第15話 あの方
まったく、困った人魚ちゃんだよ。
吸血鬼に心を奪われて、泡になって海に消えたのを、私が助けてやったってのに。
あれほど、助ける時も助けた時も、陸の生物に心を奪われてはいけないという人魚の掟を。あれほど、破ってはいけないと注意したってのにまったく。
また陸の生物に心を奪われるなんて。
しかも何だい。
今度は、吸血鬼だけじゃなくて、九尾の妖狐にまで心を奪われるなんて。
助けるごとに心を奪われる数を増やす気じゃないだろうねまったく。
本当に、困った人魚ちゃんだよ。
九尾の妖狐ちゃんも、まったく。
あんな顔をされちゃあ、助けないわけにはいかないだろう。
血を吸いたくない、本能に抗いたいっていう吸血鬼ちゃんの気持ちもわからないでもないからね。
まったくまったく、本当に私は優しいねえ。
ふふ。まあ、優しいだけじゃあないけどねえ。
見たくなっちまったんだよねえ。
この見事な恋の三角関係の行方を。
人魚ちゃんは。
九尾の妖狐ちゃんは。
吸血鬼ちゃんは。
最後には、誰を選ぶのかってさ。
まあ。三人仲良くおててをつないで生きて行くって結末もあるだろうけどさ。
私は、やっぱり、運命の相手は一人だけって考えだからね。
え?古い?運命の相手も何人いてもいいって?
そうかいそうかい。
私がって話だよ。
私がそういう考えだって話。
あの子たちがどういう考えなのかは、まあ、これからわかることさね。
記憶を持たず、いつ人魚の能力が覚醒するかわからない人魚ちゃん。
記憶を持ったまま生き続けるも、能力が弱まっている九尾の妖狐ちゃん。
記憶を持たず人間に生まれ変わるも、どうなるかわからない吸血鬼ちゃん。
さてさて、どうなるのか。
楽しみだねえ。
(2023.5.21)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます