11 公国が沈む日
「さっ、早めに終わらせて帰りますよ。」
レイレは剣に着いた血を払いのける。
「バカ真面目なの。」
毒付きながらも静かな街中を渡るレイレとセレナーデ。
「その真面目さが時として救いになる。」
すると、そんな街の影からヘルメが現れた。
「遅くなりました。」
金や銀の財宝を装着したキサラも合流する。
クイナも遅れて後からやって来る。
「それじゃ、向かいましょうか。」
「そうね。」
「いっ!ででい!いだい!」
公国のマスターの首元を掴み引きずる。
「ヘルメ。あまり乱暴しないでよ。すぐ死んでしまうかもしれません。」
「だが彼は剣聖の力を有していると。」
「持っていても本人が使えなければ意味がない。」
基本的に異界人は特殊な能力を授かっている。
しかし、それは適性のあった武器やスタイルがあって初めて発動される。
身包みを剥がされた公国のマスターにはなす術などない。
そして、そんな一向が真っ直ぐと向かった先は地下の施設であった。
「ジメジメしてるの。」
「そんなことより。クロア。」
レイレに呼ばれたからか、奥から1匹の蛇がクロアを乗せてやってくる。
「なんじゃ?ちゃんと大人しく見張らせておるぞ。」
「良いのがいたんだな?」
「まあの。」
奥から50人程の女囚人を後ろから蛇が押し出すように連れて来る。
「はぁ〜〜・・・うん?」
セレナーデは一際強い殺気を放つ女性に注意する。
「お前たち、強いな。」
黒髪ポニーテール女性がレイレたちを睨み付けていた。
「コイツは?」
「い、いだのが!カグヤ!ご、ゴイツらを殺せ!」
泣き叫びながらも男は必死に命令する。
「何で自分の従者を閉じ込めてんの?」
流石のヘルメも疑念を抱いたようだ。
「何でも暴れ回るからじゃろ。」
「噛み付かれるのは嫌いじゃないが?」
「でもそれは、アイナとゾラの担当ね。」
何故かレイレへと視線が集まる。
「・・・・・・・何です?」
「いや〜・・・・」
「貴女でも良い。私と殺ろう。」
「はあ、そういう事ですか・・・ただ、それ必要ですか?」
「レイレが相手すれば解決するの。」
「でも、この状態のレイレで勝てるのかしら?」
インデグラが階段から新たに姿を現した。
「そうなんですか?」
キサラとクイナは疑念を抱く。
今のレイレは騎士を常に装っている。
どうみても見てくれから強そうである。
「ねえ、貴女・・・・」
そんな2人の視線もあったのか、つい面白い事を思い付いたかのように、インデグラはカグヤへと近付いた。
「カグヤだ。」
「カグヤさん。レイレを怒らしてみない?」
「怒らせる?」
ヒソヒソと何やらインデグラがカグヤへ吹き込む。
「おい。成りすまし騎士!」
「はい?」
「普段は温厚そうな癖に猫被りやがって。
お前の主はそんな奴を好きにはならんぞ。
お前みたいな性格ブスは主に嫌われろ。」
「・・・・・・・殺す。」
レイレの唐突に雰囲気が変わる。
従来であれば反応まで時間が掛かるが、実はこのレイレはど短期であった。
彼女黒の鎧が怒りで剥がれ落ちる。
「テメェ!!ぐちょぐちょに殺す!」
しかし、彼女は騎士であることを意識し、主人を愛する事で自意識を保っていた。
愛故に。という事である。
「罪は『虚飾』・・・・・・けど、飾った嘘より、真の姿は痛いわよ。」
黒き魔剣から更なる漆黒のエネルギーが解き放たれる。
人のような目玉が剣の柄に現れる。
「『具利加羅九里』」
カグヤは1本の刀を抜く。
「こい!」
と言ったの同時に既にレイレは剣を乱暴に振り回していた。
「死ねぇや!」
カグヤは真っ向から受け止める。
「ぐっ!」
衝撃が地面に走る。地面にヒビが入った。
「あーあー、始まったの。」
「インデグラ。やり過ぎだ。」
「殺さなければ良いがの・・・」
劣勢になるカグヤだが笑っていた。
彼女は戦いとなると狂気に落ちる。
「チッ!」
「フハハハハハ!!」
意外と苦戦しているレイレであった。しかし。
「うぜえ!・・・・なんてな?」
レイレは悪辣な笑みで笑う。
突如、カグヤの身体の所々から血が噴き出る。
「う、動か」
「当然だ。動けねえように要所要所を私の魔剣で神経を潰したんだ。」
そして倒れ伏すカグヤへレイレは容赦なく腹部を数回踏み付けた。
「!!ゴフッ!ゴホッゴホッ!アッ!ぉぇ!」
吐く事があっても腹部への攻撃は止まない。
「あ?硬えな。」
今度は遠慮なく剣を太ももに刺してその肉を抉った。
またしても大量の血で溢れる。
「!!!っっっっ・・・・」
「お、剣が通るじゃねえか。」
完全に人格が逆転している。
「そこまでだ。」
ヘルメがレイレを止めに入った。
「あ?」
「その姿をアレイスター様に見せるのか?」
ヘルメの質問に目が覚めた。
すぐに落ちた鎧を装着し始める。
そして、剣を腰に仕舞い。
「んん!・・・・申し訳ありません。はしたなかったです。」
「な、何だって・・・・・・チートかよ!」
「チートが何かは知らないけど、彼は運命を拾ったんだ。」
何処からか別の声がした。
「う、運命・・・・?」
「さてと、始めるの?フレイヤ。」
そして、ソレはいつの間にか側で見守っていた。
