつになるかは定かではありませんが、本人たちは喜ぶかと。

 それと、アレイスター様本命のLR召喚石も探索に当たっております。」


「そうだな。国にいちいち攻めなくても手に入れば良い。」


「うんうん。アレイスター様の召喚は勝利への必須条件だ。」


 ヘパイストスさんも頷いてくれる。

 今はSSRしか無いしな。

 まあ弱くはない。ないが、LRの方が化け物だし。


「デザイアの増員により、SSRは着実に増えてる。」


 おや?うーん。気になったのだが、デザイアという名前は何処から?


「アレイスター様。これからの方針は如何なさいますか?」


「ここら辺で国を安定させるのがベスト。

 攻めまくっても、こっちが擦り減るだけだし。それに強さは引けを取らない。

 なら、下手に動くより暗殺部隊を待とう。」


「かしこまりました。」


2つ返事だけど、本当に当たってんの?


































 キサラ


「はあ。アレイスター様に会いたい・・・」


 ここの所アレイスター様とは行き違いが多くなっている。

 少し前までは何度もベッドで共にしたというのに。


「キサラ様。王国城内を調べて参りました。」


 公国を攻めた暗殺者の1人マイラが報告にやって来た。


「で、何だ?」


「はっ。勇者ヤスヒコはかなり荒れ果てており、王国も大打撃を受けているためか不安定な状況となっております。」


「だろうな・・・・自身のケジメは?」


「着けて参りました。」


 マイラの手には血が付着している。


「大切な物を手に掛けた気分は?」


 キサラは当時の自分を思い返すかのように意地悪な疑問を投げかける。


「とても幸せであります。

 この姿になる前の私は甘く、愚かな日々を過ごしていたのだと。

 この日々が続くと感じれば背筋に悪寒が走るばかりです。

 改めて、アレイスター様に粛正していただき、感謝を申し上げたい気持ちで一杯です。」


 その瞳はドス黒く濁っていた。


「そうだ。かつての私もそうだった。

 だが、あの方に見出していただいてから私は目覚めた。

 あの屈辱と恥辱はこの時の愉悦のためにあったのだと。

 もう、彼の方なしでは生きていけない。

 だからこそ、失敗は許されない。」


「はっ!アレイスター様に愛していただくため、更なる暗躍を心掛けます!」


 2人に大切な思い出は最早存在しない。

 今あるのはアレイスターのみ。

 彼がいる限り、彼女たちは彼のためだけに全てを成し得ていく。


「早く会いたい・・・・・」


 キサラは瓦礫の王国でより寂しさを感じたのであった。


































 アレイスター


「つーことは、暗殺隊メンバーは先輩の同行の元で色々とやらかしていると。」


「まあ、そうだね。」


 残党抹殺任務もとい、周辺監視任務から帰ってきたフレイヤとゼウス。

 何故か真っ先に俺の部屋へ入り浸る。


 そのため1人の時間は僅か1分であった。


「我も早くアレイスター様から直々に力を授かりたいものです。」


「なら早めに成果を上げることだね。」


「・・・・・生意気な。」


 ゼウスはフレイヤへ威嚇として殺気を放つが、フレイヤは我関せず。


 しれっと放電してるから、俺がピリピリする。


「アテネ、ディーテとヘパイストスはお休みで、アーレスは兵の再編と。LRの手が足りないか。」


「けど、アレイスター様。」


「うん?」


「我ら含めて6人居るのは既に異常であります。

 普通は1人居るか居ないかです。アレイスター様のお力あってのモノですが。」


 ゼウスが言いたいことも解る。

 下手な欲張りは身を滅ぼす。


「そうだね。まあ、これからもっと増えるよ。

 今他国の宝物庫で漁ってもらってるし。

 それに、公国が敵ということ以外は何も知られていない筈だよ。」


 フレイヤの言う通り、確かにな。


 躍起になってる国々には、仕返しとして我々の暗殺兵潜入してます。だなんて事知ったら他国はどんな顔すんだか。


 人の事は言えんな。

 俺の存在がより世界に知られれば、更に暗殺者が襲ってくるに違いない。

 だとすると、召喚もなるべく慎重にすべきか?


