8 差別・侮蔑

 何とか2人との一悶着を収め、ようやくお肉に有り付ける。


「今日はドラゴンステーキにオーク肉か、焼肉祭りだな。」


 ゲテモノ肉なんだけどね。


「お祭りですか?」


「ああ・・・焼肉パーティーだ。

 皆も無事に帰ってきたことだし。」


「パーティー・・・ですか?」


「そうだ。」


 なんだこの問答??

 レイレと変な会話をしていた。


「やったぜ!パーティーだ!」


「流石は俺の王様だ!」


「誰がお前のだ!私のだ!」


 焼肉パーティー前の影響なのか、人はテンション高くなると荒れるからね。


「ミリス。これ欲しかったやつよね。」


 インデグラが次元から取り出したのは巨大な赤き心臓である。


 食前なんでセーフですね。


「デカ過ぎて岩かと思ったわ。」


「これぐらい大きければ作れるよ。助かる。」


 あんなデカいのを。


「ミリス1人で大丈夫なのか?」


「問題ありません。

 むしろ、ここから私の番なので。」


 俺が居たところで何になるって感じだけど。


「この村も更に発展しますね。」


「そうだね。どう?アレイスター様。」


 フレイヤさん。聞き返さないで。


「皆んなのお陰ではあるが・・・・住民が未だ14人だけど。」


 しかも寝泊まりしている部屋が俺の小屋だけ。

 あまりにも切なくて悲しくなるのよ。


「皆はお部屋要らんの?」


「不要であります。」


「どちらかというと、王様の家に転がりたいわね。」


「それはもうちょっと大きくなってから。」


「大きくなったら良いの!?」


 いきなり全員の顔が近い。鼻息も荒い。

 つか、何が大きなったらなの?自分が何言ってんのか分からんて。


「そりゃね。俺も男だしね。」


「男のなの。」


「男じゃな。」


「どういう意味か解ってます?」


 クロアとセレナーデは怪しい。

 何故かダレネに関してはもう寝てるし。


「俺も女だ。据え膳は食うぞ。」


 アイナさんも怪しい。

 ナニの話みたいで卑猥です。


「ま、食事にしようか。」



























 いやーーー!食った食った。


「ゲフッ。おっと。」


 はしたない。酒はないので、誰かが酔っ払ってるという事はない。


「やあ。」


 またしてもどこでもフレイヤさん。

 お恥ずかしいところを。


「よっす。」


「ご満足いただけたかな?アレイスター様。」


「満足なり。ありがとう。」


「それは良かった。」


 フレイヤの視線がいきなり鋭くなる。

 アレ?殺されるかな?


 すると、森から複数の火矢が飛んできた。


 フレイヤは全ての火矢を魔力をもって一気に粉々に打ち消した。


「一瞬なんだけど。」


「これくらい朝飯前だよ。」


 フレイヤが俺を抱き寄せる。

 守るように密着させる。


 うむ。悪くないな。何も見えないが。


 狭い村であるため、周りの皆も警戒に当たる。


「位置は?」


「言う必要があるのか?」


「フッ・・・・・必要ない。」


 サッと暗闇にヘルメは消えた。


「あれ?ヘルメは?」


「もう行ったよ。」


 今度はインデグラが通った場所から地面の土が盛り上がる。


「土魔法かっ!」


「大丈夫。」


 フレイヤに抱えられて上へと避けた。


「魔法を辿ってー・・・いた。」


 下にいたインデグラの指先から謎のレーザー光線が森の中を突っ切った。


 すると、土魔法が止んだ。


「仕留めたわ。」


「次きます。」


 すぐ俺の隣に来たレイレが魔剣を構え、前に出る。


「死ねえ!黒き罪人がっ!」


 一斉に5人の男性たちがレイレへと斬りかかる。


「甘い・・・・」


 レイレは剣を腰に仕舞った。


 そして、5人の男たちは一瞬でバラバラになった。

 あまりにも早過ぎて見えなかった。

 俺でも見逃したね。


「こっちよ。」


 着地したスカーレット姉さんが俺の視界を遮った。

 精神衛生上のあれか。


「大丈夫大丈夫。私たちが王を守るから。絶対に。」


「オラオラオラオラオラ!!」


「いっけーー!」


 ゾラとアイナの声がする。

 2人とも怒号と共に衝撃音が鳴り響く。


 視界の見えない俺にはよく解らない。


「これで全部?」


「1人だけ捕らえた。」


「そう。」


 再び視界が戻ると、血の海と化している。

 1人だけ5体満足の神父?がいる。


「目的や意味も解る。

 けど、こっちも見逃していた筈だけど?」


「黙れっ!この醜い犯罪者がっ!この世界に顕現した瞬間から世界が汚れた!

 なんと罪深きことか!

 貴様らは永遠の檻へと封印した筈だ!」


 その神父さんが俺を睨む。

 いやそういう趣味ないので。


「キサマのような異界人がっ!