「そうだね。全員集めたのかい?」
「そこに転がってるわ。」
今度はスカーレットが別方向からやってくる。
「うん?アイナたちはどこへ?」
「みんな帰ったわよ。
どーせ国の周りには私が結界を張ってるし、外部からは入ってこないわよ。」
インデグラによる侵入者防止用の結界が敷かれていた。
「アイツら・・・・・・早よせ!妾も帰りたいわ!」
「ここが帰る家になるのに。」
「まあ、そうだね。早くしようか。」
フレイヤは50人の罪人とオリビエ、エルフ女、アイシャ、カイネ、カグヤを中心に魔法陣を展開する。
「スカーレットとフレイヤの秘技ね。」
「この2人以外できないの。」
「な、何をされるので?」
クイナやキサラはややオドオドしている。
かつて経験した筈ではあったが、何故かその記憶が欠落していた。
「黙ってるのじゃ。」
クロアが黙らせるのと同時に魔法陣に黒き稲妻が走る。
陣の中にいる女性たちはいきなり踠き苦しむ。
目から血の涙を流す者、吐血する者など。
身体の血管から血が噴射する者もいた。
「うーん・・・失敗だ。」
最終的に死んだ者、生きてる者が分られた。
「じゃあ、プランBだ。」
フレイヤはとあるテレポート魔法を発動した。
すると、その中からオークやトロールたちが現れた。
「まあ、こっちの方が面白いわね。」
「よ〜く見るのじゃぞ。自分のモノが壊れる様を。」
公国のマスターシンヤはこれから起こる無惨な光景を目の当たりにした。
数時間後
「まあ、プライドが高いSSRたちは少し性感帯を弄れば楽だったわね。」
「フレイヤとスカーレットは敵に回したくはありませんね・・・・」
「失礼ね。仲間にはしないわよ。」
「怖いの。」
「コイツは?」
目が死んでいるシンヤと怯えている公国第1王子がその場で転がっていた。
「生贄で使うよ。」
フレイヤは既に視界にすら映していない。
「ミリスのプラン通りなの!」
「キサラ、クイナは楽しかったかい?」
フレイヤは敢えて新人の2人に聞く。
「わ、私は・・・・・楽しかったです・・奪われるサマを眺めるのは最高でした・・・」
恍惚な笑みを浮かべたキサラ。
「私は全てに復讐します。
だからこそ、これはほんの序章にしか過ぎません。」
クイナはある意味真面目であった。
「良いねえ、2人とも。」
フレイヤは少しだけ2人を認めた。
「それじゃ、スカーレット。」
「はいはい。やるわよ。」
スカーレットは臭そうに鼻を摘んでいた。
そして再び同じ魔法陣が展開される。
次の瞬間、魔法陣の中にいた女性たちの肌色は黒肌、褐色へと変色していく。
前の姿を壊し、新たに形成していくようである。
「後は色々とコーデしないとなの。」
「入れ墨から装飾品まで沢山あるわね。」
インデグラとセレナーデは乗り気である。
「これがルールになりますから。」
「彼の天国がまた一つ完成したね。フフ。」
公国で選ばれた女性たちが皆弄ばれた後、デザイア一派へと変貌したのであった。
それから数日が過ぎる。
「おはよう。皆んな。」
フレイヤは王の間で新しく同胞になった50人、エルフからダークエルフになった女性、天使から堕天使へ変わったオリビエ、アイシャ、カグヤ、カイネがフレイヤの前で跪いていた。
「「「「おはようございます。フレイヤ様。」」」」
この全員は反転魔法陣によって姿形が見事に変えられていた。
全員、フレイヤに近いし姿形をしていた。
つまり、スタイル抜群である。
カグヤのスレンダーさえも面影すら無くなっている。
そして身体に刻まれた複数の入れ墨に複数のピアスやイヤリングなど。
昔の彼女たちは既に居なくなっていた。
「良い光景だ。」
それは悪魔のような笑顔であった。
「フレイヤ様。我々に祝福をお与え下さり、誠に感謝申し上げます。」
ガラッと性格の変わったオリビエが代表し、挨拶をする。
「気にしなくて良いよ。これからは同胞だ。
アレイスター様の下で死んでいってくれ。」
「かしこまりました。
我々もアレイスター様へ早くお会いしたいです。」
オリビエはそれだけで興奮していた。
「濡れるのが早いな。けど、皆んなもか。
ま、でもすぐに活躍できるだろうね。
だって、これから・・・・・さて、その姿を前のマスターに見せようかな?」
フレイヤは再び地下牢へとオリビエたちを連れて向かうのであった。
公国の地下牢
「やあ?おはよう。」
「・・・・・・・」
死んだ目でフレイヤを見詰め返す。
かつてのシンヤは元気な青年であったが、今は心が壊れかけていた。
そして、その姿は大変やつれていた。
「紹介したい人たちが居るんだ。入れ。」
呼ばれてシンヤの前に姿を現したのはかつての仲間たちであった。
「・・・・!!」
自分の元部下を見た瞬間、驚きの表情をした。
「な、何・・・・・・」
「どうだい?かつてのマスターだよ。
さあ君たち、かつてのマスターと共にいたいかい?私は優しい。
今なら名乗り出れば逃してあげよう。」
フレイヤはワザとらしい演技を一手打つ。
「不要かと。」
そう先に発言したのはオリビエであった。
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