3 1回限りの召喚

「ダレネ、大丈夫?」


「うん・・・・・」


 インデグラさんがダレネさんを優しく介抱してくれている。


「こんな空気だけど、ここで召喚の触媒を使うか。」


 そんなKYな俺はLR召喚の触媒を取り出す。


「そ、それは!」


 ミリスがいきなり俺の手を掴み、触媒をマジマジと眺める。

 全員俺より高身長のナイスバディなので、俺の目には毒だ。

 しかも距離感が近い。


「あ、も、申し訳ありません。」


「気にしないで良いよ。」


 あのキリッとしたミリスさんもどこかオドオドとしている。

 やはり追放やら迫害された事が関係している?


「ミリスさん。これ解るの?」


「ミリスとお呼び下さい。

 それか僕の事は雌豚でも構いません。」


「そうか。じゃあ、ミリス。」


 後の方はスルーね。今日1日で処理しきれないから。


「はい。これは世にも珍しいLRの触媒です。

 ただ触媒だけでは召喚できません。

 召喚士にしか扱えません。

 しかし、召喚士は今やこの世にはどこにもおりませんので。」


 うん?


「えーーと、どいうこと?」


「召喚士は伝説の職業です。

 勇者やら英雄などの存在も下界人からしたら珍しいですが、我ら神兵のような存在であれば吐いて捨てる程おります。

 ですが、召喚士だけはどこの世界にもおりません。」


 すると、後ろから豊満な胸がダイレクトに背中へ当たった。

 この感じ・・・スカーレット姉さんだ。


「そうそう。ミリスの言う通りよ。

 だってね、その存在は触媒さえあれば、私たちのような存在以上の者を創り上げられちゃうの。

 私たちはそれぞれの世界から召喚されるけど、召喚士が作る者だけは別次元なのよ。」


 ほう。


「つまりは1から自分の手で作れると。

 しかも石のランクが高ければ高いほど強い。」


「その通りです。

 僕的に王がその触媒を持っている理由は定かではありませんが、召喚士がいない以上は無用なアイテムかと。」


「それなら大丈夫だ。ワシ召喚士だから。」


「「・・・・・・・・へ?」」


「ナナナナナナナナナナナ!何ですって!」


 レイレが飛び掛かり、私の肩を掴んでくる。

 ギャグ漫画のようなフリだが、普通の人間からしたら死ぬレベルで危険だ。


「わ、我が君!ほんとですか!?」


「ほ、ほんと!ほんと!

 最初はガチャがあるのに何で?的な事を思ってた!」


 凄まじい速度で揺さぶられた。脳がぐわんぐわん揺れた。


「何と!」


「凄いの!王様!」


 セレナーデまでも抱きついて来た。

 豊満な身体が俺の身体を刺激する。


 俺の理性よ!今は召喚の時よ!


「い、いいかい?事実かどうかを証明するからさ・・・・」


 あ、どうやって召喚すんの?

