第2話 現状と今後

「どういうことですか、博士!」

 ここはダイタンナーの格納庫。頭だけ埋まった状態から回収し終えたダイタンナーが大小、長短さまざまなアームによる修理がされている。

 そこで九乗は佇んでいるダイタンナーを指差しながら、博士に問い詰めていた。

「見ての通りじゃよ」

 取り乱している九乗に対して、博士は冷静に返す。もっとも、九乗が取り乱すのも無理はなかった。

 人型兵器である今のダイタンナーは、大きく分けて三つの部位で構成されている。頭、胴、脚。大きく分けて、というよりはそれしかない。

「腕とかどこいったんですか⁉」

 博士はばつの悪そうな顔をしながら、説明を始める。

「端的にいうと、そのじゃな。売ったんじゃよ」

「売った⁉」

「うむ。今回の修理費の為にな」

 思いがけない事実に愕然とする九乗。

「装備はKKK発射装置を残して、売ったのじゃ」

「う、嘘でしょう⁉肩にあったダイタンミサイルは」

「売った」

「まさか、γユニットとβユニットも」

「高く売れたぞ」

「思いの力を光線に変える変換装置も……」

「一番高値で売れたぞ。今頃、クリーンな発電方法としてタービンを回しとるじゃろう」

 九乗は立ち眩みに襲われた。彼は今日までシミュレータなどでダイタンナーの訓練を行ってきた。それが、全ての装備が剥がされ、無意味になったのだから。

「安心せい! ダイタンナーは無敵じゃ!」

「どう見ても二足歩行するのが精一杯な状態ですけどね!」

 せめてもの励ましもあまり意味をなさなかった。

「まあまあ、落ち着くんじゃ。ダイタンナーはこうなってしまったが、悪いことばかりでない。エネルギー確保の目途がたったんじゃ」

「おお、それでは今回のようなことはなくなるんですね」

 大破することになった原因はエネルギー不足で動けないことだった。これは朗報である。

 原因の一端である博士は未だに無自覚であるが。

「ようやく国からの支援を取り付けられたわい。今後、電気代は負担してくれるそうじゃ」

 巨大ロボット。権威がある間戸博士といえど、莫大な建造費に予算はほぼ持っていかれ、電気代のかからない方法で充電していた。

「今後も成果を挙げてくれれば、支援を拡大してくれるそうじゃ。今は電気代だけじゃが、いずれ装備も元に戻せるじゃろう」

「そうなんですね。でも、成果を出すのに必要なのは装備で」

「今後も期待しておるぞ九乗君!」

「せめて腕だけでも!」

「諦めてくれ、売ったから無理じゃ!」

 食い下がる九乗と諦めさせようとする博士。

 しょうもない言い合いはこの後小一時間続いた。


 頑張れ二人とも! きっとこの星の運命は君たちにかかっている! 互いに襟をつかみ合っている場合じゃないぞ!

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