行き当たりばったりロボット奮闘記 ダイタンナー

不手地 哲郎

第1話 ダイタンナー、刺さる

 早速ではあるが、大、大大大、大大大大大大ピンチである。

「行かせてください博士!」

「駄目じゃ! 今のままでは、何もできずにやられるだけじゃ!」

 舞台は某国某県某市の某博士の某研究所――いや、博士の名前くらいは出して問題ないだろう。間戸まど博士の所有する研究所。

 その研究所は危機に直面していた。

 別世界から襲来した、巨大ロボットがこの間戸博士の研究所を目指し、向かってきているのである。

 しかし、この襲来を予期していた間戸博士が対抗するためにある兵器を開発していた。巨大人型ロボット"ダイタンナー"である。だが、困った事態になっていた。

「くっ、なぜじゃ。なぜエネルギーが僅かになってるんじゃ」

 出撃させられない理由は、単純なエネルギー不足。巨大な兵器ゆえに要求されるエネルギーも膨大なのだ。

 もちろん、真戸博士もそれを見越して、今日までエネルギー確保に勤しんでいた。考え事をする際には発電機を付けた自転車を回し、飼っているハムスターの回し車を使って、こつこつと充電してきたのである。

 その甲斐あって十二分にエネルギーは貯まっていた。のだが、問題は三日前に点検のために起動実験をしたことにあった。

 起動実験後に電源を切り忘れていたのである。そして、この日まで何をするでもなく貴重なエネルギーを浪費し続けており、現在に至った。早い話、博士のうっかりミスである。

 そんなことは露とも知らず、原因不明なことに博士は困惑している。

 それでもダイタンナーのパイロット、九乗くじょう八馬はちまは諦めていなかった。起死回生の案を考え付く。

「そうだ! 博士。以前、話のあったカタパルトは使えますか⁉」

「むぅ、不要になった電磁カタパルトじゃな。使えはするが、どうするというんじゃ」

 世界のどこにでもダイタンナーを急行させらるように開発された専用カタパルト。開発後に出現位置をこの一帯に制限できるようになったため、格納庫で無用の長物と化していた。

「一か八かです! カタパルトでダイタンナーを敵に向けて、飛ばしてください! 体当たりします!」

「随分と無茶を言う……が、それしかないようじゃな。幸いにもKKKを一回だけ撃てるのエネルギーはある。外すなよ!」

「任してください!」

 格納庫の扉が開き、ダイタンナーに射出ユニットが装着される。操縦席の九乗も発進に備えた。

「カウントダウン! 三、二、一……発射!」

 目標地点は近場なため、出力は落とされいる。それでもかなり急加速によって、機体全体にGがかかる。

「うおおおおおおお‼」

 研究所から射出されたダイタンナーは空を切りながら、敵ロボットに当たりにいく。当然、敵ロボットも飛来物を感知し、回避行動をとる。それでも、九乗の操縦勘で最小限に手足をなんか上手いことバタバタさせることで、軌道を修正。激突することに成功した。

 両者は地面に倒れ、ダイタンナーが上に圧し掛かる形で重なり合う。

 しかし、それだけでは完全破壊には至らなかった。未だに動くことのできる敵ロボットは上に乗っているダイタンナーを除けようとする。

「今だぁ! KKK、発射!」

 ダイタンナーの腹部が光り、密着した状態で光線が発射された。

 さて、このKKKと呼ばれる光線。詳しい原理については後日に話させてもらうことにして、今は割愛させてもらう。命中した後にどうなるかだけを端的に説明しよう。

 爆発する。

 大爆発が起こり、激しい光と共に爆発音が轟く。重なっていたダイタンナーは宙へと投げ出された。

 くるくると回転しながら、飛んでいく。操縦席で九乗は祈ることしかできなかった。エネルギーは使い果たし、もう動かすことはできない。落ちる場所は運否天賦。

 くるりくるりと回りながら、重力に引かれて落ちた先は山であった。

 頭から落ち、地面に頭が埋まる。足は天に高くに向かって真っすぐと伸びていた――。


 こうしてボロボロにながらも勝利を飾ることができたダイタンナー。勝利したこの姿を目に焼き付けていて欲しい! 逆さまだけど。

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