第14話 ずっとずっと、











 助けられるかもしれない。

 泡になって消えた俺を助けてくれたあの方なら。

 未亜を助けてくれるかもしれない。






 ねえ、崇。

 俺は絶対、あなたたちの前に現れる。

 何年、何十年、何百年かかっても。

 絶対に。

 だから、待っていて。

 未亜と一緒に。


 待っていて。











「ちょっと、買い食いしませんか?」

「「え?」」


 今現在、五時。

 お行儀が悪いし、今食べたら夕飯が入らなくなるかもしれないのに。

 しかも崇がそう提案したことに、未亜と晴城は目を点にして、けれどすぐによっぽどお腹が空いたのかと思いついて崇を見つめるも、崇はいつもの穏やかな微笑を浮かべていて、とてもお腹と背中がくっつきそうなほどお腹が空いているようには見えなかったが、見えないだけで実は、なのかもしれない。


「崇。お腹が空いたのかい?」

「兄さん。それなら買い食いじゃなくて家に帰ってから早めの夕飯を食べた方がいいんじゃない?」

「いえ。三人で一緒に学校帰りの今、買い食いしたいなあと思いまして。やっぱりだめですよね?」

「「だめじゃないです」」


((っく。そんな胸がきゅんきゅんする笑顔を見せられたら断れない))


 それに学校も家も禁止していないしいいか。

 未亜と晴城がそう納得して、商店街の中にある駄菓子屋に行こうと口を揃えて言った途端、未亜は晴城と同じ意見でしかも口を揃えて言ったことに嫌そうな顔をして、晴城は俺たち仲良しだねといつものキラキラ笑顔を向けた。

 崇はふふっと笑ってから未亜と晴城の手を握り、行きましょうかと言って歩き出した。


「あ、でも私は十円しか持っていないので、二人も十円分しか買わないでくださいね」


 お金を貸すよ、と言おうとした未亜と晴城はグッと我慢して、それぞれ返事をした。


「十円かあ。飴か、スナック菓子か、チョコか。どれにしようかな。ねえ、伊藤さん」

「私は晴城さんと違うお菓子にします絶対」

「そうだよね。よし。三人とも違うお菓子を選んで分け合おう。三つの味が楽しめるよ」

「………飴を三等分って難しいと思いますけど」

「じゃあ、私が頑張って飴を三等分にしますよ」

「「お願いします」」


 三人は顔を見合わせて笑うと、駄菓子屋へと入って行ったのであった。












 未亜。晴城。

 私はずっと。ずっと。

 この刻を待っていたんですよ。

 また、大切なあなたたちと一緒に過ごせる日々を。

 ずっと、ずっと。











(2023.5.20)


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