12 世界に狙われる

「な、何を言ってんだ?お、俺だよ・・」


 オリビエの変わり果てた様子にシンヤは唖然とする。


「知っております。」


「オリビエ」


「気安く呼ぶな。」


 オリビエたちの心はもう何処にも無い。


「か、カグヤ!カイネ!アイシャ!ヘレナ!」


 しかし、名を呼ばれても誰も反応しない。


「・・・どうせ閉じ込めてたんだ。

 私は迷いなくアレイスター様へ忠誠を誓う。

 それに、これからも戦えるし、更に強い力も手にできた。

 この力でアレイスター様のために死ねる!」


「か、カグヤ・・・・君な、のか?」


 以前のカグヤはそこにはいない。

 髪色もレインボーカラーとなっており、肌色は黒に近い。

 スタイルもスレンダーから大きな胸、引き締まったウエストへと変わっている。


「カグヤは尚気にってるからね。」


「ヘレナ!」


「私も悪いけどアンタはお断り。

 生まれ変わって解った。本当に仕えるべき人をね。」


 べっーと舌を出す。

 普段のヘレナから想像できない素顔であった。


「オリビエ・・・・お、俺の」


「私は貴方を知りません。

 今はアレイスター様以外は興味がありません。

 あ、フレイヤ様。もうこれくらいにして装飾品を数点いただいてもよろしいでしょうか?」


 既にそこには騎士の姿は無い。


「終わったかな。」


 シンヤは叫ぶ気力どころか、心が完全に壊れた。

 目に生気が消え失せる。


「それじゃあ、メインディッシュだ。」


 フレイヤはモニターのような魔法を発動した。


「おはよう、世界の家畜諸君。私の名はフレイヤだ。よろしく。

 既に教会のお陰で知ってる頃合いだと思うけど、たった今公国を占領した。

 もうここにいる兵以外はお亡くなりになったよ・・・。

 ああ!何て悲しい・・・・・けど、あなた方はそれでも差別をやめられなかった〜・・ってね。

 ・・・・・で、私たちはこう考えたわけ、この世界に復讐をしよう。ってね。


 おや?話がズレてたかな?

 でも世界の方針はきっと変わらない。

 なら戦うしか生き残る術もない。

 だから、思う存分奪い合うとしよう。」


 フレイヤによる一方的な中継が打ち切られた。










































 アレイスターとミリス


「ミリス。国ができたって。」


「そうですね。計画の範囲内です。」


 計画の範囲ってか、あの宣言も計画なの?


「いきなりあんなデカいのを攻め落としていたのか。」


「あれぐらいの大きさなら、まあ。」


 何で返答が渋いの!?

 またしてもどこでもフレイヤさんが小屋へと入室していた。


「アレイスター様。これから本拠地へと移動しよう。さあ、私の手を。」


 動揺も去る事ながら、美しい褐色の手を握ると、一瞬でテレポートした。


「ここは・・・・・綺麗だ。」


 綺麗な絵画に高級そうなソファやベッドがある。他にも色々とある。


 価値観は知りません。


「す、すげえ。一気に王様気分だな。」


「気分じゃないよ。」


 本当にどこでもフレイヤさん。

 今度は俺を後ろから抱きしめてくれる。


「今回はご褒美を貰わないと・・・・」


 俺の胸をなぞるな。


「失礼します。」


 見慣れない方々を筆頭にゾロゾロと入ってくる。


「こっ、この人たちは?」


「ああ、彼女たちは兵士だよ。」


 雑か。


「いや、キサラとクイナは解るけど。」


「そうだね。かつてのSSRの人たちだよ。」


「それって・・・・・」


 ま、まさか。


「そうだよ。えーーと・・寝取った?かな?」


 何ですとーーーー!


「俺抱いた記憶がないぞ。まさかっ!」


「違う違う。私はアレイスター様以外抱かないから。」


 フレイヤによる解説を聞くと。


「うっ・・・・・そうか。」


 百合が咲く事は無かったらしい。


「まあ、荒療治だけどね。」


「アレイスター様。どうか我々を最後まで擦り潰していただけると幸いです!」


 いちいちリアクションしていたら今日の体力が保たないのでスルー。

 つか、初対面なのにこの距離感ね!


