17 処刑と堕転

「さて、アレイスター様が休んでいる間に推し進めようか。」


「・・・・・・・」


「何だい?」


 ゼウスはフレイヤを静かに睨んでいた。

 ディーテが間に入るように何故かを答える。


「その力はアレイスター様直々のお力・・・・悔しいが、美し過ぎます。」


「ああ、嫉妬してるのか。」


「当たり前です。その力は本来、我々も受け取れる力です。

 1番初めに出たからという理由で選ばれるなど。」


 アテネも珍しく感情を表に出す。


「これ以上ぐちぐち言っても仕方ねえだろ。

 俺なんてコイツと一緒に行くんだぞ。」


「おや?嫌なの?」


「当たり前だろ!アタイだってイラついてんに決まってだろ!」


「いい加減話を進めたいのですが?」


 ミリスが見兼ねたのか、少し怒り気味に話を切り替える。


「静かになった所で、まず手始めに。

 フレイヤ、アーレス、ディーテと共に『小国ティグルス』へと攻め入る。

 恐らく、勇者率いる王国がその隙にもう一度攻撃を仕掛ける頃でしょう。

 更に帝国、法国なども乗り出す可能性もあります。」


 カイネがハイネと代わり続けて話す。


「3人減り、残りを我らで対処せねばなりませんが、ここで処刑と堕転を敢行します。」


「処刑により、世界への復讐・・・いえ、浄化が本気であると認識させます。

 それと同時に王国含め、逆らった者たちの末路を見せつけます。」


「動揺で少しは時間を稼げます。

 プラス、仲間も増えてこちらも戦力増強となります。」


「けど、我らのような存在は今や創れはしない。油断できん状態だ。」


「ゼウスの言う通り。しかし、SSRも数さえ多ければ手段も何通りかに増えます。

 それには処刑まで念入りに壊しておく必要がありますが。」


 アテネはフレイヤをチラ見する。


「問題ない。多少身体を弄った。確実に自我を失いつつあるよ。

 ま、その分君たちにとっての楽しみは減ったけど。」


「お構いなく。我々はこの世界に復讐を望んでいます。

 しかし、アレイスター様の身を優先するのは当たり前のこと。アレイスター様のためなら復讐は二の次です。」


 ミリスの瞳に一切の曇りはなかった。


「そうかい。じゃあ、小国も全て壊すからそれでよろしく。

 捕虜も期待しないで。」


「3人で連れ帰るのは厳しいですね。責めて皆殺しで精一杯よ。

 その方が綺麗に美しく整地できますけど。」


「アタシはアレイスター様の臣下として無敵を証明できればそれで良い。」


「なるべく早めの帰国を願います。

 こちらは人を振り分け、何とか保たせます。」


「リーダー級はスカーレット、レイレ、ヘルメ、オリビエと何とも少ない。

 それに作戦指揮もアテネ、カイネ、ミリスと。」


「そこで嘆いて居ても仕方ない。今ある戦力で打っていく。

 我が総帥として居座っている以上、アレイスター様の安全は絶対だ。

 だからこそ、お前たちは前を向いて進め。」


 ゼウスの一言で皆にスイッチが入った。

 いわゆる、お仕事モードへと目付きが変わる。




























 フレイヤ、アーレス、アフロディーテ


「さて、行こうか。」


「テレポートするぞ。」


「よろしく。できるだ」


「テレポート。」


 アフロディーテの余計な一言を遮るようにテレポートした。


「小国とはいえど、城壁や兵はしっかりしている。大きさより、中身を優先しているようだ。」


「へへっ!なら余計に壊しがいあんな。」


「美しく崩しましょう。」


 3人は正門を目指して歩く。


 小国では、磔の死体が送られてからは周囲に警戒のため、見張りや兵を常に巡回させていた。


 そんな兵たちに見つかりながらも3人は平然と歩くのを止めない。


「とまれ!」


「止まりなさい!」


「ここをどこだと知っての」


「うるせえ。」


 アーレスは容赦なく、城壁上にいた男の頭を拳から放った空圧で見事に粉々に砕いた。


「て、敵襲!!」


「あら?いきなり集まってきましたね。」


「なら君の出番だ。ディーテ。」


「あ?俺が」


「君はもう少し待つと良い。」


「そうさせてもらうわ。『花よ。』」


 アフロディーテが唱えた後、地中から大きな植物の触手が生える。