「けど、フレイヤはともかくとして、他はバレてないの?」


「フレイヤが先頭にいる以上、他はデザイア、つまりはSSRチームで構成されていると判断されているかと。」


「フレイヤ様様って事ね。」


「そういうこと。」


 フレイヤはそう言い、俺の隣へ座って引っ付いてくる。

 ついでに俺の片手を大きな胸へと添えた。


「む。」


 ゼウスもすぐさま隣へやってくる。そして、同じ事をし出した。


「ただ下手に力を見せびらかすと、今はキツイかな。下手に攻めず、蓄えに入った判断は正解だよ。

 向こうも警戒するだろうし、暫くは時間を稼げるからね。」


「俺も戦力を蓄えるか。」


「我も蓄えさせていただければと。」


 ゼウスとフレイヤが急に脱ぎ始める。


 あ、そういう蓄えね。俺は消費するけど。































「最近増えたわね。」


「国ですから。」


「国なの〜。」


「はあ。アレイスター様・・・」


「アイナが落ち込んでるし。」


「まあ、私たちが働く必要がない事に落ち込むわね。」


「・・・・zzz。」


 ダレネは既に寝ている。


「妾も結構頑張ったからの。」


「調教したってことでしょ?」


「インデグラよ。調教も辛いのじゃ。」


「まあ、アタシたちも楽しめたし。」


「こんなのんびりとティータイムも初めてですね。」


 レイレは何故かウキウキしている。


「レイレの場合は前後の印象がある。」


「失礼な。」


「ううう。アレイスター様の〜」


「それよりも。」


 ミリスがやってくる。


「こんな所でうつつを抜かしていたのか。僕たちの仕事が決まったぞ。」


 ミリスは大量の資料を配布する。

 今の今まで必要な情報をコンパクトにまとめていたのであった。


「これを読めばおおよその役割は解る筈だ。

 どうせ退屈していたのだろう。」


「へえ、面白い。実験も成功したし。

 他国でクーデター作戦もやってみようかしら。」


 スカーレットは残酷な事を提案する。


「スカーレットたちしか実行できないわね。」


「まあ時間稼ぎにはなるかの。」


 クイナも悪くないと思っていた。


「そんなのは二の次だ。今はアレイスター様の身の安全が第一だ。

 それを整える事こそが、我々の今回のミッションだ。」


 机を強く叩き、ミリスは皆の注目を集めた。






































 再びアレイスター


「ふう。スッキリした所で。」


 見回りだな。


「2人はぐったりしてるし、誰かいるかな。」


「コクコク。」


 ヘパイストスが自分自分と指を指す。


「ヘパイストスは寝てたもんね。」


「うんうん。」


 寝てたってあれね。本当にグッスリしていたって事ね。

 いつの間にかソファでオネンネしてた。


「じゃあ、行こうか。」


「うん。頑張る。」


 何で?


 着替えた後、俺たちは部屋を出て外へと向かった。


「街・・・・らしくはなってるか。

 瓦礫の山より見応えあるが、人がいなさ過ぎる。」


 まあ、女しかいないけど。俺の理想郷ではある。


「肌の色はやはり異なる方が良い。」


「うんうん。」


 適当に聞いてます?


「くいくい。」


 自分も褐色だぞと。解ってます。惚れ惚れしてますよ。


「うんうん。」


 ヘパイストスは基本的に言葉数が少ない。

 しかし割とアピールしてくる。


「ふう。それでも今日の今日まで生き延びているとは・・・・自分に驚きだよ。

 この世界にやってきたのは運命かな?」


 まあ、全世界を敵に回す運命って何なのかな?

 それでも楽園は築けつつある。しかも、堕転でどんどん増えていく。


「赤色の次は青色だね。魔族のような。」


「うんうん。」


 他にも灰色、黒色、緑色が欲しいな。


「夢が膨らむ。野望もまた深まる。」


 焦らない焦らない。

 今は赤色を手にしただけでも喜ばしい。


「下手に調子乗り過ぎると、後々痛いしっぺ返しが来るからな。」


 とはいえ、引き返せませんが。


「食うか食われるか。」


「アレイスター様なら大丈夫。」


 ヘパイストスが優しく見守ってくれる。だからこそ、安心感が湧き出る。


「俺は今、幸せ絶頂期なのかも。」


 お姉さんに囲まれて死ぬのなら本望です。

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