「えーーと、君は?」


「オリビエと申します。」


「オリビエ・・・・・・」


 俺好み過ぎてやばい。

 うん?つか、今思うが全員俺好みだわ。


「おや?早速かな。

 約束でもあるから皆んな食べちゃえば?」


「・・・・・・・・・・」


 悪魔に唆されてる気分が。


「欲望のままに生きないと。」


 フレイヤは俺が作ったからこそ、俺を理解している。

 そんな女神様は俺を解放するべく、自らも身を乗り出すのであった。






 全く、世界へ宣戦布告しておきながら、全員とイチャイチャしてまる5日目か。


 しかし、他国は一向に仕掛けてくる気配はない。


「おはようございます。」


「おっす。」


 そんな俺はアイナとレイレを2人いただいていた。

 なんて事だ。そんな自分が恐ろしい。


「全員食った?だな?」


「言い方ね・・・・・」


「アハハ、悪い悪い。俺・・・嬉しくてよ。」


 アイナ姐さん・・・・可愛い。

 でも、今のワシ悪役のソレなんですよね。


「そろそろ動き出しますよ。」


 ミリスがノックも無しに部屋へと入ると、何事もなかったかのようにそうお告げをして下さった。


 割とこの光景を見られると恥ずかしい・・・・自分でそうしたとは言えど。


「動かれますか・・・・・」


「きたぜ。ようやくな。」


「どんな感じなの?」


「ざっと5カ国は宣戦布告届きました。」


 ざっと5国も狙われるとはな。

 凄まじいぐらいに嫌われてるな〜。


 両手に花どころか、全員俺のモノ悪役ムーブだし、これぐらいは普通か。


「近隣は?」


「近隣は今の所、沈黙を貫いております。

 下手に潰されても敵いませんしね。

 といっても、僕たちにも限度があります。」


「限度か。」


 確か人数が少ない気が・・・・うん?


「女しか居なくね?」


「そりゃ、私たちの国だしな。」


「アレイスター様以外は不要ですので。」


 俺以外という事は・・・素晴らしい。

 初めて異世界に感謝だ。


 普通のハーレム系主人公とは何か違うが・・・・それは些細なことか。


 更には、ここ暫くステータスを見ていないのでハッキリとは解らないが、力の研究を怠っていた。

 ただこれと言って力が増した感とか、何か新しいスキルがとかは一切感じられない。


 ま、それはおいといてだ。

 国というか、人数に対しての国土に割合が合ってない。

 この大国、公国を占領してから気付いたのもあったが。


「このまま女性だけ増やしても良いものか。」


「しかし我らと同族になる条件は女のみだ。」


「その通りでございます。」


 あらま。何故にそうなったし?

 しかも、条件が罪を植え付けることらしい。

 内容だけサラッと聞いたが、なかなか残酷だ。


 けど、甘い考えでは生き残れない。これから国同士による戦争が始まる。

 少しでも油断すれば終わってしまう。


 けど、人数は少ない上、男手は0のまま。

 国土を有しても使いこなせない。現状は力と土地が肥大している。


「割と詰みかけている?」


「流石はアレイスター様。お見事です。

 確かに5カ国程度は問題ありません。あくまで普通に戦えば。

 しかし、恐らくはですが、同盟や各方面による進軍、夜襲による暗殺兵など。」


 そないに嫌われると?早々に色々と対策を練らねば。

 こんなところで呑気に女抱いてる場合じゃなかと。


「このSSRの召喚石1個だけか、どこかでLRを確保しないと。」


 と言っても、レベルのせいで1年に1回だけの条件もあった気が。


「10人のマスターを殺せればガチャ券が貰えます。」


 そんな俺の悩みにミリスが気づいたのか、そう進言してきた。

 しかも真顔で特に呆気からんと発言するもんだから、逆に恐怖を感じるよ。


「え?残酷なんだけど。」


「当たり前だよ。」


 そしてフレイヤさん。今度は新しく窓から登場ですか?


「ここ連日お楽しみだったからね。

 いよいよ真面目に取り組まないと。」


「その通りですね。」


 オリビエさんとカグヤさんだっけ?


「アレイスター様。オリビエです。

 どうかこの醜き雌を覚えていただければかと。」


「アレイスター様。私はカグヤと申します。

 このお力を貴方様のために使えると思うと・・・・」


 この人たち変態だ。急に恍惚な笑みを浮かべとる。

 つか、フレイヤさん。いよいよ真面目って、分かってたんかい!


「他にもアイシャ、カイネ、ヘレナとおります。

 それ以外に50人のほど罪人がおります。

 皆、アレイスター様の物です。」


「こんな沢山のお姉さんが・・・・・」


 こんなにも喜ばしい事があろうか。

 けど、欲望に忠実過ぎてもやがて破滅する。


「嬉しいこととは反面、苦労もせんとね。」


「如何致しましたか?」


 オリビエが気になったのか、聞き返してくる。

 ・・・何かアクセサリーが多い。良い。


 ジャジャラと美しさを着飾っている。


「いやレベルとかをね。ってい思ったのよ。

 数字より、見えない方のレベルとかね?」


「では、この雌を連れていただきたい!」


 急に興奮したのか手を強く握ってくる。

 更にお胸が俺の手に勢いよくダイレクトアタックしているため、俺も興奮を誘われる。


 ただしれっと手から何かバキバキと軋む音が。


「狡いぞ!どけ!」


 カグヤまでもが側へと駆け寄る。


「けど、その2人だと心配だな。

 キサラ、クイナ。君たちもついて行きなさい。」


「かしこまりました。」


「はい。」


 どうやら新人の引率を先輩が行うようだ。

 なんだか少しずつ両手の感覚が消えてく。


「フレイヤたちは?」


「私たちは攻め込んでくる敵を歓迎する。」


「大丈夫?」


「問題ないよ。アレイスター様は自分の事だけを考えて。」


 国・・・・・・・実際は元公国の現リーダーはフレイヤだ。

 そのフレイヤが残って仕切る以上は俺よりマシか。


 余計な事考えずに。って事か。

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