 中には綺麗な花も咲き乱れている。


「さあ、始めましょう。美しき晩餐会を。」


 3人の悪魔が小国ティグルスへと牙を剥く。





























 元公国


「では、初めましょう。」


 アテネの合図と共にモニターの魔法が展開される。


「皆様、初めまして。前回のフレイヤに変わり中継させていただきます。アテネと申します。

 以後お見知り置きを。」


 アテネは華麗に挨拶をする。

 それと同時に背景の処刑台を映し出す。


「今回、愚かにも我らの安寧を貪ろうと襲ってきた公国王とその第一王子の処刑を執り行います。」


 周りから歓声が鳴り響く。


 アテネたち召喚された者たちはともかく。

 幻界に存在し、復讐に身を奴した『デザイア』のメンバーはたちは大いに盛り上がっていた。


「この処刑はこれから貴方方の下で行われる、言わばデモンストレーションのようなものです。

 そこで、今回行っていただくのはかつての仲間でしたオリビエ、アイシャ、カグヤ、ヘレナ、カイネの5名です。

 さあ、皆様盛大な拍手を。」


 パチパチと大きな拍手が鳴り響く。


 歓声の最中、処刑台へと5人は登っていく。


「お、お前たち・・・・・」


 シンヤはかつてのできごとが頭にあった。

 しかし、姿や形が変わろうとも自身の仲間である。そう認識していた。


「助けてくれ!お、俺は今までお前たち」


「何の事だ?」


 オリビエは冷たく一蹴する。


「オリビエも酷いなあ。あんだけこき使われたのに覚えていないかい?

 私なんて地下牢に閉じ込められていたんだよ。」


「カグヤが介錯するのか?」


「けっ。私でも良いけど。」


「早く殺して下さい。

 アレイスター様の元へ帰りたいです。」


「それもそうだな。ほれ、オリビエ。」


 オリビエにカグヤから処刑用の剣が手渡される。


「オリビエ!俺を覚えてないのか!?」


「覚えていますよ。ですが、それも遠い過去の話です。

 それに、過去の私は愚かでした。

 アレイスター様に早く出会えていれば・・・・しかし、あの屈辱があったからこそ、今がある。

 そこは感謝します。」


「お、オリビエ・・・・」


「さようなら。」


 オリビエは次のシンヤの言葉を待たずして首を斬った。


 そこには躊躇いなど一切無い。

 あるのは冷たい瞳に写る首無き上半身だけであった。


「お見事です〜。さあ拍手!」


 アテネによる一言で更に喝采が起こる。


「や、止めよ!お、おれは!」


「君はうるさいから、どーん。」


 アテネが指を鳴らすと王子の身体が破裂した。


「彼はオマケだったからこんなんでいいかな?

 さてさて、我々に逆らうということはこうなります。

 この処刑台に上がった彼女たちも、かつては愚かにも我々に逆らった1人なのです。」


 アテネからマイクを手渡されるオリビエ。


「コイツの言う通り、我々は愚かでした。

 しかし、今は違う!

 私は生まれ変わったのだ!騎士として、本当に仕えるべき主人を見つけたのだ!」


 アテネは再びマイクを取り返す。


「そうです。彼女たちは目覚めました。

 愚かな自分から生まれ変わったのです!

 さあ、更に別画面におりますは愚かな女たちです!」


 新しいモニターが表示される。


「逆らった王国の勇者たちのお仲間です!

 どうですか?良い姿でしょ?」


 新たなモニターには未だに魔物たちに犯されている女性がいた。

 中には目が既に死んでいる者、身体がボロボロな者、オモチャのように振り回される者がいる。


「オリビエさんたちもそうです。

 こうする事で罪を意識し、次の段階へと至れます。」


 アテネにより、改めてモニターから32人の女性が映し出された。

 しかも、全員無気力に倒れている。


「さて、これから私とスカーレットによる楽しいショーを開始します!

 皆皆様も心して見ていて下さい!」


 2人は闇の呪文を倒れている女性たちへ展開させる。

 呪文から稲妻が走り、大きく煙が舞う。


 やがて、呪文が収まる。


「これが彼女たちの新たな姿です!」

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