 マニュアル書いてないし。


「何かを念じる?」


 途端、自身の周りに召喚陣が形成される。


「おお〜〜。」


 そして頭には複数の意味深な数式が流れる。

 感覚だが、何をしろって言ってるのかは解る。


「こうして・・・・・」


 あの10人の姿を見て何となく想像できてしまった。


 チンっと電子レンジレベルで完成してしまった。

 悩む事すらなかった。


 召喚陣がガチャガチャと動き、目の前に大きな光が集う。

 そして人の形を作り始める。


 勿論想像したのは女性だ。

 髙身長、褐色肌、全身の刺青、ショートヘアーポニーテール、前髪はクロス、髪色はレインボーヘアーだ。


 服装は彼女たちを意識してしまったため、部族衣装または踊り子衣装だ。

 複数のイヤリングとピアス、ヘソにピアス、顔や身体にも刺青がある。


 綺麗な爪にアクセサリーや指輪なども施されている。

 そして目の色がオッドアイである。


 あかん。完全に趣味思考が入り混じり歪んだ結果だ。

 強さなどはガン無視・・・・やらかした。


「・・・・・・・これは?」


 登場した女性が辺りをキョロキョロと見渡す。


「この方は・・・・・一体・・・」


「私たちと同じ姿を?」


「警戒する。」


「野生の勘が危ねえと言ってやがるぜ。」


「王様。私たちの後ろへ。」


 インデグラが俺を下げる。

 だがしかし、既にそこには居らず。


「・・・・弱いな。お前たち・・・」


 いつの間にか俺の隣に居た。

 正確には俺の肩を掴み、抱き寄せていた。


 ピクリとも動かない。

 あまりの威圧に動けずにいた。


 この時ばかりは下半身も反応しなかった。


「私を創ったのは貴方?良い子良い子だ。」


 何故か撫でられる。

 凄く優しい。お姉ちゃんのようだ。


「存分に甘えていいぞ。」


「貴様・・・・・・」


 ヘルメはその中でも殺気を放つ。


「・・・・・死ぬぞ?」


「や、やめ・・」


 辛うじて声を出せた。

 殺気に当てられていたのは自分の方であった。

 素人にはキツイです。


「召喚主様に言われたのなら仕方ない。」


 その女性は殺気を仕舞った。


 皆は緊張感が解けたのか、少し疲れ気味になる。


「主様。お名前は?」


「俺の名前・・・・・・」


 この世界での名前か・・・・


「俺はアレイスターだ。」


 召喚士と言ったらこれだろ。


「そう。アレイスター様か。よろしく。」


「よろしく。貴女は?」


「私はフレイヤだ。アレイスター様の女であり、メスだ。

 そして、貴方だけの最強の戦士だよ。」


 何だろう。前半はともかくとして、後半のこの自信は。


「嘘じゃなさそう。」


「そうだろそうだろ。私は主に近接戦が得意だ。

 この拳で全てを打ち砕く。何もかもね。

 武器も使えるが、この方がスカッとする。

 まあ、夜の戦いはもっと得意だ。」


「あ、はい・・・・・・」


 何か魂ごと喰われそうだから怖い。


「私はアレイスター様を守り、共にその覇道を歩むと約束しよう。

 それに今回は作られた形がデザイアか・・

 差し詰めデザイア神のようなものかな?」


 ナニソレ。


「はあ!?お前がデザイア一族の神だあ?」


 アイナが聞き捨てならんと前に出た。


「何だい?アレイスター様が想像したんだ。

 良いじゃないか。」


「王のことはいい!お前が気に食わん!」


「キッパリ言ってくれるな。」


「うっせ!」


 お互い物理の喧嘩をするつもりはないようだ。


「まあ、人を召喚しておいて何だけど。」


 なんと暮らす部屋はボロ小屋1つだけである。

 こんなんでこの大人数を賄えない。


「俺が外で寝るか。」


「なりません!」


「ダメよ!」

 

「王様!」

 

 全員して俺を否定してきた。

 少しショックだぞ。


「ヨシヨシ。」


 フレイヤさんが再び抱き寄せて撫で撫でしてくれる。


「一夜である程度の村にしよう。」


 ミリスがメガネをくいっとやった。

 これ本当に頭がいい人がするから様になるよね。


「ミリスならできるわよね?」


「問題ない。その他、警戒魔法、トラップ魔法などはインデグラに任せる。」


「了解♪」


「スカーレットは周辺の警備をゾラとしてくれ。

 他勢力が狙わないとは限らない。」


「来ても私たちの方が圧倒的に強いけどね。」


「うんうん!何たってアタシたちには王様がいるからね!!」


 2人してバンザイバンザイしてる所悪いけど、召喚以外はポンコツよ。


「アレイスター様はいいんだよ。

 私たちが守るから。

 居るだけで私たちの力になるし。

 それに私が居る以上、害虫は全員駆除するからさ。」


 フレイヤは狂気の笑みを浮かべる。


「ほ、程々にね・・・・・」


 俺も善人では無いからな。

 時には残酷な結末も与えてしまうだろう。


「アレイスター様は小屋で休んでて。

 後は私たちがお世話をするから。」


 フレイヤはそう言って10人の元へと向かって行った。

 何だろうこの展開・・・・・・































フレイヤ一向


「やあ。」


「貴様・・・・」


 ヘルメは依然警戒を解かないままであった。


「ヘルメ。抑えろ。」


 アイナはヘルメを宥める。


「・・・・強い。」


「ダレネでもか・・・スカーレットは?」


「無理ね。一瞬でミンチにされるわ。」


「正解かな。私がここに居る以上、私が取り仕切るけど。

 そしてお前たちを模って作られた以上、お前たちと同じ志だ。望みは?」


 フレイヤは解ってはいたが、改めて問い掛けた。


「全世界への復讐です。」


 レイレの発言と同時に、全員がアイコンタクトで同じ意思である事が確認できた。


「けど、アタシたちは王を悲しませたくない。」


「折角選んでくれたもの。」


「もう金輪際ないと思うのじゃ。」


 クロアがようやく口を開いた。


「アンタ静かだったね。」


「妾の蛇たちが警戒を止めぬのじゃ。」


 クロアの蛇たちが一斉にフレイヤへの警戒を強めている。


「アハハハハハハハハ!だろうね。

 私は君たちが復讐をしても構わないさ。

 けどね、アレイスター様の足手まといは要らないよ。

 彼は何もしなくても良い。彼は何も見なくて良い。

 アレイスター様がそこに居るだけで満たされる。そうだろ?」


「ええ、その通りです。

 我が君にそんな面倒な事を背負わせる事はしません。」


「レイレの意思と同じよ。」


 インデグラも賛成する。


「なら決まり。この世界に復讐を決行しよう。

 現状は仲間も増やさないといけない。

 それに彼の思考に合わせた国作りもしたいしね。」


「あ、それなら。私たちも刺青を入れるの!」


 セレナーデの発言から全員が頷く。


「そうね。私もフレイヤの姿を見習うとするわ。」


 少し臆していたスカーレットも乗り気であった。


「それが良い。真似されるのは癪だが、この国の基盤としようか。」


 フレイヤはやれやれと納得する。


 素直に小屋でゴロゴロしているアレイスターには全く聞こえていない。


「さて、段取りは大体終えたろ?」


 ミリスへと再び視線が集まる。


「僕の探知によると、野盗が周りにウヨウヨと居るね。

 それに奴隷や捕まった女たち。」


「ヒュー♪それはさぞ賛美が味わえそうね。」


「スカーレット。王に聞こえんぞ。」


 ゾラが珍しくヒソヒソと話す。


「あら、ごめんなさい。」


 スカーレットのバイオレットの瞳が真っ赤な真紅へと変わっていた。


「スカーレットは僕らの中でも戦闘系に秀でている。

 けど、犯されている女たちを利用できるのが、ゾラ。君だよ。」


 ミリスからの直々の指名が入った。


「はいはい。アタシの調教スキルを使うか。」


「笑ってないの。仕事よ。」


 インデグラがそう注意するが、自身が1番楽しそうに微笑んでいた。


「ほんと、楽しくなりそうだぜ。」


 いつものわんぱくなゾラではなく、復讐へと濁った炎の瞳を宿すゾラへとなっていた。

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