第25話 迫りくる魔女の影

「やっぱりマーマンだけじゃあダメだったか〜」


 海鳥の視界をジャックしてその様子を見ていたキルケーは1人、つふやく。

 キルケーはオデュッセウスにパリス王子達の足止めをめいじられていた。なのでオデュッセウスとはまたもや別行動中である。

 この予想外のめいにキルケーは苛立っていた。


「う〜ん、ちまちま殺るのはしょうに合わないなー。派手に殺りたいなー。

 ってか、オデュッセウス様が神殿の制圧をするまでの時間稼ぎが任務ではあるけど、ここでパリス軍を全滅させてしまった方が楽じゃない?

 オデュッセウス様はリスク分担とか説明してだけど、絶対に誰にも邪魔されずに神殿を見たいだけでしょ。あの方!そんなに私が邪魔か!!

 あーイライラしてきた。もう、私も好き勝手に殺る。現状での魔力の差は明白だし、この前の借りを返したいし。よし、あらわれなさいセイレーン小鳥達


 キルケーがそう叫ぶと体は小型の鳥だが、顔の部分が女性のモンスターの群が上空に大量に現れた。


「貴方達にはパリス軍をある地点まで誘い出してもらうわ。その歌声の力を思う存分に発揮してきなさい」


 怪鳥達はキルケーの指示を受け飛び立つ。このモンスターは歌声で人をまどわし、多くの船乗り達を海中に沈めてきた恐ろしいモンスターだ。しかし…


「あちらにはソロモンとパリス王子がいるからぐに対策を取られてあの子達は撃墜されてしまうだけど、それでも誘導とカモフラージュの役割りとしては十分。

 海上では私のスキュラワンちゃんは最強。今のパリス軍はすべも無いはず」


 この戦術にはるぎない自身がある。過去にオデュッセウスでさえ、この戦術には大いに苦しんだ。何せキルケーに勝利したのにも関わらず、今でもトラウマな程にだ。


「懐かしいなー。あの時は私も色々とお茶目だったなー。うん、うん」


 昔、キルケーは名のある魔女として名をせていたが、誰のもとにもつかずに1人で気ままにとある孤島で日々を過ごしていた。そんなキルケーをスカウトをしに魔王軍のつかいが数回が来たのだが、キルケーは来るつかいをことごとく負かしては追い返していた。

 そんな日々はオデュッセウスとの戦いにより終わりをむかえた。初めての敗北、そして初めての恋であった。

 その熱が冷めぬまま今もオデュッセウスの副官として彼女らしからぬ地道な仕事を健気けなくげにやってきたのだが、ここに来て色々と我慢の限界がきたのであった。それゆえの暴走行為である。


「パリス軍を壊滅させたとなればオデュッセウス様も少しぐらいは何か今までとは違った反応をしてくれるかもしれない。うん、絶対にそうだ。そうに違いない」


 一度、思いこんだら彼女はもう止まらない。普段のオデュッセウス軍の冷静な副官であるキルケーではなく、強大な力を躊躇ちゅちょなく振るう1人の最悪の魔女キルケーが戦場に出る。

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