 異界人の中でもキサマは罪人だ!このような醜い奴らを呼び寄せた!

 やがてこの世界に災いをもたらす!」


「何言って・・・・・・」


 周りの目が死んでいる。

 訳アリなのは知っていた。

 だが、俺はその真実を覗こうとはしなかった。

 覗けば、後戻りができないからだ。


 けど、これは・・・・・・悲し過ぎる。


「キサマは死ななければならない!神に裁かれ」


 パァンと神父の頭が弾け飛んだ。


「殺すのは」


「私はアレイスター様を貶されるのだけは我慢できない。

 私の愛しい主人に悪意を持つ奴を許せないからね。」


 フレイヤ。俺の創りし女。

 こんな風な性格で創ったっけ?


「私は愛を持って彼の国を滅ぼしたい。そう思った。」


「フレイヤ・・・・・」


「やり過ぎだとは思うかい?

 まあ、私は別にアレイスター様によって創られた身だからね。

 ただ、召喚された彼女たちは違うようだ。」


「皆んな・・・・」


 どうも周りは腹の虫が治らないらしい。


「俺・・・は、俺は好きだ。アレイスター様が大好きだ。

 だからこそ、守りたい。」


「僕も愛しております。今ここで指を咥えている訳にはいきません。

 もう時期、他の援軍も参られるでしょう。」


「そうね。皆んなアレイスター様を愛しているわ。

 だからこそ、我らは罪人としての咎を聞くべき。」


 罪人・・・罪か。


「私たちは皆、罪によって生かされています。

 この世界の罪に。

 その罪は世界の罪であるがゆえに、1つでも顕現されればたちまち国や人に影響を与えます。

 人はそれを恐れる。強大なソレに。

 しかし、私たちは」


「背負いたくて背負っている訳ではない。」


 レイレの言葉を遮るようで申し訳ない。


 だが現状は、顕現する事を許されないばかりか、見えない奴らから差別や迫害を受けている。


「いつも私たちは存在する事を許されず。

 常に存在を1から抹消されていた。

 陽の光すら浴びること無く。」


 スカーレットも悲壮に語る。


「そうなの・・・・でもね。でも、私たちはアレイスター様が大好きなの。

 だから、だからね。消えたくないの。」


「セレナーデ。」


「そうじゃ。妾たちはまだ後何人か同胞がおる。

 しかし、その同胞たちも存在できるか怪しい。増えれば増えるほど、戦火の海に包まれるからの。」


「だが、それでも私たちは居場所が欲しい。

 今まで奪われ続けたからこそ。

 今度こそは・・・・」


 ヘルメは強く拳を握る。


「だから、アレイスター様が決めると良い。

 君が攻めるな。と言えば攻めない。

 でも、向こうはやってくる。

 しかし、こちらは厳しい展開になる。

 特にアレイスター様が人質になれば、私たちに未来はない。」


 苦渋の決断・・・・でもないか。

 俺、彼女たちは彼女たちなりに懸命に生きているのは日に日に伝わっている。


 そんな俺が彼女たちの生きがい、やりがいを奪うのか?


 思い出せ。かつての自分はどうだったのか?


「・・・・・攻めよう。

 まだまだやり足りない。好きな事をやり足りない。

 全然何も成し得ていない!

 だからこそ、死ねない!」


「かしこまりました。アレイスター様。」


 周りは一斉に跪く。


「アレイスター様は小屋での待機をお願い致します。

 その方が守り易いので。」


「解った。やり方は任せる。復讐するのも良し。

 けど、やり過ぎは油断にも繋がる。気を付けてね。」


「承知しました。」


「必ず勝ちます。私が。私たちが全てを奪ってくるから。」


 その言葉を聞いた俺は小屋へと入る。

 俺がその場で出しゃばっても無意味だからだ。



























 フレイヤたち


「さて。我らの王様は全てを理解したよ。

 元々天才だから解ってはいたけどね。」


「そんなことは知ってる。ただありがたい。」


「やっぱり、王はあの人だけ。」


「初めて許されたの。」


「そして、こちらへ身を委ねた。」


「罪を背負う妾たちに。」


「であるなら、敵は殲滅すべきね。」


 その視線の先には公国という大きな国が映っていた。


「フレイヤ。」


「何だい?」


「何人堕とすつもりだ?」


「さあ?面白そうな奴だけかな?」


「お前とスカーレットぐらいしか使えない。」


「目星が付いたら捕らえていけば良いんじゃね?」


「けど、ちゃんと苦しめないと。ね?キサラ。」


「その通りです。全てを奪って・・・・・・フヒッ!フヒヒ。」


「性格変わり過ぎよ。」


「クイナは?」


「私も守るために壊します。」


 ダークエルフのクイナにも感情が出始めていた。

 罪の覚醒による憎悪が原因である。


「そうだね。皆んなでアレイスター様へ献上しないと。」


 フレイヤは悪い笑顔を浮かべる。


「それでは攻めようか。」


 ミリスの指示で皆動く。

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