19 黒き炎の女神VS黄金の獅子王

 城は大きく瓦解し、瓦礫の積もる街並み。

 燃え盛る大地の中、2人の怪物が激突する。


 1人の女性は炎を振るい、1人の獣は大剣で応戦する。

 LR同士の戦いは天を揺るがし、地を砕く。


「アッハハハハハハ!!久々に面白い戦いだ!」


 フレイヤは1人でに笑っている。

 獣人男レグルスは真剣な眼差しで狂ったフレイヤを睨み付ける。


「何が面白い!戦いなど虚しいだけだ!奪い奪われるなど、あってはならない!」


「フッ、何言ってんだか・・戦いは虚しいか?

 確かに。けどね、私はただ彼の運命を作りたいだけだよ。」


 フレイヤは蹴りで炎舞を舞う。

 大剣の側面を使い、レグルスはガードに徹する。


「運命だと!?俺にも運命を作ってやりたい奴は居る!

 だが、お前たちのように滅ぼしてまで得たいとは思わん!ナナカもそう思っている!

 だからこそ、俺は俺のマスターに誓う!」


 大剣に黄金のエネルギーが収束する。


「俺はここを守る!!ここは俺たちの家だ!」


 黄金の斬撃が放たれる。


「ならば奪うのみ!!彼のために!」


 フレイヤは更に炎の火力を上げる。


「『黒炎魔嵐』!」


 炎の嵐と斬撃が衝突する。

 黒き炎と黄金の光がうねり混じる。


 そして、やがて勢いは消失する。


「・・・・・・・・悪の割にはやるな。」


「悪は認める。私はそうあれと願われた。

 だからこそ、この姿はだ。」


 フレイヤの姿は依然として凛々しい。


「貴様が認めるほどの存在か。

 偶然とは言えど、運命に出会えたか。」


「偶然?・・・・・・ああ、そうか。

 惜しいけど、アレイスター様と私は偶然じゃない。」


「何?」


 レグルスにある疑念が過った。


 ガチャというランダム要素が存在する中、召喚士は触媒と本人が望む人相、性格、強さなどから、ほぼ特定の人物を狙って召喚する事ができる。


 逆にガチャの場合、LRを引き当てるのは人生でも1度あるかないかと言われている。


「まさかっ!?伝説の!」


「そうだよ、召喚士。彼は唯一選ばれた存在だ。」


 レグルスの背筋にヒヤリとした汗が流れる。


「まさか!今ここに攻め入っている奴ら!」


「そう、全員LRだね。」


 レグルスに更なる衝撃が走った。


 可能性として頭にはあったものの、あくまでも可能性の1つであり、事実には結びつかない。と油断していた。


 だが現実は残酷である。


「世界が滅ぶぞ!」


「いいんじゃない?アレイスター様が望んでいる事だ。」


「何だと!?ナナカと同じ異界人な筈だ!?

 確かに野蛮な考えを持つ者はいるが、世界自体をだと!」


「まあ、本人は然程解ってはいないけど。

 けど、今彼がやりたい事とはそいうモノだ。」


 アレイスター自身は自分の野望を片っ端から叶えようと行動している。

 特に今は右も左も解らない。


 しかし、それは世界規模から見ると破滅を意味していた。


「身の程を過ぎる野望は、いずれ己の身を滅ぼすぞ。」


「さてね。でも、そうはさせない。そのために私は存在する。」


 フレイヤは『魔化』の効果を発動する。


 褐色肌が更に黒くなっていく。そして皮膚には新たに黒き炎が身体を覆うように発火し出す。

 さまざまな刺青が身体中へと増えていく。


 炎の化身へと姿形が変わっていく。

 そして、背後には大きな黒き太陽が登る。


「そ、その姿・・・・本当に同じLRか?」


 黄金の光すら飲み込む、黒きエネルギー。

 フレイヤが歩くだけでその道に炎が灯る。

 彼女は狂気の笑みを絶やさない。


「同じではない。私は特別だ。特別の中でも特別だ。」


「特別?」


「そうだ。アレイスター様にとって私は特別なんだ。

 私にとってもアレイスター様は特別だ。

 だからこそ、私は他を凌駕する。」


 フレイヤ自身の発言の真意を理解しかねるが、レグルスはただならぬ雰囲気はしっかりと感じ取る。


「だが、ここを引く訳にはいかない!俺は戦う!」


 レグルスは大剣を構え、恐る心を退け、更に前へと一歩前進する。


「こい!狂気の悪魔よ!」


 暫くの沈黙が流れた。


 そして2人は動き出す。


 一瞬であった。


 黒炎が宙を舞い、剣尖により掻き消える。砂煙さえも静かに舞う。


 2人の動きが止まり、睨み合う。


 レグルスの全身が火傷を帯びている。血を流しつつも、なんとか闘争本能で意識を保つ。


 一方のフレイヤは涼しい顔付きで嘲笑う。


「戦いは己を満たす・・・何故か解るか?」


「・・・・・・・」


「アレイスター様の望みに近づくからだ。

 私はそれが堪らなく恋しい。主人の手となり足となっていると。」


 恍惚な表情で語る。


 あまりの不気味さにレグルスのような歴戦の戦士ですら、フレイヤに怖れを抱く。


「まだこの力を使い足りない。もう少し実験をしたいな。」








































 アレイスター


「太陽が黒いというか・・・・2つあるよね?」


「2つというより、1個は明らかに作り物かと。」


 ミリスさんは冷静だ。俺としては珍ロマンを感じる。


「アテネ、あれもしかして。」


「その通りです。アレイスター様の『魔化』でしょう。」


 へぇ〜。ただ気になるのが、それ使う必要あったの?


「懸念点がお有りのようで。

 フレイヤの全てを知っている訳ではございませんが、彼女の力は炎です。(本当はメインが違いますが。)

 しかし、従来の炎とは色が随分と違う様子ですので、それが『魔化』による影響であると推測致します。」


「やっぱりそうか。」


 なんか途中ボソッと聞こえたような。


「勿論、他の力もあるようですが、現地に行かない事には何とも言えません。

 しかし、あそこまで強化されるとは・・・

 早く私も手柄を上げて、アレイスター様のご寵愛をいただきたいです。」


 貴女様がたから、ご寵愛自体はいただいておりますが、魔力によるご寵愛は今暫くお待ち下さい。


 ハッキリ言っていつでも倒れる自信しかない。


「レベルの恩恵か。うん?そういえば。」


 今回小国へ攻め入った奴らがLRメンバーということは。


「メニュー。」


 自身のステータスを開くと、レベルが上がっていた。


 アレイスター (仮)LV150


『職業』召喚士


『スキル』使役、魔化、言霊、思念


『思念』 召喚した者たちとコンタクトが取れる。

 ※レベルが上がると距離や範囲も広がる


「これは便利だ。召喚士として必須レベルだな。これで状況によっては割り振りができるな。」


 うん?俺そんなに指揮官として実力ない気が。


「いい能力にお目覚めになられましたか?」


 ミリスが俺の嬉しそうな表情から、何かを察して褒めてくれた。


「ああ・・・まだ召喚した奴らだけだが、『思念』によるコンタクトが取れるようになった。」


「何と!流石はアレイスター様です。

 これでより、アドバンテージが高まりました。」


「ありがとう。ミリス。」


「とんでもありません。」


 ミリスは何故か照れる。それは置いといてだ。


 俺自身、召喚するだけの人ではなくなる。


 フレイヤたちを中心に中継・伝達を行える。

 戦場や状況をリアルタイムで理解できる。と思う。


「しかし、範囲・・・ね。」


 レベルに依存するだろうが、気になるのはスキルって何レベから身につくんだ?


 この世界の在り方はともかくとして、自身の在り方ぐらいは把握せんとな。
































 再び小国ティグルス


「全くひでえな。」


 アーレスは1人の異界人を肩に抱え、フレイヤの居る方面へ向かっていた。


「遅いわよ。」


 アフロディーテは興味なさそうに爪の手入れをしていた。


「うっせ。こっちも変なのに絡まれたんだ。」


「その肩に乗っている美しくない者ね。」


「知らねーよ。ただコイツは価値がありそうだと思った。

 ま、殺す価値自体は無いがな。」


 肩に乗っている異界人はレグルスの召喚主ナナカである。


「あいつは?」


 フレイヤではある事は理解しているが、敢えてアフロディーテに尋ねた。


「アレイスター様のお力を使っておりますわ。

 悔しいけど、非常に美しいですわ。」


「あ?だから・・・・・へぇ。

 やっぱアレイスター様のお力だな。確かに綺麗で素晴らしい。

 アタシも早く恩恵を受けたいぜ。」


 アーレスは珍しく感激していた。

 アフロディーテはフレイヤより、アレイスターの力その物に見惚れていた。

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